ほんとうの調達・購買・資材理論(番外編)「公正取引委員会の調査」について

調達・購買関係者に共有します。現在、「消費税の転嫁拒否等に関する調査」が行われております。中小企業を中心として配布されている調査資料が次のものとなります。

http://www.future-procurement.com/z118.pdf

もちろんこれは問題のある取引先企業(バイヤー企業)を明らかにするものではあります。が、調達・購買企業側からすると、何を問題とされるのか興味深い資料でもあります。

調査を行う場合には、情報源が決して知られることのないよう十分に注意 して行います。安心してありのままの事実を記載してください。>とは当たり前で、<商品・役務(サービス)を供給している事業者が、取引先事業者(買手事業者)から消費税の転嫁拒否等の法律上問題となる行為を受けていないかを把握し、問題となる行為の是正につなげるため、全国の事業者から無作為に抽出し、貴社に本調査への協力をお願いすることとなりましたとのことです。

私の勝手な判断ですが、これは税金を使って実施される調査であり、この調査票を公開することとしました。

貴社がこの調査に協力したこと及び貴社の回答内容について、貴社の取引先事業者など他の事業者に知らせることは一切ありません。また、貴社の回答内容について、この調査の目的以外に使用することは一切ありませんので、ありのままの事実を回答用紙に記載してください。
この調査に関して、貴社の取引先事業者から回答内容について指示を受けたり、回答用紙の写しを提出するよう求められたりした場合は、下記の問い合わせ先まで連絡してください

当然ですが、上記にあるように、もし怪しげな行為があったとしても、サプライヤに回答の写しを求めてはいけません。

ここで、ちょっと補足しておきます。多くの調達・購買担当者は消費税のことなどほとんど意識せずに交渉していると思います。消費税が上がろうが下がろうが、税抜き価格で交渉することが大半だからです。

先日も雑誌「SPA!」から取材を受けました。そのときに「プロのバイヤーは消費税分を転嫁させないようにしているのでしょう」と訊かれたので、「いえ、大半は消費税なんて意識したことすらないはずですよ。もっといえば、消費税の仕組みをわかっているひともほとんどいません」と申しました。どうも記者は「バイヤー=消費税増税ぶんを引き下げさせる=悪」のイメージのようで、取材が成立しませんでした。

が、問題なのは調達・購買担当者が消費税増税ぶんを意識していなかったとしても、結果として値下げ交渉が「消費税分転嫁拒否」とサプライヤに勘違いされることです。つまり、税抜き価格交渉ではあるものの、バイヤー企業が数パーセントの値下げを求めたとき、それが相手には「消費税分転嫁拒否」と映る可能性があるわけです。

ここで同じく上記のファイルに譲ります( http://www.future-procurement.com/z118.pdf )が、とくに注意すべきは「買いたたき」です。次のように定義されています。

「買いたたき」
買いたたきとは、商品若しくは役務(サービス)の対価の額を当該商品若しくは役務(サービス)と同種若しくは類似の商品若しくは役務(サービス)に対し通常支払われる対価に比し低く定めることにより、特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むことをいいます。

ここでは<通常支払われる対価に比し低く定める>が問題となります。が、これに絶対基準はありません。肝要は理屈だった値下げ交渉ができているかどうかです。それについてはこのメールマガジンでも繰り返し書いてきました。

「減額」
減額とは、商品又は役務(サービス)の対価の額を減じ(ることにより)特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むことをいいます。

たとえば3%の値下げ交渉をするときは要注意といえます。繰り返すと、それが消費税増税を意識していなかったとしても、「消費税分転嫁拒否」と映る可能性があります。ここで買い叩きの事例(例示)ですが次のようになっています。すべて曖昧っちゃあ、曖昧です。

「買いたたきの例示」
①対価を一律に一定比率で引き下げて、消費税率引き上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い対価を定める場合

②原材料費の低減等の状況の変化がない中で、消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い対価を定める場合

⑥商品の量目を減らし、対価を消費税率引上げ前のまま据え置いて定めたが、その対価の額が量目を減らしたことによるコスト削減効果を反映した額よりも低い場合

例でした。とくに②など、生産性向上を認めないかのような書き方ではあります。また③は日本語として成り立たないのではないか、とすら思います。しかし繰り返すと、値下げ交渉が「消費税分転嫁拒否」とサプライヤに勘違いされることは避けましょう。ならびに、消費税転嫁とは別に、この機会に買い叩きを告発されるケースも避けねばなりません。

「本体価格での交渉の拒否」
消費税転嫁対策特別措置法では、商品又は役務(サービス)の供給の対価に係る交渉において、特定事業者が本体価格を用いる旨の特定供給事業者からの申出を拒むことは禁止されています。
「申出」には、特定供給事業者が特定事業者との交渉において、本体価格と消費税額を別々に記載した見積書等を提示するなど、本体価格での価格交渉を希望する意図が認められる場合も該当します。
「申出を拒む」とは、特定事業者が、特定供給事業者からの申出を明示的に拒む場合が該当することはいうまでもありませんが、特定供給事業者が本体価格で価格交渉を行うことを困難にさせる場合も該当します。

最後に上記です。おそらくこれは読者の会社ではないと推測しますが、消費税込み価格でしか交渉を認めないケースを禁じています。

……ということで今回は「消費税の転嫁拒否等に関する調査」を紹介しました。当然ですが、適切な価格交渉と、そしてサプライヤとの信頼関係が重要なのはいうまでもありません。

(おわり)

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