司会者(MC)考(坂口孝則)

島田紳助さんという天才を除いて、さまざまな司会者と仕事をしてきました。そんなにテレビに出ていない私も、月に6回ほど、6年間にわたって出続けていれば、経験値があがってきます。よく台本があるんでしょう、といわれるものの、実際にはほとんどありません。文化人枠で出演している私は気の利いた解説を要求され、芸人さんは笑いを要求されます。全国ネットの場合1分で100万円単位のカネが動きますから、テレビは瞬時に答える運動神経が必要です。

いきなり振られて困らないように、演者は常に発言を考えています。しかし、それでも何も発言する内容がないとき、もっと困るのは司会者です。したがって、司会者には、その空間で何か面白いことを語られるヤツを探す能力が求められます。

すさまじい能力をもつ三司会者ご紹介します。明石家さんまさんと、東野幸治さんと、加藤浩次さんです。さんまさんは誰かのコメントを、そのまま繰り返します。しかしなぜか、さんまさんが爆笑しながら繰り返すと笑っちゃうのですね。そしてリアクションは15秒以内。しかも次のオチがつくまで、その単位で回し続けます。名人芸です。

東野さんは的中度がすごい。空間で「このときはこのひと」「困ったらこのひと」「落とすときはこのひと」の三レベルを瞬時に把握します。何かの番組で、「目が笑っていない」と評されていましたが、浅い評価です。話しながら、次は誰に振ったらいいかを考えているんですよ。そのタイミングは0.5秒です。つまり、0.5秒の間隔で演者とアイコンタクトをして「振ってええか?」「あかんか、話すことないか?」「じゃあ、お前どや?」「お、いけるか」という対話をしているのです。1秒なら凡人。でも0.5秒なら名人芸です。

最後に加藤さんは、バランス感覚がすさまじい。番組の中立性とか公平性とか、報道の客観性とか、そういったくだらない「バランス」ではありません。主婦はこういうことを疑問に思うだろう、ビジネスパーソンはこの視点から考えるだろう……という多面性です。そのとき「正論をいうひと」「異論をいうひと」「ようわからへんから簡単に説明して」の三パターンが必要です。思うに、それぞれ、5:2:3で配置なさっているようです。

怪しいひとも、偉いひとも、天才も、美人もブスも、海千山千がゴッチャ煮されたのがテレビであり、それが魅力です。そこでしか生きていけない落伍者もいます。世の中がダイバーシティーなんて語る前から、テレビはそれを実践しています。この凄さと、哀しみを理解しているのが加藤さんです。

だからエロも政治も経済もスポーツも等価になります。中卒とハーバードMBAを同列に扱い、そこから生活者としての叡智を導いていく。偽善的なパフォーマンスのなかに、ある種の侮蔑と軽蔑を感じられるひとと、偽悪的な言動のなかに、対象への愛情を感じられるひとがいるとすれば、加藤さんは間違いなく後者でしょう。

そして間違いなくいえるのは、司会者を分析しようとする私のような人間は嫌がられる、ということです。

 <了>

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