坂口孝則の「超」調達日記(坂口孝則)
■5月X日(月)■
・今日は、世間的にはGWなのか。まったく知らずに面談を数件。先方も断りたかっただろうに……。先方から申し込まれたので、こちらが30日を指定した以上は断れなかったということか……。
・「海外調達」について書かれた本をまとめ読み。しかし、調達関係本は読者の「読みやすさ」を考えていないな。私の本も読者からすると、そう思われているかもしれない。改善しなければ。どうしても調達本は自分の経験談がベースになってしまい、それが「自慢」のように聞こえてしまう。それが良いときもあるのだが。
・それにしても移動途中で読んだ「革新幻想の戦後史」は面白すぎる。ビジネスマンは無縁かもしれない。ただ、戦後の日本思想史を丁寧にたどっていく著者の真摯さに打たれた。著者の竹内洋さんは70歳くらいか……。このご年齢までこれほどの密度で書けるとは、おそろしい。
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・某社から印税の支払通知書が届く。驚愕。「4200円」。たったの。既存本は、毎月売れる冊数分を支払ってくれる。したがって、数年前に発売したものは、毎月数十冊しか売れていないことになる。ただしこれでも「良い方」らしい。しかし、ということは、原稿だけで食っているひとなどいるのか……としばし疑問。
■5月X日(火)■
・文化人の芸能事務所に入れないか、というお誘いがある。残念ながら、いまの多忙さで、お引き受けするのは断る。その仕事が嫌というよりも、無理という意味。
・ところで、「自分ができないかもしれない仕事でも、自分のキャパを広げるために引き受けよう」という言説がある。これって無責任だと思う。もっといえば、会社人的な発想。プロは、たしかな成果を確約できるときにのみ仕事を引き受けるべきだろう。余談だが。
・長野県から来客。9月あたりになにかしましょう、という話になる。うーん、このまま仕事を引き受けて、体は大丈夫だろうか、と考えたが引き受けた。なんとかなるだろう。しかも、2012年でこの多忙さも終わることだし……。
・最近は、ほんとうに買いたい雑誌がない。かつては、「宝島30」も「噂の真相」も輝いていた。いまは、サイゾーくらいか。御用メディアがほとんどなのに、雑誌が売れないと嘆いても無意味。まあ、嘆いて売れるのであれば、一万回でも嘆いていればいい。
■5月X日(水)■
・午前中に一件コンサルティングで面談。中身はいえないものの、独立支援コンサルティング。この時代の風潮のなか、会社を飛び出すひとたちが増えている。ただ、そんなに簡単に稼げるわけではない。だから、独立支援コンサルティングの需要がある。とはいえ、そのなかでも私に依頼したいというわけだから、「変わっている」クライアントではある。一生懸命、私のノウハウ(のようなもの)を伝える。
・連載原稿を二つ書かねばならない。それとは別に、執筆が三冊ある。しかも、メールマガジンもある。国会図書館に出向く。それにしても、国会図書館は、図書を依頼してから到着までの時間が長すぎる。ものによっては30分待たされたこともある。しかも、館内は飲食禁止。
・30年前の「オリコン」誌を読み、CDの売上枚数などを調査。オリコン社のことを批判的に語るひとがいるけれど、「オリコン」誌は歴史的資料としてかなり面白い。
・20分かけて事務所に戻るときに、さまざまなことを考える。俺は何をしているのか。何をしようとしているのか。そして、どこに向かおうとしているのか――。もちろん、そんなことの答えは出ない。それならば原稿のネタでも考えればよかった、と後悔。
・帰宅してひさびさにテレビを見ようとしたが、コンテンツとしてほとんど終わっている。芸人をたくさん集めて、身内ネタか、あるいはクイズで盛り上がるだけ。茶番だ。かつてのテレビマンたちが見たら、いまの現状をどう憂うだろう。
■5月X日(木)■
・オフィス移転のために新三郷のニトリにカーテンを買いに行く。その際に、日産レンタカーからコンパクトカーをレンタル。新生児がいるといっておいたのに、ベビーシートが装着されておらず。「あっそうでしたごめんなさい」といわれ、装着になんと30分もかかった。
・新三郷ではIKEAとニトリが隣り合わせ。一部IKEA優位の報道があるものの、それぞれ優劣がある。IKEAは安価ではあるが (1)家具の大きさが日本にあわないものもあり (2)しかも組立に異常に時間がかかる (3)スタッフの教育が行き届いているかというととても「?」な対応が頻発する。具体的には、備品の在庫について聞いただけなのに「わかりません」とおっしゃる。
・そのあいだにiPhoneなどでメールチェック。スマホが無い時代はどうしていたのだろう。日曜日にもかかわらず、某IT企業からの講演依頼、某社団法人からの研修依頼、某出版社からの執筆依頼が届いていた。残念ながら、執筆依頼は夏までお引受けできないほどスケジュールが詰まっている。
・カーテンやカーペットを注文し、帰宅。その際、レンタカーの約束の時間よりも30分遅延しておいた。これで、30分ぶんを請求されるか見物。と思っていたら、日産レンタカーの受付女史より「出発時は大変なご迷惑をおかけしました」と。30分ぶんの請求がないどころか、お詫びされてしまった。さすが、日産レンタカー。
・勝間和代さんの新刊「有名人になるということ」を購入した。笑ってしまった、が、おそらく、ご本人はマジメなのだろう。勝間女史はすべてをテキスト化してしまうが、さすがに、ご自身が有名になる過程までをテキスト化してしまうとは……。
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■5月X日(金)■
・睡眠時間2時間。そのまま大阪の日本能率協会のセミナーで講師。7時間ボロボロ。しかし、アンケート評価のほとんどは「大変役に立った」とのお答え。逆に、元気だったときは、評価が低いときもある。ムダなことを述べない(疲れている)ぶん、評価が高くなるのか。
・それにしても、途中で見かねたのか、日本能率協会のご担当者が栄養ドリンクを差し出してくれる。あとは「眠眠打破」。少し効いたのか。
・夕方は会食。眠気が覚めるような会話ができる。新規ビジネスの話。やはり、新たな仕事と赤ちゃんが誕生するのは夜だけなのか。それにしても、これ以上、仕事の時間がとれるかなあ……。
・閉店前の書店で、橘玲さんの「(日本人)」を購入。
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最高に面白い、文章も上手い、博覧強記、深いメッセージもある。ただ、これまでの橘玲作品のなかで唯一、評価が難しい。大好きなハードコアバンドが、バラッドを歌ってしまったときの違和感というか(喩えになっていないか)。「この内容は橘さんが書いてはいけないだろう」と思った。傑作であることには間違いない。だけど、この違和感と失望(のようなもの)はなんだろうか。自分自身でも整理がついていない。
・ホテルでビール飲んで寝たら、翌朝はえらい時間に起きた。手塚治虫記念館で急いで向かう。そして東京へ戻る。バタバタしすぎ。