調達・購買戦略入門(坂口孝則)
25のジャンルにわけて解説しています。
今回はVA/VEについてとりあげます。
正しい意味ではありませんが、ここではVAやVEを「調達品のコストを下げるアイデア」といったていどで使用します。コスト削減の意義は繰り返す必要はありませんが、同じような機能を持った安価な製品を提供するのは企業の宿命でもあります。
ところで、説明をする前にはっきり言っておきたいのですが、世間で溢れているVAやVEというのは、ほとんどが正しい意味で使われていません。とくに調達部門のVAやVEは、その傾向があります。
どういう意味かというとたんに機能を剥ぎ取ったり、簡略化すたりすることをVAかVEと言っているのです。「調達部門から設計部門に対してさまざまな提言をしているが、なかなか採用してもらえない」といったような苦情を聞くことがありますが、中身を見ると「それは採用できないだろう」というものばかりです。
したがって、やや厳しめに言うのであれば、顧客にとっての機能が変わらないにもかかわらず、まさにそれこそ工夫によってコスト削減できるものを、VAかVEというべきでしょう。
ここでは有名な方程式を載せています。
どの計算式でも、機能が下がっているものはありません。簡単にいうと、機能を変えずにコストを下げるか、あるいはコストはそのままにもかかわらず大幅な機能上昇を目指すのか。
さまざまなやり方がありますが、VEは段階でゼロルックVE、ファーストルックVE、セカンドルックVEに分かれる分かれています。
会社の数だけVA/VEの進め方があります。しかし一般的にいえば、このような流れを取ります。
1.対象物の選定と情報収集
2.機能の定義と整理
3.機能の評価
4.改善案の作成
5.実行とフィードバック
観点は次の通りです。
●実際に使う人は誰か
●想定通りの使われ方か
●場所によって使われ方が違わないか
●環境によって使われ方が違わないか
●お客様が不満な点はないか
●過去にクレームはあったか
●潜在クレームはあるか
●VEは行ったか
●評価基準は実情にあっているか
●クレームがあったか
●仕様アップの履歴はあるか
●法規制は予定されているか
●競合他社の仕様は調査しているか
●近接製品と同一機能がないか
●他の工法はないか
●他の機械はないか
●サイクルタイムは適切か
●最低ロットは適切か
●支給の必然性があるか
●荷姿・容器は適切か
●納入場所での希望はあるか
●詳細見積は入手できているか
●物流コストは明確か
●他社類似品とくらべて適切か
●過去類似品とくらべて適切か
●標準品とくらべて適切か
●お客様から評価の高い点は何か
●製品価格はいくらか
●販売数は他社と比較して多いか
●お客様からの仕様ニーズは変化するか
●販売価格は上がるか下がるか
●販売数量は上がるか下がるか
可能でしたら、どんな様式でも構いませんので、簡単に下の図のようなVE機能定義表を作ってみましょう。一つひとつの部品をバラバラにして、そもそもどのような働きをしているのかを書いていくのです。基本的な機能を果たしているものか、あるいは副次的な機能を果たしているのか。
その結果によって、その部品をどう変更することができるかがわかります。注意点は、モノの立場になって、モノを主語として「自動詞」によって記載していくことです。それによって能動的な役割を知ることができ、それをVAやVEにつなげることができるわけです。
さらに可能であれば、そのVA/VEがどれくらいの確率で採用できるかを記載しておきましょう。ほとんど採用できなさそうな難しいテーマであれば、その確率を掛け算することによって、残りどれくらいのVAやVEが捻出されなければいけないかを把握するのです。