【対談】夏休みはこの本を読め!(ほんとうの調達・購買・資材理論事務局)
坂口:今回は仕事とそれ以外の2つのテーマで、皆さんにお薦めできる本を紹介します。よろしくお願いします。
牧野:こちらこそ。まず、どっちにも使えるかなと思って、講談社現代新書の佐藤綾子さんの「非言語表現の威力 パフォーマンス学実践講義」を御紹介します。
坂口:タイトルだけでも結構面白そう。
牧野:グローバル社会で日本人に自己主張が必要だとかって言われるでしょう。でも自己主張をしようと思って、ちょっと肩肘を張っちゃうとか、ただ強く言うだけになっちゃう場合がありまよね。
坂口:浮いたというか、ちょっと恥ずかしい系のやつね(笑)
牧野:この本は自己主張の方法論を教えてくれる本。内容に少しだけ触れると、東京にオリンピックが来た20の理由を説明してるんですね。日本では最終プレゼンの滝川クリステルさんの「おもてなし」だけが強調されますけど(笑)
「おもてなし」は、20の理由の1つの項目で2つ挙げられているうちの1つでしかない。象徴でしかないと指摘しています。すごく面白いのが、安倍首相の最初に政権に就いた時の彼の所信表明演説と、2回目の所信表明演説を比較して顔の筋肉の動きとかを分析してるんですよ。(笑)
坂口:まさに非言語ですね。
牧野:2回目が、相手に理解されやすい筋肉の動かし方をしているんですね。そして、アメリカではこういう学問を学ぶ大学の学部があるそうですね。パフォーマンス学っていう。
坂口:パフォーマンスっていうのは、いろんな意味を含むでしょうけど、まさにこの件でいうと、人前で話すみたいな?
牧野:そうです。よく日本で何かコミュニケーションをするときに、伝え方っていうのはいろんな本があるじゃないですか? でも見せ方っていうのは少なくないですか? 伝え方に比べて見せ方を中心に書いている本です。東京オリンピックっていうのは、「おもてなし」で決まったわけではないんです。そして、プレゼンの全体構成とか、いろいろな部分にビジネスにも、日常生活にも生かせるエッセンスがたくさん盛りこまれているんですよ。印象的なのは、招致をアピールしたプレゼンあるでしょ?あれって徹底的に練習してるんですよね。練習がすごく重要な要素になっているっていうのね。だから練習とか事前の準備とかいうのは非常に重要だし、練習に加えて、表現を具体的にどういうふうにやるか、見せるかっていう部分の、具体的な方法論もすごく重要な要素を教えてくれる本です。
坂口:ちなみに安倍さんの第二次内閣の所信表明演説のときに、顔の筋肉が違うっていうのは、具体的にどう違うんですか?
牧野:例えば、手に印象を与える要素として、話をしているときの頭の動かし方とか……
坂口:すなわちアイコンタクトをどれぐらいしただとか、アームムーブメントっていうのは、腕の動きですね。動作が多ければ多いほど、感情に訴えられる意味で捉えていいんですかね?
牧野:そういうように捉えていいと思います。
坂口:なるほど。そういう意味でいうと、例えばヘッドムーブメント、右左、アームムーブメント…そして、瞬き、ああ、まばたきか。要するに多様な表現は、ほぼイコール多様な身体の動きですか?
牧野:そうですね。安部さんは前の政権と今回の政権では、今回のほうが明らかに自信を持っているように見えるわけですよ。所信表明演説もプレゼンテーションですよね。安部さんの表情とか、ジェスチャーを分析すると、6年間の間に強烈な変化を見せたと結論付けているんです。やっぱりある程度パフォーマンス学を要素を取り込んで、練習なり、そういった教育を受けられたんじゃないかな~って思えますよね。
坂口:なるほど。じゃあ、なぜ動きが感情的に訴えるんでしょう?論理数学と違って数式として書けないから、少なくともこれまでの経験則上から多くの人の感心を惹きつけられると。今回のこの本のテーマは、ジェスチャーじゃないですよね?
牧野:パフォーマンスです。自分で何か話をするときに「パフォーマンス」っていうと、ちょっと違和感をもつんです。でも、私はこの自分が感じている違和感が、今まで自分が触れてなかった分野の知見であり、新しい話なのかなと思っています。
坂口:ビジネスシーンに活用を考えると、我々はこの本からなにが学べるんですか?
牧野:例えば、小泉元首相を国内最高の演説師と述べています。そういう人をお父さんに持った小泉進次郎さんが、どういう手法を使って、人を引きつけてるかを分析してるんですね。
坂口:なるほどね。それは買いたくなる本ですね。
牧野:久々に面白く読んだ本です。登場するのは安倍さんであったり小泉進次郎さんであったり、有名なところでいうとスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学の卒業式です。我々も普段、ビジネスをしていれば、例えば上司と話す、部下と話す、調達購買であればサプライヤーと話す。そこにちょっとパフォーマンス学って違和感があるじゃないですか?
