ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

●決定版サプライヤーマネジメント 16

前回は、サプライヤーとの関係の深さを測る尺度を5段階で提示しました。前回の例は、量産品/見込み生産品を対象としていました。今回は、受注生産品について、おなじような項目を考えてみます。

ここで、「量産品/見込み生産品」「受注生産品」それぞれの定義をします。

■「量産品/見込み生産品」

顧客がリアル/ウェブを含めた店舗でみて「買いたい」と考えるよう製品=在庫対応品

■「受注生産品」

顧客からの発注があって初めて生産する製品

とてもシンプルな定義です。ところが今回扱う「受注生産品」というのは、取り扱いが難しい商品です。というのも、受注生産といっても、本当に受注してからすべての原材料の手配を開始させるのではありません。実際は、ある程度のレベルまでは原材料や、部品という形で手配をおこないます。この「ある程度のレベル」が、受注生産をおこなうメーカーにおける競争力と密接に関係しています。また別の機会に触れます。

受注生産品の場合、サプライヤーとの関係の深さは、次の3段階で測ることができます。

<クリックすると、別画面で表示されます>

それでは、具体的に個々の項目について、説明を加えます。

●発注方式

発注頻度よる分類です。1のほうが少なくて、3以上が多いのは見込み/量産とかわりません。違いは、もっとも関係の濃くなる3のケースです。この場合は、サプライヤーに固有のノウハウがあり、競合メーカーがないか、著しく少ない場合、もしくは共同開発等、具体的な受発注をベースにしない活動をサプライヤーと共同でおこなっている場合を指します。このような関係をサプライヤーと構築している場合には、案件受注と同じタイミングで、需要が発生した段階で発注をおこないます。

この場合で、1.2と3の違いは、具体的な取引以外の部分で、将来の需要を想定した活動の共有をおこなっているかどうかです。

●価格根拠

3のケースのみが、バイヤー企業側から提示の「ターゲット」を基点にすることができます。具体的には、サプライヤーと協力した活動の中に、コストターゲットを明示し、バイヤー企業/サプライヤー合意のもとで、コスト改善活動をおこなうことで、市場価格に準じた価格決定により近づけることが可能です。それ以外のケースでは、サプライヤー提示の見積が基点になります。

●価格決定

これは、実際の発注頻度に依存します。バイヤー企業側からすれば、都度よりも、期間、それも長期にした方が、都度価格に関するやりとりをなくすことができます。しかし「長期」にすることは、メリットもある反面、リスクも大きくなります。受注生産となれば、一定期間における一定台数の発注数保証、もしくは定期的な発注の保証がない限り、発注都度の価格決定となることはやむを得ません。

●調達リードタイム

これは物理的なリードタイムではありません。注文書を発行してから納入日までの期間を表します。これは、実質的なサプライヤー側での調達リードタイム+製作リードタイムの合計となります。

●納入検査

これは、見込み生産/量産でなく、発注都度も少ない為、発注都度の納入時になんらかの受け入れ検査をおこないます。

●発注量

これは、見込み生産/量産と同じです。個々のサプライヤーへの発注量が自社の総発注量にしめる割合から判断します。

リレーションの面積や、ロイヤリティは、量産品の説明と同じです。(有料会員の方は、バックナンバー76号をご参照ください。無料期間の方は、少しお待ちください)

以上の構成要素を踏まえ、総合的にサプライヤーとの関係の濃淡を3段階で説明します。

1. 非定期購買

これは、需要が不定期で、需要が発生する頻度も低いサプライヤーです。需要が少ないために、発注量も少なくなります。発注頻度が低いために、サプライヤーへの影響力の行使が難しくなります。また納入される製品もバイヤー企業側からは滅多にないものになるため、受け入れ検査でのチェックは不可欠となります。サプライヤーマネジメントの視点では、あまり重要視されない分、サプライヤーから提示される納入諸条件(納期、価格)を受け入れざるをえなくなります。

2. 購入見通し(Forecast)の共有

これは、1に対して受注毎に需要が発生し、かつ購入する見通し・計画をあらかじめサプライヤーへ提示できる場合です。しかし購入数量は低く、購入製品もサプライヤーの標準品や規格品です。ここでは「頻度」がポイントです。量産品ほどではないにしろ、購入頻度についてサプライヤーとの合意できるかどうかで、上記1との違いを見いだします。

3.共有した戦略をベースにした共同開発、もしくはサプライヤーに固有の技術がある

この場合は、上記2に加えて、サプライヤーの設計能力を活用していることが明らかな場合です。調達・購買部門のみならず、設計・技術部門や生産管理、品質保証とサプライヤーの対象部門との直接のコミュニケーションが存在しバイヤー企業とサプライヤーの経営レベルでのコミュニケーションが存在し、経営戦略についても情報交換し、双方とも影響を与える存在である場合です。また、サプライヤー側が持つ固有の技術によって、サプライヤー側に優位性が存在する場合も、このランクを適用します。

次回は、具体的な各ステージでのサプライヤーとの関係継続法です。

<つづく>

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい