短期連載・坂口孝則の情報収集講座(坂口孝則)
この大学からかぞえて20年ほど、ずっと「調べて書いて、発表する」行為を続けてきました。社会人になると、「この資料作っておいて」といきなり言われるケースは多いはずです。むしろ、会社員の仕事の大半は、資料作成といっても良いかもしれません。そこで自分なりに総括したい気持ちもあり、『情報収集講座』と題し、短期連載としてメルマガに掲載することにしました。
【第3回】情報と種類を混在させてはいけない
情報とはなんでしょうか。いわゆるデジタル上では、すべて0か1かで表現されるデジタルデータになります。遺伝子や最近では心の状態も情報として表現できるようです。いってしまえば、私たちが触れるものはすべて情報といえます。
ただ、ここで述べたいのは、資料の基本となる情報の違いです。ここで、まずは一次情報、二次情報、三次情報の違いを説明しなければなりません。
一次情報というのはその情報源に直接あたったものです。たとえば誰かについて述べるとき、そのひとと会話したりインタビューしたりすることです。会社の話題であれば、現場で起きていること、社員がどんな気持ちで働いているかといった、直の取材を指します。
某テレビ番組である高貴なお方の健康が問題になったとき。出演者が意見を述べあっていたときに、私の尊敬するジャーナリストは、その場で一次情報をもっているひとがいないので話しても無駄だ、と断じていました。場は静まり返ったと記憶しています。間然できない意見です。ただ、社会人の資料を作るには厳しすぎる意見でもあります。
二次情報とは、たとえば新聞や書籍、テレビやラジオなどのメディア、または論文から得た情報です。また、誰かの発言を間接的に得る場合もあてはまります。二次情報とは、一次情報にふれたひとたちが加工したり処理したりしてあらたな情報をつくりあげます。さきほど厳しい、と書きました。より価値があり、迫力をもつのは一次情報をふんだんにもりこんだものです。ただ、これも、実務的には時間やコストによります。多くの社会人は無尽蔵の時間とコストを有していません。だから、前述したとおり、二次情報だけで資料を作成せねばならないケースも多々あります。ただし、ここでは文字どおり二次情報は一次情報の「次」にあると覚えておきましょう。
そして三次情報というのは、さらに情報源すらわからなかったり、何重にも編集し直されたりしたものを指します。二次情報を誰かが意図的に操作している場合もありますし、特定個人の意見にすぎないこともあります。教科書的には、三次情報を使わないよう禁じられるものの、これまた実務的には使わざるを得ない時間的制約もあるでしょう。「○○部門の○○さんいわく」といった場合です。しかし、その場合もたとえば正式かつ厳格さを求められる資料であれば、避けたほうが賢明です。
□一次情報を情報収集するように努める
□二次情報のみを使うかは制約条件による
□三次情報は避けるものの、使う場合はおって真偽を確認する
*誰かの資料を収集するときには種類を意識する
またどの情報であれ、その種類に注意する必要があります。たとえばインタビューをするときや、現場取材をする際にも、対象から出てきた情報が、「事実」なのか「分析」なのか「希望」なのかを意識すべきです。
「今年は2015年とくらべると、春物衣料の売上が5%落ちているんです。これは、きっと気温が下がっているからなんですよね。でも、夏からは挽回すると思いますよ」と聞いたとします。
そのときに、このまま情報摂取してはいけません。「売上が5%落ちている」というのは、確認する必要があるとはいえ、事実です。しかし、「気温が下がっているから」というのは分析です。ほんとうに気温と売上の関係はあるのでしょうか。また気温は下がっているといえるのでしょうか。それ以外の要因があるのではないでしょうか。さらに、「夏からは挽回する」のはたしかなのでしょうか。これは希望です。気温はどうなって、かつ確実さはあるのでしょうか。
ところで私は誰かが述べたことの真偽をしらべる癖があります。「雨の日は小売店の来客者が少ないから、値引率が高い」といわれますが、その傾向は見られませんでした。また「コンビニが日本各地に広がると、均一の商品ばかりしか買えなくなる」といわれますが、実際にはコンビニは地域限定のバラエティ豊かなラインナップをむしろ増やしています。
事実でなく、誰かの感想や分析の場合は、さらにつっこんで情報を集める必要があります。さらにこの姿勢こそがみなさんの情報収集に価値を与えるのです。
<つづく>