坂口:ちょっとありますね。
牧野:演じる必要はないけれども、いわゆるボディランゲージっていうのは、どうせなら、使えるんだったら、うまく使ったほうがいいなと。
坂口:現代では10人あるいは100人、あるいは500人とか1000人の前で話す機会は必ず誰にしもあるわけで、プレゼンが流行ってますけど、なんらかの舞台に立った1人あるいは2人の、ほんとに印象だけで大きな仕事が動く時代になってきましたからね。それは確かに重要かも分からないですね。
牧野:プレゼンは、パワーポイントとか、キーノートを使って、スクリーンを目の前にして考えますよね。でも、出張から帰ってきて上司に「どうだったって?」聞かれて、その質問に答えるにも、ある意味プレゼンテーションですよね。それ以外にも、例えば自分の会社の部なり課で、それこそ10人、15人の中の会議で話すのもプレゼンテーションとすると、すべての場面でパワーポイントとかキーノートといった武器はもってないわけですね。でも、このパフォーマンス学のエッセンスを1つで学び活用できたら、私はこれは買う価値はあるかなと思ってます。
坂口:なるほど。ただ、昔から表情豊かな人っていうのは、なんかプレゼン上手と誤解されると。ただ、それは誤解じゃないわけですね。ほんとに人に訴えられる。
牧野:アイコンタクトの長さとか、これは一般のビジネスマンでも非常に参考にできる部分が多いんじゃないかなと。
坂口:なるほどね。ちなみにコメンテーターってあるじゃないですか。コメンテーターも自分の言いたいことを台本にある程度メモしておくんです、全員。だけど、見ながらいうわけにいかないんですけども、どこを見るかっていつも悩むんです。司会者をずっと見つめて話すと、カメラは横顔をキャッチするでしょう。かといって、話を振られて、カメラ目線で話すのもおかしいじゃないですか。いつも迷うんですけども、今、話を聞いていて思ったのは、それは悩むんじゃなくて、既に考えつくしたアメリカ人とかの例を見てみるっていうのが、いいかも分かんないですね。
牧野:この本を書かれている佐藤綾子さんは、「日本人で初めてパフォーマンス学を学んだ人」です。オバマ大統領の2009年の就任したときの演説を…この分析の仕方って多分、先生、気に入ると思うんですけど、演説の全体時間が1160秒と。(笑)
坂口:いいですねえ。いろいろ計るのは好きですよ。
牧野:その中で例えばヘッドムーブメント、センターから右へ64回とかね。1分当たり4.4回とか……(笑)
坂口:すごいなあ、それ。そこまでちゃんと計ってると。
牧野:オバマさんに対して、安倍さんが、IOC総会でプレゼンしたじゃないですか。全く同じメッシュで分析してるんですね。当然オバマさんの就任演説っていうのは1160秒で、安倍さんのIOC総会、東京オリンピックを招致したときの演説っていうのは312秒。だから総秒数ですると大体3分の1以下なんですけど、ヘッドムーブメントを1分当たりの回数をカウントしているんです。
坂口:へー、単位当たりに直して。なるほど。ちなみにその話で、ちょっと本質ではないかもしれませんけども、内容には触れてない? コンテンツには?
牧野:内容には触れてない。(笑)
坂口:あくまでも、よかった、よくなかったかを体の動作と、それを含めたパフォーマンスで評価する。僕が出ているテレビ番組に、すごく有名なコメンテーターの方がいらっしゃって、過激な方がいたんですね。僕は非常によく聞くので、「どこが過激だと思います?」「例えばどんな発言が過激でした?」って質問したら、大抵の人が言えないんですよ。「いや、そう言われたら、なんとなくだけど、よく過激なことを言うやんか」とは言うんだけども、「じゃあ、具体的には何が過激だったか覚えてます?」言うと、ほとんど覚えてないわけですよ。
ということは、ほとんど印象で過激だと言われている。多分印象でこの人は真面目、この人は魅力が決まっていると思うんですね。この先生の指摘は結構正しくて、特に印象で何かが決まってしまうような場合などは、すごく有益な何かがヒントが詰まっているんでしょうね。
牧野:そのコメンテーターの方と先生のやり取りをちょっと思い出したんですけど、私はなんでその結構激しいやり取りを思い出したんですけど、坂口さんの出演している番組は、「朝まで生テレビ」ではないので、相手の発言を遮るってないじゃないですか。基本的に終わったら、加藤さんが振るっていうスタイルの中で、あのときは…あの方がまた先生の発言を遮った数少ない場面…だから私もすごく強烈に覚えてるんです。
<つづく>