ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

2-2 購入対象を理解する力

調達購買部門では、サプライヤを選定したり、購入価格を決定したりする過程で、サプライヤから購入する製品に関する知識を活用します。バイヤーに必要な製品知識は、調達購買部門の責任を果たす上で、重要な役割を担っています。ポイントは、漫然と個別の製品やサービスについて深く理解するというよりも、価格やサプライヤを決定する違いを明確にするための知識です。

☆調達購買担当者に必要な製品知識とは

製品知識は、調達購買の主な業務である

①サプライヤの選定
②価格の決定

に不可欠なものです。具体的には、次の3つの観点で学び、理解しなければなりません。

(1) 製品の生産に必要な要素に関する知識(原材料、加工方法、組立方法)
(2) 生産プロセスについての知識(原材料が購入する製品となるまで)
(3) 購入する製品が、自社製品で果たす機能に関連した知識

なぜそのサプライヤからの購入を決定したのか、その根拠となる優位性の有無を判断したり、どうしてこの価格なのか、価格を構成するコスト要素を理解したり、あるいはリードタイムを構成する個々の工程や、サプライヤの生産能力(キャパシティ)を知るためにも製品知識を必要とします。購入する製品が、複合的にさまざまな材料や、加工・組立方法を用いて構成されている場合は、個々の要素を個別に理解し、全体像をつかめます。

☆生産に必要な要素(原材料、加工方法、組立方法)

購入する製品は、どのような生産要素で構成されているでしょうか。使用される材料、採用される加工方法、組立て方法によって、コストは決定され、価格に反映されます。したがって、材料や、加工・組立方法を理解し、それぞれ発生するコストを理解して、その売価がコスト面でも妥当性のあるかどうかが判断できるのです。

☆生産プロセス(サプライヤが原材料を購入し製品のなるまでの過程)

原材料や加工方法などのサプライヤの製品生産に必要な要素は、どのように組み合わさって、どのような工程を経て、最終的に製品となるのでしょうか。生産要素によっては、海外から供給を受ける場合も従来に増して多くなっています。サプライヤの生産プロセスにも、長い距離を輸送するプロセスが隠れているかもしれません。バイヤー企業としてサプライヤから製品を受け取るためには、生産プロセスがすべて実行され、完了しなければなりません。ただ一つのプロセスに問題が生じても、サプライヤからの納入は行われないのです。発注しサプライヤから納入されるまでのリードタイムも、この生産プロセスの個々の日数の合計になります。生産プロセスへの理解は、サプライヤのリードタイムが適正かどうか、判断する基準にも繋がるのです。

☆購入する製品が、自社製品で果たす機能

サプライヤから納入をされた製品がバイヤー企業の製品がどのような機能を果たすのかも重要です。近年、製品を生産する仕組みそのものが、サプライヤの優位性を決める場合があります。これは生産要素・プロセスのブラックボックス化と呼ばれます。このような場合は、サプライヤから購入する製品の機能を分析する視点を持たなければなりません。機能とは、購入に先だってサプライヤから提示される仕様書に、機能の詳細が明記されているはずです。出力であったり、処理能力であったり、重量や、容積といった数値を、購入価格を判断する基準にします。

製品を購入する場合の参考資料として、次の書籍をご紹介します。

日刊工業新聞社 モノづくり解体新書

全部で12冊発行されており、中古まで含めるとすべて入手可能です。このページには、それぞれにどんな製品が納められているかが確認できます。このシリーズは、希少価値の高いさまざまな製品を網羅していますので、製品購買を行っている場合は参考になる文献です。ぜひご覧になってみてください。

<つづく>

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