ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)
5-4まとめて安く買う ~集中購買のメリット・デメリット~
数量をまとめて、一回あたりの購入量を増やして発注し、サプライヤから安い価格を引き出す集中購買。しかし、集中を実現するのは簡単ではありません。どのように「まとめ」て、数量を「増やす」かがポイントです。集中購買の定義は次の通りです。
「バイヤ企業の要求事項やサプライヤの提供内容を、さまざまな手法によって共通化・標準化・集中化し、双方のリソース活用の効率性を高め、メリットを双方の当事者が享受すること」
これまでも「まとめる」と書きました。しかし、この「まとめる」のが非常に困難です。難しく集中購買の取り組みのポイントである「まとめる」について、具体的なまとめ方、なにをまとめるか(対象)が重要です。なにを、どのように「まとめる」にしても、自然にはまとまりません。調達購買部門/バイヤが意志を持って、意図的に「まとめ」なければなりません。
確かに、普段の買い物でも「まとめ」て購入すると、分散していた時よりも安く買えます。しかし、これは購買者であるわれわれが「まとめ」ているのです。前提として、販売者の「まとめ」ると安くなります、との提案があります。調達購買の現場でも、同じように購入ボリュームによって価格が異なるケースもあるでしょう。今回は「意図的にまとめる」方法論を述べます。
☆発注量をまとめるため何を「集中」させるのか
数量をまとめるために「集中」させる対象は、次の3つです。
①購入窓口をまとめる
②いくつかの種類に分かれていた類似品を、一種類にまとめる
③類似品を発注していた複数のサプライヤをまとめる
もし、簡単にまとめられるのであれば、すぐに「まとめて」安くするべきです。しかし、複数のサプライヤに分けて発注していた、もしくは似た仕様の類似品を複数種類購入していた場合は、そうなってしまった相応の理由があるはずです。まとめるのは、その一つひとつの購入品が分散していた理由を解き明かし、分散せざるを得なかった理由を解消しなければなりません。「まとめて買うと安くなる」とのシンプルなロジックによって、調達購買業務を知らなくても「集中購買」は、とても取り組みやすい手法です。でも、実現にはいくつもの困難な課題を解決しなければなりません。
それでは、3つの集中について、確認してゆきます。
☆企業間・事業所間で購買量を集中させる
同業種の企業がまとまって集中購買を行なう場合を「企業間」、社内の異なる事業所で集中購買をおこなう場合を「事業所間」とします。いずれのケースでも集中させる対象は同じです。しかし「同業種」の場合は、製品やサービスを同じ市場で販売している競合相手であるケースが多くなります。そういった場合、果たして購入側の連携は実現できるのかどうか。異なる企業間で購買量を集中するためには、企業内外の調整を巧みに実行する仕組みが不可欠です。
両方のケースに共通するもっとも効果的な取り組みは、サプライヤとの交渉窓口の一元化です。集中によるメリットをサプライヤから引き出す企業や事業所を1社(1カ所)選定し、他の企業や事業所は、一定期間サプライヤとの接触や、集中する案件に関するやり取りを禁じます。「集中する」といいつつ、各社(各事業所)の調達購買部門がサプライヤにコンタクトする状態は、ただ混乱を生むばかりでもっとも避けなければなりません。そして、接触を禁じるルールは、調達購買部門/バイヤとしてとても厳しく、難しい対応です。しかし複数からのコンタクトは、サプライヤから「本当に集中するのか」との疑念を生み、集中購買の実現を危うくします。
したがって「企業間・事業所間で購買量を集中させる」ためには、対象となる複数の購買窓口の意思統一がポイントです。窓口の間で、購買量に明確な違いがあり、少量しか購入しない窓口が、多くを購入する窓口に任せるといった場合は、良好な結果が期待できます。大手企業で、購入の実態がないにもかかわらず、本社の調達購買部門が窓口をするといったケースは、もっとも失敗する可能性が高い残念な例となります。実態として、複数の窓口を比較して、もっとも購買力の高い窓口に絞るが、企業間・事業所間で購買量を集中によるメリット獲得を成功へと導く近道です。
(つづく)