バイヤーの「超」基本業務(牧野直哉)
「超」基本業務の今回は「見積依頼」の3回目です。この記事では、読者の皆さんが日常的に、既に確立されたルーチンの中でおこなわれている業務=基礎的業務を、
1.より「確実化」する
2.より高度な業務を進めるための「足がかり」を確固な状態にする
の2点を目的にします。
●見積依頼~RFQとRFP
実際に、あらかじめ選定した見積依頼候補サプライヤへ見積の提出を依頼します。ここでは調達購買部門の日常業務の中で頻繁に使用されるRFQ(Request for Quotation)と、RFP(Request for Proposal)の2つをみてゆきます。
この2つは、購入対象によって使い分けをおこないます。
RFQ(Request for Quotation)とは、要求仕様の検討結果で、具体的に購入すべき対象が、特定される場合におこないます。例えば、iPhoneが欲しい、プリウスが欲しいと明確に欲しい対象が限定できているばあいは、製品名、型式、品番を指定して、見積書の提示を求めます。こういったケースで、購入できるサプライヤが複数ある場合は、見積依頼の送付先に注意します。
全く同じ製品で、複数の購入ソース(サプライヤ)を持つ場合に、そのすべての購入ソースに見積依頼をおこなうのは得策でしょうか。例えば、サプライヤの視点で大口の取引と認識され、見積依頼を受けたサプライヤ各社に競争原理が働く場合は、当然すべてのサプライヤへ見積依頼をおこないます。個人レベルでインターネット通信販売を活用する場合に、品番や型番で検索すると、たくさんの販売業者が結果で表示されますね。これと同じ原理です。注意すべきは、どの販路がより良好な購買条件を引き出せるのか、との見極めです。サプライヤ同士の競合が自然と発生する魅力ある購買案件でない場合は、より有利な条件を提示できるサプライヤの見極めが必要です。具体的には次の2つのポイントで判断します。
(1)経由会社の少ない販売ルート(チャネル)
どんな企業でも売買行為には管理費が発生します。同じ製品であれば、事務手続きのみであっても経由する企業は少ない方が、特に価格面で好条件を引き出す可能性が高くなります。
(2)取扱高の多いサプライヤ
自社の購買量でなく、購買製品のサプライヤ当たりの取扱量です。取扱量が多ければ、スケールメリットによる価格面での優位性が期待できますし、サプライヤのメーカーへの影響力も大きいと予想されます。
以上の判断基準によって、見積依頼するサプライヤを絞り込み見極めます。購入できる可能性があるサプライヤすべてに見積依頼をおこなう手法は、こういった事前の絞り込みが、確証に乏しくできない場合の最後の手段でおこないます。
上記(1)(2)は、基本的にサプライヤからのヒアリングによって情報入手します。そしてメーカへの影響度の測定は、サプライヤに「一度メーカーと打ち合わせしたい」といった話を持ちかけて、その反応で影響度の大小を測ります。
RFP(Request for Proposal)は、具体的な製品が決まっていない場合に、仕様や機能を提示して、サプライヤ側に機種選定をお願いしたり、新たに設計や企画してもらう場合におこないます。RFPをおこなう場合の注意点は、Proposal=提案書として、購入品が説明できる資料の提示をお願いしますので、RFQと比較しても費用が発生する点、そして、そういった提案書をまとめ上げる能力がサプライヤに求められる点です。そしてRFPでは、より多くのリソースをサプライヤに依存する可能性が高くなります。「あのバイヤ企業は何もわかっていない」現実を真摯に受け止めて、サプライヤに都合のよいだけの提案書の見極めと、どのように自社の意向を提案書へ反映させるか、最終的に満足できる購買が実現できるかが課題です。
RFQとRFPの違いは、企業によってもその定義や運用方法は異なります。名前の違いよりも、その内容に応じた対応を調達購買部門でおこなうことが肝要になります。
<つづく>