ほんとうの調達・購買・資材理論(坂口孝則)
・正しいパーセンテージの話をしよう
正しくパーセンテージを記述するための話をしてみたい。コスト削減率や、目標原価達成率……。調達・購買・資材部員はさまざまな場面でパーセンテージを記述する。「そんなことは誰でもできる」と思われるかもしれない。しかし、多くの人が「ある間違い」を犯していることに気づいた。というか知らないのだろう。もしかすると、各バイヤーの方々に気づきを与えることができるかもしれない。
まずは、このような例を見ていただこう。
表にまとめると、こうなる。
あるサプライヤーがいくつかの製品を担当してくれている。そのときに、目標単価とその達成率を見る場合だ。このとき、平均目標単価達成率はどのように求めればよいだろうか。
まず、単純に思い浮かぶのは、それぞれの製品の「目標単価達成率」を足して3で割ることだ。
この場合、もう一つの答えが浮かぶだろう。というのは、製品Aと製品B、製品Cの目標単価自体がそもそも異なる。1,000円の製品を10%安くしてくれた場合と、10円の製品を10%安くしてくれるのとでは、意味が違うのではないか。その場合は、合計値・あるいは加重平均で計算することになる。
たとえば、上記の例では合計値を求め、そこから「目標単価達成率」を算出した。加重平均にするのか、あるいは単純に合計して3で割るのか。それは、目的によって変化する。しかし、どちらの場合であっても、「足して割る」のは共通だ。
ただ、このような場合はどうだろうか。
同じく表にまとめてみた。
一つの製品に関して、平均の単価低減率を見る場合だ。このような場合には、どうやって年度の平均単価低減率を計算すればよいのだろうか。単純には、次のような計算方法を思いかべるだろう。
この前の問いと同じく、率を合計して割るという方法だ。こうやって求めると31.67%になる。それに、このように計算する人はかなり多い。しかし、重要なことは、これは「間違い」であることだ。
なぜなら、単純な計算だけれど、1,000円に、(1-31.67%)を3回かけてほしい。ほらね、300円にならないでしょう。正しくは、次のように計算する必要がある。
正しく計算するときに使うものは、低減率ではない。対前年比の単価比率だ。ここに、通常の単価低減率と異なる点がある。「^」という見慣れない記号が出てきている。これは、「ルート」を示す。そのルートが「1/3」になっているから、要するに3乗根を計算しなければいけないのだ。エクセルを使って、一度、上記式をそのまま入力してほしい。そうすると、66.94%が求められる。これを1から引いたものが答えになる。要するに、平均の単価低減率は33.06%ということだ。
ためしに、一度検算をやってみよう。
1,000円に(1-33.06%)を3回かけてみよう。すると、ぴったり300円となるので実際と合致する。そして、一つの製品に関して、平均の単価低減率を見る場合、このようにルートで計算することを幾何平均と呼ぶ。このような場合は幾何平均でしか平均率を求めることはできない。しかし、多くのバイヤーが知ってか知らずか、間違った単純平均の値を平均率として資料に盛りこんでしまうのだ。
ためしに、直感的な例をあげよう。
このような場合、価格の平均推移を、(▲40%+50%)÷2としてしまったらどうか。答えは、+5%になってしまう。そうすると、平均が5%上がっているという意味になるから、2006年と比べて、2008年は価格が上昇していなければならない。しかし、実際は9,000円と下がっている。あきらかに+5%上がったとする答えは間違いなのである。
これも正しくは幾何平均によって求めなければいけない。ただ、現場ではこのような間違いが横行している。材料の平均推移率を求め、ほんとうは下がっているはずなのに、計算上は上がっているように出る。これも幾何平均を使っていないためだ。
せっかくコスト削減を成し遂げても、それを正確に記述することができなければ、混乱をもたらす。パーセンテージの計算はバイヤーの基本となるものである。しかし、それが不十分であることも多い。
正しい評価のために、正しいパーセンテージ計算を。そして、この正しい計算の方法はさまざまなところに伝播してゆく。