バイヤーが最低限知るべき、サプライヤ決算書「これだけ」パート2(坂口孝則)
調達・購買担当者が最低限しるべき決算書の基礎について数回にわけてお話しています。
・貸借対照表とは何なのか
決算書とは何か。おそらく、みなさんも何冊か書籍をお読みになったでしょう。しかし、決算書がイマイチわからない。そう感想を持っているひとは多いはずです。なぜか、それらの教科書がかたすぎて、専門家による専門家のための解説書になっているのです。
私たちは実務家です。そして調達・購買関係者です。経理担当者や財務担当者ではありませんし、なおさらのこと、税理士や公認会計士でもありません。私たちが必要なのは、決算書の”生きた”読み方であり、ざっくりと理解できる”本質思考”でしょう。
そこで、まず「バイヤーが最低限知るべき決算書」として貸借対照表から説明します。
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ここで細部の説明はしません。左側が「借方」右側が「貸方」と書いています。直感的なイメージでは、目を右から左に流してもらって、「貸方」=「お金をどうやって集めてきたか」にたいして、「借方」=「集めたお金を何に使ったか」だと覚えてください。会社はお金を二通りで調達します。借金によるものと、株主が出資するものです。その集めたお金を、製品に姿を変えさせたり、設備に変えさせたりするのが左側です。
中身はまだ把握する必要はありません。ここでは大枠のみご覧ください。
・損益計算書とは何なのか
次に損益計算書です。貸借対照表は、集めたお金と、その使い道だといいました。損益計算書は、その過程で行う、モノを販売したり、外注にお金を払ったり、あるいは利息を支払ったり、といった活動の収支計算書のことです。
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「5個の利益、4個の費用、3個の収益が存在する」と書いています。ざくっといえば、収益とは会社に入ってくるお金を分類したものです。そして、費用はその収益をうける際にかかったお金(コスト)。利益は、収益から費用を差し引いたものです。
とくに収益を利益の意味で使用するひとがいますから注意したいものですね。ここでは、図の通りではあるものの、いわゆるモノづくりに必要な費用を差し引いたのが「売上総利益」=粗利益で、販売費及び一般管理費をも差し引いたものが「営業利益」とくらいは覚えておきましょう。
・そこで、貸借対照表の中身を見ていこう
さらにここから貸借対照表の細部を見ていきます。はい、安心してください。読めば難しいことはありません。実は貸借対照表の本質について、「純資産は幻である」「純資産は単なる差額にすぎない」のです。これはけっこう知らないひとからすると衝撃かもしれません。おってご説明します。
まずは貸借対照表の構造をこう考えてください。
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ざくっと、左側は「資産」、右側が「負債」と「純資産」と稽えるのです。いいのでしょうか。いいのです。そして、そこから本質的な説明を行います。
私は、右側の「貸方」=「お金をどうやって集めてきたか」にたいして、左側の「借方」=「集めたお金を何に使ったか」と書きました。その左側=「資産」からの説明です。
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「資産」とは、会社が保有するものです。従業員は保有ではなく、雇用契約に基づいて働いてもらっているので資産ではありません。しかし、ここに会計の限界もあるのです。というのは、社員の一致団結ぶりだとか、あるいは異常にすごいアイディアとか、サービスレベルの高さなどは(それ抜きには会社の卓越性は語れないとはいえ)計上しないのです。ふなっしーグッズを販売する会社があったとして、その商品在庫は計上されても、ふなっしーというキャラクター自体のブランディング価値はわからないのです。
・大事な右側の「負債」「純資産」
次に右側です。
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「負債」は文字通り借金ではあります。しかし、ここで注意せねばならないのは、「負債」といっても借金のお金そのものを指し示していません。あくまで、お金は、左側の資産に載っています。ここでは、「借金の支払い義務」を示すと考えるべきです。つまり、右側で借金を背負い、その支払い義務が記載され、その借金によって「現金が増えた」とか「設備を購入した」とかいった変化は左側に記載されるのです。繰り返しますが、「負債」といっても借金のお金そのものを指し示していません。あくまで義務を表現したものにすぎないのです。
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そして「純資産」です。これは通常「株主から出資されたお金」と表現されます。教科書的には正しそうに見えても、これはまったく本質的ではありません。なぜならば、上記「負債」の箇所を思い出してください。何度も申しますが、「負債」といっても借金のお金そのものを指し示していません。おなじく、「純資産」といっても、株主が出資したお金そのものを表現しないのです。
笑い話があり、ある会社の社長が会計士に「ウチの会社の決算書に載っている純資産1000万円を見せてくれ」といったそうです。「決算書には載っているけれど、そんなお金は金庫にないぞ」と。そりゃそうです。「純資産」は株主が出資したお金そのものを表現しないからです。ではなんでしょうか。これは、「資産と負債の差」にすぎないのです。たとえば、株主が1000万円を出資します。すると、それは現金とか資産とかに姿を変えて左側に記載されます。それで終わりなのです。
あとは、この「純資産」の箇所は、単に「資産と負債の差」を表現するにすぎません。しかし、こう考えると、スッキリ!します。実態はありません。しかし納得できないかもしれません。どういうことなのか。
次回以降も決算書の本質についてお話しします。
<続く>