一読即決『ビジネスマンのための「行動観察」入門』(坂口孝則)

もっと早く読んでおくべきでした。ビジネスマンのための「行動観察」入門』です。この本は、ありとあらゆる業務についてフィールドワークしてきた著者が、いかに業務改善施策を導くかまでをルポ形式で描いたものです。

たとえば、ファーストフード店で、ゴミ箱に注目したとします。ゴミ箱にお客さんが正しく仕分けして捨ててくれるためには、どうすればいいのか。もしかすると、解決策はお客の席に一つひとつゴミ箱を設置することかもしれません。もしかすると、ゴミ箱の張り紙を「分別して捨ててください」ではなく「いつも分別していただきありがとうございます」と変えたほうが分別してくれるようになるかもしれません。もしかすると、あるいは美人の店員さんが横に立っているだけで、正しく分別するようになるかもしれません。

それらはすべて仮説です。ただし、その仮説を導くときに徹底した「現場観察をやろうじゃないか」というのが本書の主張です。そして現場でじっくりと手順を踏み考えるだけで、劇的な改善策が生み出されていきます。

もう一例をあげましょう。スーパー銭湯で、ビールの売上をあげるためには、ビールの宣伝張り紙をどこに掲示すればよいか――。答えは、なんとサウナ室のなかでした。あるいは、子どものジュース売上をあげるためには、どうすればいいか。子どもが飲みたいといっても、父親が拒否するケースがあったようです(「家まで我慢しろ」とかね)。解決策は、大人の自販機の隣におくことでした。

さらに営業マンを「売れる」ように育成するためにはどうすればいいか……。などなど、これまでになかった具体的な観察メソッドが詰まった本です。もちろん調達・購買担当者になぜ紹介したかというと、この「現場を観察して」そして「改善につなげていく」こと自体が、調達・購買業務に直結するのではないかと思ったからです。

もちろん、現場を観察するだけで、誰でも簡単に凄い改善策が「自動的」に導かれるわけではありません。現場で必死に考え続けるプロセスは必要です。しかし、とはいえ、ビジネスマンのための「行動観察」入門』は、改善策の導き方のヒントをたっぷりくれます。同書には工場改善の事例も登場します。これを読んだら調達・購買担当者はどう思うかなあ。と楽しみでもあります。

あえて一つだけ批判的に述べると、この著者は「アタマがいいのではないか」という疑問を払拭できません。つまり、アタマがいいから、これほどブレイクスルーを生み出せたのではないかと。しかし、その点を除いても一読に値します。そうか、やはりすべての答えは現場にあるんだな、と思わせてくれる本です。

(了)

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