バイヤー出張論(牧野直哉)

今回のバイヤ-出張論は、直接業務と関係ない食事や宿泊先に関するお話です。出張に慣れている方はご理解いただけると思いますが、日本で働いている時と比較して大きく環境変わるのは食事と宿泊です。多少オフィスの環境が変わっても、普段電話やメールで連絡を取っているサプライヤーの担当者と直接話をするといった環境の変化は、バイヤー企業とサプライヤーのリレーションに与える影響大きくても、バイヤーにとって日本にいる環境と違うかといえば、精神的にはあまり負荷はかかりません。そういった日常と近い業務内容ですから、日常と同じ様な力を発揮するためにも、食事や宿泊には十分な配慮が必要なのです。会社のお金が使えるから、必要以上に豪華なとこに泊まったり、良いものを食べたりということではありません。体調維持するために最低限の自分への配慮が必要だとご理解ください。

4.食事するとき
海外出張時の食事は、お店やメニューの選択によって、リラックスどころか、思わぬトラブルの要因になります。また海外出張では、衛生状態が悪い地域もあります。会社の任務を果たすためにも、最低限の配慮は忘れずに行います。

①意識しない疲れに配慮する

海外へ向かう航空機では、1~2回の機内食が提供されます。長時間のフライトでは、加えて間食も提供されます。現地への到着時間が昼間の場合、到着後夜になればそのまま夕食を食べる場合もあるでしょう。飛行機内で寝られたといっても、ふだんの睡眠とは違い、十分な休息になっていない場合もあります。結果的に、一日4回とか5回食事をした計算になります。ふだんよりも多くの回数の食事は、消化器官に負担をかけます。加えて、出張先でふだん食べ慣れない食事を取ってしまうと、体調を崩す要因になります。

時差のある地域に出張する場合、離陸後の機内アナウンスで現地時間がわかります。時計があれば、その場で時間を現地に合わせて、機内食を食べるかどうかを決めるのも良いアイデアです。せっかく提供される機内食を食べずに我慢するのではありません。いつもとは違う体への負担を意識して、順調な出張スケジュールの消化を目指します。

②火が通っていても要注意
出張する地域によっては、衛生環境が日本と大きく異なります。グラスに入っている氷が不衛生との指摘は、よく耳にします。テレビの旅番組でも、アジア圏に多い屋台で提供される食事がおいしそうに映ります。日本人は食べて良いかどうかを火が通っているかどうかで判断します。この基準だと、揚げものはすべて大丈夫になります。しかし、火が通っていても体調に悪影響をおよぼす場合があります。

直火(じかび)で焼いている場合、問題の発生は少ないでしょう。しかし、油を使って炒めたり、揚げたりしている場合は、使用される油の状態が問題です。劣化した油で調理された食品は、海外に限らず日本国内でも問題視されています。海外の場合、衛生管理の不全とあいまって、劣化した油で調理された場合、食べてしまうと体調を崩すケースがあるのです。しかし、たまたま入ったレストランで、使用している油の状態を確認できるかといえば、無理ですね。したがって、長距離の移動の後や、疲れを感じているときは、油物を避けるのが得策です。

③出張の後半日程に気をつける
筆者は、海外で何度か体調の悪化させた経験があります。毎回原因となった食べものは異なるのですが、共通しているポイントがあります。出張期間の後半で、気が緩んでいる点です。その結果、食べた瞬間何かおかしいと感じつつも「まぁいいや」と飲みこんでいるのです。体調が悪くなった後、必ず「あれだ」と、原因となった食べものが思い浮かびます。思い出した食品は、決まって国内だったら、まず口にしないモノばかりです。

出張期間の後半になると、どうしても注意力が散漫になります。筆者の経験で、症状がひどかった2つの例は、一回は3カ月にもおよぶ長期出張で2カ月を経過した頃に、もう一回は、一週間の予定がさらに一週間以上延長されたときに起こりました。後半日程は、疲れとともに、現地に慣れてしまい、注意レベルが下がってしまうのです。出張も後半日程は、胃腸にやさしい食事の選択を心掛けます。

5.宿泊場所を選ぶとき

宿泊先は、自宅と同じようにリラックスできて、十分な休息がとれる環境でなければなりません。自分でインターネットを活用して宿泊先を選定する場合の注意事項について考えます。行ったことがない地域であれば、出張先に依頼してホテルを予約してもらいます。この場合も、宿泊するホテルとその周辺の安全性は適切に情報収集を行って判断し、注意深く行動します。

①宿泊料金の差には理由がある

自分で宿泊先を予約する場合、基本的には訪問先の近隣地域を選定します。インターネットの検索サイトでは、地図で位置関係を確認しながら予約可能です。いくつか候補となるホテルを確認すると、訪問先から同じくらいの距離に位置し、同じブランドのホテルであるにもかかわらず、宿泊料金が大きく異なっている場合があります。この場合、交通の便といった要因の他に、地域の治安が宿泊料金の違いとなって表れている場合があります。出張先のホテル選定基準は、価格よりも治安が優先です。ふだん購入している製品と同じく、価格の安さには必ず理由があります。複数の宿泊先候補を比較し、妙に安い場合は飛び付かずに理由を確認しましょう。日本国内は、外出時に注意深く安全に配慮する地域はありません。しかし海外では、安全確保にはコストが発生します。一定以上の宿泊料金のホテルは、設備も充実し安全性が高く安心して過ごせるホテルです。

②周囲環境から判断する
Googleマップを使えば、多くの国で宿泊先付近の道路の写真がインターネットで参照できます。付近の商店のショーウインドーが、ガラスだけか、金網が貼られているかを参照しても、治安状況が想定できます。また、付近に小中学校があれば、治安の面ではプラス要素です。日本人の駐在員が多い地域では、情報交換を目的としたホームページがありますので、そういったページを参照して、現地状況の掌握を行います。

③行動する時間帯を想定する
大都市の繁華街にあるホテルで周囲に商業施設がある場合は、ホテルのロビーからスリや置引といった犯罪には注意しなければなりません。しかし、自分が強盗といった犯罪に遭う事態は、なかなか想像できません。Googleマップによる安全確認で唯一の欠点は、すべての写真が昼間に撮影されている点です。明るい時間では人通りが多く危険がなかった場所でも、暗くなると、一気に危険度が増します。日没前にレストランに入って、食後にレストランを出ると、すっかり暗くなっていたとします。ホテルまで、あるいは車まで数十メートルの距離でも、明るい時間と比較すると危険度は増しているので注意します。

(つづく)

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