ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

<7 利益を出すコストダウンと改善手法> 

9.購入対象にフォーカスしこだわる ~VA/VE

VE(Value Engineering:価値創造)とVA(Value Analysis:価値分析)は、モノの機能にフォーカスして価値(機能とコスト)で評価し、改善・改革へとつなげる考え方です。

これまでVE/VA活動は、サプライヤーからの購入対象に対する購入価格の削減活動と捉えられてきました。現在作られている製品の原価が守られているかどうかを管理し、より安くできないかどうかを追究する活動です。

こういった考え方に加えて、VE/VA活動を少し広く考えてみます。調達・購買部門とサプライヤーとの間の活動ではなく、企業全体の活動として捉えます。市場からの要求機能を満足する商品を目標コスト・投資・スケジュールで造りこむ組織的な活動として捉えてみます。全社の活動が、外部からの調達費用、自社(バイヤー企業)の「原価」を対象としている一方、後者は原価のみならず、機能とスケジュール(時間)も対象にしている点が異なります。

後者の活動は「原価企画活動」と呼ばれます。既に完成された製品のコストを下げるのではなく、商品の企画段階から、機能だけではなく、使用方法や、デザイン、リサイクル性といった要素も含め、かつ販売時点の売価やコストだけでなく、製品のライフサイクル全体をターゲットとする活動です。今回御紹介するVE/VA活動の基本にしても、調達・購買部門やサプライヤーのみならず、企業内の各部門が一丸となって対処すべき内容です。

現実は、コスト削減、特に購入品のコスト削減は調達・購買部門の役割とされていませんか。実際、購入品だけを考えても、自社(バイヤー企業)の調達・購買部門と、サプライヤーの営業部門の間では、大きなコスト削減の効果は望めません。コスト削減は企業内全部門に関連する活動であると位置付け、VE/VA活動を全社活動化が必要です。このような観点で、これから述べるVE/VA活動の基本を読みすすめてください。

☆「VE5原則」

VE/VA活動を進める上の基本的な考え方を、次の5つのポイントで示します。
(1)使用者優先の原則
機能を高めるのも、使いやすくするのも、コストを引き下げるのも、すべて使用者の利益のためにおこないます。こういった考え方は、顧客視点での企業内活動を実践するためにも必要です。
(2)機能本意の原則
顧客は、要求を満足する機能を求めており、機能をまっとうする最適な方法を考案、選択します。このような考え方は、顧客のニーズを的確に掌握する根拠になります。顧客ニーズは低価格としか主張しない営業部門の抱える問題点がこのポイントに含まれています。
(3)変更の原則
従来の方法を変えなければ進歩がなく、ライフサイクルコストで評価して、企業にとってメリットのある変更が望まれています。機能や品質、リードタイムや価格で競合企業より比較優位性を持つためには、目標達成のプロセスに問題点をみいだし、変化の必要性を示しています。
(4)チームデザインの原則
人間の発想能力を最大化するために、チーム活動による刺激しあう集団を目指したチームデザインを示します。VE/VA活動には、社内全体の関与が必要となる根拠です。テーマによって、参加の必要性の度合いが違ってくる可能性はあります。しかし、できるだけ関係者が全員関与する活動にしなければなりません。
(5)価値向上の原則
基本原則となる式は、V(Value)=F(Function)/C(Cost)であり、Fを維持、もしくは向上させるか、Cを維持するか引き下げ、Vの向上を目指します。これは、VE/VA活動のまさに基本となる部分です。コストを費やせば、機能や品質の高度化は可能です。しかし、コストを下げなければならない現実が、VE/VA活動を難しくします。こういった厳しい現実にも、社内関係者が同じく目を向け、正しく理解して活動しなければなりません。

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☆VEの基本3ステップ

VEを実現するためには、いくつかのステップが存在します。ここでは、基本の3ステップをご紹介します。

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(1)Blast 従来の方法を破棄して、要求機能のみに置き換えます
(2)Create 同じ要求機能をはたす方法を自由に発想します
(3)Refine 価値を高めつつ、制約条件を加味して実現性を検証します

この3ステップの特徴は、(1)の従来の方法を破棄する点です。従来品のこだわりから一旦解きはなたれ、ゼロベースでの思考開始がVE/VA活動には必要です。

☆VEの取り組みはディスカッションから
上記のような取り組みは、VE/VA活動参加者がディスカッションでお互いの発言で刺激し合いながら、発想し検証を進めます。ここで、調達・購買部門の役割は、テーマを選定し、社内関連部門と協力してVEの実現へリーダーシップです。全員参加の原則を守りつつ、役割分担(情報収集や評価の数値評価等)をおこない、計画⇒作業⇒理解との流れで進め、特に最後の理解するプロセスは関係者全員で共同して取り組み、VEの実現を進めます。

(つづく)

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