ほんとうの調達・購買・資材理論(坂口孝則)
・25のスキルと知識がバイヤーを変える
今回も、「調達・購買担当者として必要な25の知識・スキル領域」からお伝えしたい。新規購読者のみなさまに少し解説しておくと、私が提唱する「調達・購買担当者必須知識・スキル25」というものがある。それをこの連載では順に解説している。
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この25個のうち、すでに5つ終了した。有料期間に突入したみなさまは、ぜひバックナンバーをご覧頂きたい。今回は「海外調達・輸入推進」のBである「海外サプライヤ検索」にいきたい。
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現在、海外の安価なサプライヤを探すことが急務となっている企業が多い。そこで、今回は、あえて海外調達のBから進めていこう。
・海外サプライヤの検索法
海外サプライヤを探す方法はさまざまだ。
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代表的なものは、上図で書いたように、IPO(International Procurement Office)からの情報もあるだろうし、展示会、インターネット、同業他社からの情報・調査、設計・他部門からの情報、売り込み……。などさまざまなルートが考えられる。
インターネットでの情報ソースを列記しておく。
NCネットワーク http://www.nc-net.or.jp/
→製造業を中心にアジアのサプライヤー情報を提供
マークラインズ http://www.marklines.com/ja/index.jsp
→自動車業界のサプライヤー情報を提供
→主にBtoC領域のサプライヤー情報を提供
エリスネット http://www.elisnet.or.jp/
→半導体メーカー情報を提供
JETRO「海外ミニ調査サービス」 http://www.jetro.go.jp/services/quick_info/
→海外の特定地域のサプライヤー情報を収集してくれる
JETRO「引き合い案件データベース」 http://www.jetro.go.jp/ttppoas/indexj.html
→全世界のサプライヤーからの引き合い案件を掲示
JETRO「j-messe」 http://www.jetro.go.jp/j-messe/
→全世界の展示会を検索できる(出張に超便利!!)
などである。
ちなみに、海外の国々の状況を知りたければ、ヘタなガイドブックよりも「CIA」(あのCIAである)の「THE WORLD FACTBOOK」がかなり使える。海外旅行専用サイトでも、これほど詳しい情報を載せているところはない。
・見積入手までのプロセス
海外サプライヤーを検索したあとには、見積入手を行う。このプロセスは国内サプライヤーと変わるものではない。
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慣れないと英語に「つまずいて」しまうかもしれない。ただ、内容自体は難しくない。サプライヤーからのProposal(提案)に基づき、バイヤーがInquiry(引き合い)を実施し、Offer(回答)を得て、両社の合意(Acceptance)に至る。
ここで、海外サプライヤーに見積依頼を行う際に、気をつけるべきポイントについて(私なりに)まとめておいた。
1.仕様観点
・製品の機能・性能は定量的に表現されているか
・データシート、または仕様書は過不足なく提供しているか
・図面の中に「または同等材料(or equal / or equivalent)」という表現を使っていないか。使っているとしたら、その同等材料の評価基準は存在するか
・必要以上に厳しい仕様要求となっていないか
・海外サプライヤが理解できるスタンダードなスペックになっているか
2.品質観点
・製品の品質基準は定量的に表現されているか
・必要以上に厳しい検査要求となっていないか
・必要以上に厳しい外観要求となっていないか
・梱包・出荷条件を明記しているか
3.商業条件観点
・見積り依頼の理由を明記しているか(単なる情報収集であればその旨伝える)
・契約条件を明記しているか
・見積り希望通貨を明記しているか
・納期・検収条件を明記しているか
・支払い条件を明記しているか
・ライセンスの特別条項があればそれを明記しているか
・支給品がある場合は、その旨明記しているか
・見積書フォーマットについて規定しているか
・見積り提出時期の締め切りを明記しているか
・サプライヤからの質問の対応について明記しているか
・見積り提出にあたり特別な事業者免許等が必要な場合は、それを明記しているか
4.その他観点
・環境調達・CSR調達に関わる事項は記載されているか
・自社で重要となるノックダウンファクターは記載されているか
なかでも重要なところを赤字にしておいた。
・図面の中に「または同等材料(or equal / or equivalent)」という表現を使っていないか
→海外サプライヤーが安価な材料で見積もってくることがある。もっといえば、のちのち問題となるのは、この「同等材料」という表現だ。この表現を使うのであれば、何が同等で何が同等ではないかを即答できるようにしなければいけない。
・見積り依頼の理由を明記しているか(単なる情報収集であればその旨伝える)
→単に価格レベルを知りたいのであれば、その前提を伝えないと、海外サプライヤーを「ナメる」ことになる。
・自社で重要となるノックダウンファクターは記載されているか
→ノックダウンファクターとは(この連載でもかつて説明したとおり)自社の調達において欠かせない条件のことだ。自社が譲れない条件があるとしたら、それをあらかじめ伝えておく必要がある。
そして、私が書いておいたチェックポイントは絶対ではない。これをベースに注意すべき点をどんどん加算していこう。
・サプライヤーチェックシート
そして、サプライヤーと対面したときの質問票について特別に(というほどでもないけれど)掲載しておく。pdfなので、よろしければ、保存して参考にしてほしい。サイトは、ここにある。 http://bit.ly/Mpef9g
何か一つをやれば海外調達が上手くいくことはない。さまざまな手法や知識をフル動員してあたる必要がある。それが、海外調達を成功に導くコツだ。今回は、サプライヤー検索の方法として、インターネット上の情報ソースや、見積入手までのプロセス、そして見積もり依頼時のチェックポイント、質問票までを説明した。
この「海外調達・輸入促進」のCでは、海外サプライヤーの見積の妥当性の判断などについて述べていきたい。
「25のスキルと知識がバイヤーを変える」と私は信じている。
<つづく>