調達・購買担当者の意識改革~パート11「VA/VE提案依頼書」(坂口孝則)
・VA/VE提案依頼書作成
解説:「VA/VE提案依頼書」とは、文字通りサプライヤから価格低減や商品性向上につながる提案をもらうことです。RFP(Request for Proposal)とやや異なり、既存品/量産品にたいしてこのVA/VE提案をサプライヤからいただきます。そのとき気をつけるべきは、単に提案をもらわないことです。「VA/VE提案」を入手することのみを目標としてしまえば、それが手段となりがちです。そうなると、「製品の塗装廃止」とか「製品の標準化」とか、採用できない(とサプライヤもわかっている)案ばかりが集まります。または、バイヤー企業側の仕様変更を要求するものばかりになります。「仕様を低減してくれたら、価格も安くなる」と。そんなことは当たり前で、VA/VE提案ではありません。そんな茶番を避けるためにも、調達・購買担当者はVA/VE提案を集める際に注意を促すべきです。
注・VA/VEとはさまざまな定義があるものの、ここでは価格低減のための技術的提案と捉えていただきたい。
意識改革のために:これまでどれほどくだらないVA/VE提案を受け取ったでしょうか。あるサプライヤは、プラスチック部品の「塗装廃止」によってコストを下げるといいます。また、あるサプライヤは、プレス部品の「バリ取り廃止」によってコストを下げるといいます。これまた違うサプライヤは、カスタム電源を標準電源に置き換えてコストを下げるといいます……。そのほとんどが、現実的ではありませんでした。
何も考えていませんでした。こちらが「何かVA/VE提案ありませんか」といったので、付き合いで出してくれただけです。時間のムダでした。しかも、それはサプライヤ時間のムダでもありました。絶対に採用されない提案をなぜ出してくるのでしょうか。私には意味不明の世界でした。
しかし、難しい問題もあります。というのも、「塗装廃止」とか「バリ取り廃止」とかの仕様低減VAは、くだらないものの、すべてを否定するわけにもいきません。なぜなら、それらの例はくだらないVA提案かもしれませんが、なかにはこちらの仕様を変更したら激的にコストが下がる可能性があります。
・VA/VE分類
そこで、私はVA提案を四つにわけることを推奨しています。それは下図の具合です。
<クリックすると大きくできます>
これは、四象限にわけたもので、順に
①工程改善・工程改良・生産性向上
②外注費・購入材料・購入部品コスト削減
③発注・物流条件変更
④仕様・設計変更
としています。そこで、サプライヤには「①→④の順にご考慮のうえ、御社からコスト削減効果のある施策を提示いただきたい」と伝えます。これだけで、だいぶ集まる提案が異なります。
考えてみるに、
となります(御社=サプライヤ、弊社=バイヤー企業)よね。くわえて、
ともなります。
①象限に書いているのは、
-
計画された出来高が達成できているか
-
段取り計画時間が達成されているか
-
自動化・少人化できる工程がないか
-
過剰な検査工程になっていないか
-
工程のタクトにバラツキがないか
-
不良率が異常に高い工程はないか
-
検査なしで品質保証できないか
というものであり、④象限に書いているのも
-
造りづらい形状になっていないか
-
商品性に影響のないのに高い品質基準を要求していないか
-
わずかな仕様差で部品の種類が増えていないか
-
他社に対しオーバースペックになっていないか
と、かなり難易度が高いものばかりです。言い方を替えれば、サプライヤ難易度が高いものを真っ先に出してもらい、バイヤー側難易度が高いものは最後に検討いただくわけです。そうすれば(ちょっとズルいものの)、こちらには時間がかかることなく業務が進みます。
・そして最後にVA/VE提案書フォーマットを作成
そこで私のVA提案フォーマットをお見せします。
http://www.future-procurement.com/VAformat.pdf
今回も、pdfを載せておきました。これは、見てお分かりになるとおり、「既存品」「VA/VE、改善品」を対比させることで、その内容を明確化するものです。
空欄には絵を多用いただくことで理解しやすくなります。また、(見積り)単価もどう変化するのかがわかれば、その採用促進につながります。なぜならたった1円しか安くならないのか、あるいは100円安くなるのかで、社内の対応も違いますよね。
調達・購買担当者は、一人では何もできず、外部の協力を仰ぐ必要があります。VA/VE施策も、やはりサプライヤから提案してもらわねばなりません。とすれば、どうせなら、サプライヤから実りある提案をいただきたいものです。
<つづく>