バイヤー現場論(牧野直哉)

8.サプライヤ幹部への対応するとき

サプライヤを訪問すると、ふだん業務には登場しない上位役職者と面談する場合があります。そういった状況にも慌てないように準備し、訪問した意議を増やす取り組みを意識します。

上位者とは、管理者であり、企業経営の中枢に近い存在です。より企業戦略に近い業務に携わっています。バイヤーがサプライヤへ行う依頼事項も、最終的には幹部の意志によって、円滑に受け入れられたり、逆に消極的な対応に終始したりします。サプライヤを訪問した際の社交辞令と受け止めるのか、バイヤー企業の意向を直接伝える場と位置付けるのか、バイヤーとして有効的な仕事ができるかどうかの別れ目です。

サプライヤの幹部には、日常的に仕事をしている担当者とは異なり、自社の戦略にもとづいて話をします。バイヤーが訪問してくれている相手ですから、サプライヤ側の対応者がバイヤレベルに合わせて話をします。目指すべきは、相手のレベルに合わせ、相手の意志決定を自社に有利におこなわせる情報提供ができるかどうかです。そしてサプライヤ社内では敬意を持って扱われている存在です。顧客の立場の訪問であっても、相手への敬意を態度で表します。

① 短時間対応を意識する

どんな企業でも、上位役職者や幹部は多忙をきわめています。場合によっては、廊下で立ち話といった場合もあるでしょう。しかし、会議室に入って着席した場合、5~10分程度なら時間を割けると判断します。まずは、サプライヤの営業担当者が、バイヤー企業の意思をサプライヤ内で実現するために社内で調整をやりやすくするための話をします。加えて重要なのは短時間で終わらせる点です。大抵の場合、挨拶のみの場合が多いでしょう。長時間引き止め話をするのは逆効果です。自分からの話は長くても5分と肝に銘じ、ポイントを突いてもっとも伝えたい内容を明確にしておきます。

②ポイントを絞りこむ

まずは自社事業へサプライヤの貢献をたたえ、お礼の言葉を伝えます。短時間の会話ですから、あれもこれも盛り沢山とするのではなく、もっとも強いニーズの絞りこみを意識します。品質なのか、コストなのか、あるいは納期なのか。今自社で一番強いニーズの実現に協力を要請しましょう。具体的なサプライヤの協力方法について、お願いするのも一案です。

基本的にふだんバイヤーからサプライヤの営業担当者に話をしている内容と同じ伝えます。上位者が来たからといって、営業担当者に話をしていない内容を伝えるのは避けます。サプライヤ内でコミュニケーションが成立しているとの前提で、いつもの話を伝えましょう。

また、自社製品の販売見通しも、相手が興味を持つポイントです。最新の市場環境の分析結果から、どのように対応するか方向性を述べます。方向性を実現するためにはサプライヤにどう対処して欲しいかを伝えます。バイヤーが日常的に営業部門から情報収集をおこなってこういった事態に活用します。

最後に、今後ともサプライヤの協力なしには、自社の事業運営は成り立たない旨を伝え、時間を割いてくださった点に改めてお礼を述べます。

③自社への訪問を要請する

最後に、話をした相手がバイヤー企業を訪問していない場合です。自社の幹部の名前を引きあいに出したり、サプライヤミーティングの開催計画を伝えたりして、自社への訪問を要請します。重要サプライヤであれば、訪問の際にバイヤー企業の幹部との会食をセットして、相互理解を推進するきっかけ作りをします。話をした内容は、決して社交辞令で終わらせずに、訪問以降サプライヤの担当者に対してフォローし実現へとつなげます。

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 <つづく>

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