「持続可能な調達」を最低限正しく理解する 18(牧野直哉)

前回に引き続き「持続可能な調達」を実践するために必要な具体的な9つの取り組みについて述べます。

7.地域との共存を意識した貢献をおこなっている

この点は、多くの企業でCSRや持続可能な調達といった考え方が登場する前から行われているはずです。したがって、現在行っている取り組みが、地域社会との共存共栄の観点で有効に機能しているかを確認します。

具体的な取り組みには、次の3つのポイントが挙げられます。

(1)従業員の直接的貢献 例:近隣地域の清掃や環境整備

これは、自社の敷地と周囲の環境を保ち、近隣住民に事業運営を理解してもらう基礎的条件を整える目的があります。清掃などは、専門の業者に委託している場合もあるでしょう。そういった企業でも、定期的に従業員が周囲を清掃している姿は、周辺住民に良い印象を与えるはずです。就業時間中におこなえばコストになりますが、例えば年末の大掃除と銘打って、従業員自ら取り組むのも企業姿勢のPRになるはずです。

(2)企業として組織敵貢献:地域組織と連携して活動

これは、地域のイベントや行事に、地方自治体や町内会といった組織と連携しサポートする取り組みが該当します。大規模な工場では、自社を公開して地域住民を招待する取り組みが行われます。

現在多くの企業で「能動的工場見学」が行われています。従来の工場見学は「受動的工場見学」として、総務部門が担当して、行政や顧客の依頼によって対応していました。主にルールを守って操業しているか、供給する製品はどのように製作されているかを伝える場でした。

しかし、工場には、普通の人が見ると「すごい!」と思える設備や製品があります。そういった社員には至って普通の光景を、顧客と共感するストーリーを加えて、自社の製品のファンになってもらうのが「能動的工場見学」です。「受動的工場見学」とは異なり、企画や営業、広報といった部門が主導して、魅力的な工場見学を行うのです。

こういった取り組みは、CSR/持続可能な調達といった考え方とは直接的にはリンクしないものの、地域住民を一消費者と捉えた場合、特にBtoCの業種では間接的に顧客/消費者に理解を深めてもらう取り組みへとつながります。

(3)金品提供による貢献:寄付

企業が立地する地域で開催されるイベントに対して行われる現金や品物の寄付が該当します。現金の寄付の場合は、イベントに公共性があるか、地域住民へ貢献される内容であるかのチェックが必要です。また、寄付金がイベント運営に正しく活用されたかどうかも、余計な問題発生の影響を受けないためには欠かせないチェックポイントです。

8.公職(公務員)との接触は、関連法規を理解した上でおこなっている

私が以前、勤務していた企業では、地域の警察署、交番へ年末年始のあいさつの際にカレンダーを配布していました。非常にシンプルなカレンダーで、会社のロゴも小さく、交番を除くと社内と同じカレンダーがありました。しかし、ある時期から一切、受け取ってもらえなくなりました。

数十年続いた歴史であり、よこしまな目的は全くありませんでした。しかし、公共の場に一企業のロゴが小さくても入っているカレンダーを掲示するのはふさわしくないと判断されたのでしょう。地域の治安を守ってくれている感謝の気持ちを表すために、年末のあいさつは継続しましたが、カレンダーは持参しなくなったのです。

当初私も「そこまでしなくてもいいのに、窮屈な世の中になったなぁ~」と感じていました。しかし今では、あらゆる可能性を考慮すれば、相手から断ってくれて良かったなとすら思っています。企業側から倫理的問題でカレンダーは渡せません、と言われたら、誰だって良い気持ちはしませんよね。

したがって、公職にある人との接触は、必要以上に注意を要します。「これくらいだったら良いだろう」ではなく、基本的に利益供与と見なされる可能性がある行為はすべて慎む方が得策です。公職の側でも、そういった意識が浸透していますので、慎みをもって対処すべきでしょう。

本項の最後に、関連する法規についてご紹介します。

●公務員

①公務員倫理法(Civil Service Ethics Law)
公務員の倫理と行動規範に関し、接待や金品の受領の制限と資産公開の具体的なルールを設定する法律。アメリカでは政府倫理法(Ethics of Government Act)を1978年に制定。日本では96年、厚生事務次官の収賄事件を機に職員倫理規程がつくられたが、官僚の接待汚職はやまず、国家公務員倫理法を制定、2000年施行。課長補佐級以上に1件5000円を超える接待・贈与の報告義務、審議官級以上に資産・株取引・所得の公開義務を課し、人事院に倫理審査会をおく。

②刑法(贈収賄罪)
公務員または仲裁人に対して,その担当する職務に関連して不正な賄賂を供与,申込み,約束などすることによって成立する犯罪をいう (刑法 198) 。収賄罪よりも刑が軽い。贈賄行為は実質的にみて収賄行為と必要的共犯関係にあるが,収賄罪の共犯として刑事責任を問うものではなく,独立罪として処罰するものである。そのことから,学説のなかでは,贈賄罪以外にこれよりも重い刑事責任を負うべき収賄罪の共犯の成立をすべて否定する見解が有力である。なお,特別法には公務員や仲裁人以外の者に対する贈賄行為を処罰する規定も少なくない。

③不正競争防止法
近年の改正動向を含めて、以下のリンクをご覧ください。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/unfair-competition.html

この法律は、現在適用範囲が拡大しており、特に外国公務員への対処は、出張者への教育と理解が欠かせません。
「外国公務員贈賄防止指針」(平成29年9月改訂)
http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/zouwai/pdf/GaikokukoumuinzouwaiBoushiShishin20170922.pdf

海外と関わりのある調達を行なっている場合、自分を守るためにご一読をおすすめします。

(つづく)

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