バイヤーの現場論(牧野直哉)

6.サプライヤーが来たとき

バイヤーの元には、たくさんのサプライヤーの営業パーソンが来訪します。わざわざ時間を割いてくださった機会をどのように活用するかも、バイヤーの優劣に大きく関係します。優秀なバイヤーの元には、たくさんのサプライヤーの営業パーソンが訪れ、多忙でも上手にコミュニケーションをおこなって、業務につなげています。メールや携帯電話といったコミュニケーションツールの活用が進み、直接面談する意議は、より高まっています。電話やメールよりも、貴重な機会となるサプライヤー来訪を有効活用します。

①笑顔で迎える

「笑い」には、問題を乗り越え、解決に導いたり、新陳代謝や血液の循環をうながし、免疫機能を活性化したりする効果が得られます。そんな効果的な「笑」を、バイヤーと営業パーソンの関係性向上に活用しない手はありません。サプライヤーの来訪時に、営業パーソンを笑顔で迎えるのは、相手を笑顔にし、リラックスさせる目的があります。両者は、価格に代表されるさまざまな取引条件を腹に抱え、お互いが探り合う関係です。お互い探り合いが必要な場面もあるでしょう。しかし、腹を割って、胸襟を開き話し合って、相互理解が進みます。二つの場面を想定して、笑顔の効用を理解します。

バイヤー企業のメリットにつながる話を持ってきた場合、バイヤーの笑顔によって、顧客満足を高められたと理解するでしょう。逆に、バイヤー企業にはデメリットになる話をしなければならない場合、バイヤーの笑顔は、話を切りだすきっかけになるでしょう。バイヤーは、耳の痛い話ほど、早期に入手しなければなりません。デメリットにつながる話も早期に入手し対応すれば、被害を最小限にくい止められるのです。

営業パーソンを笑顔で迎えるにはどうすれば良いか。会った瞬間に「本日はおいでくださり、ありがとうございます」と、来訪に感謝の意を言葉で表します。感謝の意をぶぜんとした表情で言い表すのはかなり難しいものです。

②やって来た理由によって「場」を設定する

事前にアポイントがあり、かつ要件を理解している場合です。いつもの営業パーソン以外も同行者がいる場合は、営業パーソンへの尊敬の念を、設定する場所と対応で表現します。可能であれば、応接室を準備します。上位の役職者が同行する場合はもちろん、設計や生産の技術者が同行する場合も、同じように対応します。

サプライヤーの営業パーソンは、サプライヤーの社内でどんな役割を担うのかを改めて考えてみます。バイヤー企業の意向や、バイヤーの発言を、サプライヤー社内で、関連部門へ伝える役割です。その役割を最大限発揮するために、営業パーソンにはサプライヤー社内で発言力を持ってもらわなければなりません。バイヤー企業に尊重されているとの印象を、営業パーソンの同僚や上司に植え付けるのは、サプライヤー社内で営業パーソンの発言力の裏付けになります。皆さんの勤務先でも、顧客に信用され尊重されている営業パーソンは、社内で発言力をもっていませんか。場所の設定は、信用や尊重を表す重要な要素なのです。

③アポなし来訪はどうするか

アポなしの訪問者への対応は、バイヤーによって意見が分かれる問題です。会うバイヤー、会わないバイヤー。いずれにも相応の理由があります。突然の来訪者に、自分のスケジュールを変更してまで会う必要はありません。しかし、アポなしの訪問者には、絶対に会わないと決めてしまうのも、少し極論に感じます。

しかし、アポなしの訪問者に会わないとの主張にも、妥当性はあります。まず、ビジネスのセオリーとして、事前にアポイントメントの取得は必要です。営業パーソンだけでなく、バイヤーも相手の都合を考えて行動しなければなりません。

そして、こんな目的でアポなし訪問をするケースもあります。営業パーソンとバイヤーの間では、取引条件をめぐった交渉がおこなわれます。交渉には、十分な準備が必要です。準備をさせない目的で、アポなし訪問をする場合があります。まさに奇襲攻撃そのものです。

アポなしで訪問を受けた場合、どんなに忙しくても数分の時間は割けるはずです。その数分間を利用して、訪問の真意をただします。先約がある場合でも、必要性を感じれば、面談時間の調整をおこないます。もしかすると、重要な話をもってきている場合もあります。そういったチャンスを逃さないためにも、柔軟性を持った対応が必要です。アポなしで、重要な話を持ってきたら、一時間くらいは待つはずです。そういった可能性を見極める余裕と柔軟性は、バイヤーに必要です。

(つづく)

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