ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

●サプライヤーマネジメント5

~区別するサプライヤーを見極める方法

前回は、将来必要になるサプライヤーを区別する意義についてお話しました。今回は具体的に区別するサプライヤーの見極め、選別方法についてお話します。

最初に、サプライヤーを区別するために必要な次の3つのデータを収集します。

1. 発注金額

これは、過去から現在にわたる発注金額を数値データとして収集します。比較的どこの企業でもこの数値は調達・購買部門として持っているはずですね。私は、経理部門から毎月のサプライヤー毎の購入額をすべてデータで入手しています。

このデータから区別すべきサプライヤーを見いだす方法は、ABC分析(重点分析)です。インターネットで「ABC分析」で検索すると、沢山の例を示したページが表示されます。ABC分析そのものは、(ウィキペディアのページはこちら→ http://ja.wikipedia.org/wiki/ABC%E5%88%86%E6%9E%90 )私がおこなっている、サプライヤーをする区別のための資料は、次の通り作成します。

(1) サプライヤーからの購入額データ、これから始めるのであれば、過去3年分までを入手する。

(2) サプライヤー毎の購入金額合計を、①年間 ②半年 ③四半期の三種類算出し、合計6種類のABC分析をおこなう。

私は過去にさかのぼって、このデータを作成して、実際のサプライヤーマネジメントの参考データとして活用しています。現在の勤務先の規模であれば、元々の数字があれば、エクセルで十分に作成・管理が可能です。

年間の分析結果を基に、過半数の購入額をサプライヤー何社でカバーしているか、まずここでは購入額の80%とか、90%をカバーするサプライヤーが何社あるのかを掌握することが必要です。現在の業務では、90%をカバーするサプライヤーを抽出しています。ここで、なぜ90%というカバー率を採用したかという理由です。

当初80%をカバー率として設定していました。そして90%とした場合に増加するサプライヤーと、バイヤーのリソースを踏まえ、80%のカバー率と同様のマネジメントが実現できると判断しました。ここで、サプライヤーを区別して扱うことを推し進める場合の頻出問題として、区別されなかったサプライヤーの扱いがあります。取引額が少ない、微々たる額であったとしても、納入が滞る、品質が悪いといった問題が発生する可能性はあるといったことが根拠になっています。こういった話に対しては、

・取引額上位のサプライヤーと相対的に考えて、問題の発生する確率が低いこと

・発注に際しては、代替品・代替サプライヤー確保の難易度から判断し、既に取引している取引額上位のサプライヤーからの入手できる場合は、闇雲に取引額の少ないサプライヤーとのビジネスをおこなわないことも考慮すること

・取引をおこなう上での最低限のやりとりはおこなう。区別したサプライヤーへのアプローチは、あくまでも最低限に対しては+αの内容であること

といった対処で乗り切るべき事象であることを明確にします。取引規模大小に関わらず重要と位置づけ、サプライヤーを区別しないことは避けなければなりません。

2. 代替サプライヤーの存在

私は、世の中でほんとうに供給源が唯一無二であることは、よほどの特殊品でない限り、あり得ないと考えています。その前提条件としては、市場を日本ではなく、グローバルとして考えることです。日本だけでも法人数としては250万社ほどあるといわれていますので、どこかに必ずあるはず、と考え、同じ製品やサービスを提供可能なサプライヤーを探し続けています。

そういっても、企業レベルで見た場合、1社からしか買えないという製品やサービスが存在してしまうのも事実です。バイヤーの重要な責務として、必ず買わなければいけない、いらないと言えない点があります。現在、昨年の大震災を受け、様々なリスクマネジメントへの取り組みが報じられます。バイヤーとしてまず避けなければならないのは、代替のないサプライヤーとの取引です。リスクのない状態を目指すためにも、今、購入しているサプライヤーの中に、いわゆるシングルソースで代替のないサプライヤーはどの程度あるのかは、必ず掌握しなければなりません。これは、購入金額には関係ありません。

3. 発注内容の性格

これは自社が顧客に提供する製品やサービスにおいて、各サプライヤーからの製品やサービスがどのような機能を担っているかに関する部分です。自社の製品やサービスの根幹に関わる部分を担っている場合、そのサプライヤーは区別すべき存在です。これも取引金額とは関係がありません。私がこれまで経験したケースでは、

(1) 人命に関わる部分

サプライヤーの製品の機能の逸失によって、人命に危険が及ぶ場合です。自動車や車両では、品質管理で個別の管理をおこなっている制動関係の製品が該当していました。正しく機能するように、正しくものづくりがおこなわれているかどうかを厳密に管理することが必要なのです。

(2) 機能に関する部分

自社製品の、市場での価値を決める根幹の部分を構成する部分をサプライヤーに依存する場合です。このような場合は、おのずと購入額も増えきます。

(3) コストに関わる部分

自社製品の総コスト中、高い割合をサプライヤーへ依存している場合です。これも、上記(2)のケース同様に、購入金額のチェックで、区別すべきサプライヤーにカウントされるはずです。

以上、(2)や(3)は、取引金額のチェックの際に区別すべきサプライヤーに入ってくることがほとんどだと思います。しかし、自社製品のラインナップの中で、比較的販売量の少ない場合は、機能的には重要であるにもかかわらず、購入金額的には区別されないケースがあります。したがい、(2)や(3)のケースも区別する際には、心に留める必要があるわけです。

<つづく>

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