ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)
5-3新しい購買方法で買ってみる ~テクノロジーを活用した購買方法~
「買い物」との言葉には、お金を持ってお店へ行く、個人の買い物を連想させます。近年ではインターネットを活用した通信販売も増加しています。通信販売といっても、テレビやラジオ、書籍媒体といったさまざまな業態があります。企業の買い物である「購買」も、近年ではIT技術を活用して、より良い購入条件の獲得や、購入手続きの効率化が可能です。
☆人が動く価値を見直す ~EDIの活用~
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調達購買部門には、足繁くバイヤを訪ねるサプライヤの営業パーソンの姿を見かけます。これは継続性の受注を確保するための営業活動です。このような活動は、まだ効果的である一方で、バイヤはその訪問に費やす時間もサプライヤのコストであるとの側面を忘れてはなりません。当然、足繁くバイヤの元へ通うために発生する費用は、バイヤ企業からの受注金額から回収をおこなっています。限度を超したサプライヤの訪問に、バイヤが対応するのは、費用対効果の面での効率性に問題があります。訪問を受ける価値がなければ、その時間は無駄になってしまうのです。サプライヤの担当者が、もし毎日発行される注文書や納品書を入手するためだけに、バイヤ企業を訪問しているのであれば、それは非効率な時間の使い方との面もあるのです。
EDI(Electronic Data Interchange)と呼ばれる企業間の文書のやり取りを電子的におこなう仕組みも、大手企業では一般的になりました。バイヤ企業とサプライヤの文書(注文書、納品書、各付帯書類(仕様書、図面等))のやり取りを、電子データ化して送受信をおこないます、サプライヤ担当者との面談は、文書の授受+多くの雑談ではなく、仕様の確認だったり、関係性の向上だったりといった具体的に有効性を兼ね備えた価値ある時間として位置づける考え方が必要です。
☆リバースオークションに挑戦する
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リバースオークションとは、売り手が買い手を選ぶためのいわゆる「オークション」とは逆に、買い手であるバイヤが売り手であるサプライヤを選ぶための仕組みです。日本語では「競り下げ」とも表現され、最近では公共調達における実践とその効果が話題にもなっています。一般的にリバースオークションでは、インターネットを経由して複数のサプライヤが、より安価な入札をおこないます。
リバースオークションをおこなってみると、画面上にサプライヤの入札価格が表示されます。リバースオークションの勘所は、オークションを始める前の作業です。サプライヤが入札するためには、サプライヤがバイヤ企業の要求内容を正しく理解し、入札する価格で提供される製品やサービスが、バイヤ企業のニーズに合致していなければなりません。複数のサプライヤが、その製品を同等に理解し、提供可能な状態であるとの前提条件の成立があって初めて、価格の比較が可能になります。したがって、事前確認に費やす時間や費用を、調達購買部門だけでなく、関連部門分も含め、最終的に効果が表われやすい購入品を選ばなければなりません。前回述べた特殊品と汎用品では、汎用品に適したサプライヤの選定方法になります。
情報システムを活用したリバースオークションには、システム使用料が発生します。固定費的に発生するケースもあれば、成功報酬として発生するケースもあります。したがって、リバースオークションの活用には、一定規模以上の購入が必須です。リバースオークションを活用した調達案件では、700万円/件がもっとも金額の少ない案件でした。案件そのものが多くなれば、もっと金額の少ないリバースオークションも成立する可能性もあります。しかし、こういった取り組みを活用する場合は注意が必要です。
☆集中・共同購買への取り組み
購入量を増やし単価を下げる代表的な取り組みには、集中して購入量を増やす効果がある集中購買と、複数の購入者が集まって一括して買って購入量を増やす共同購買があります。しかし、集中させるのも、共同するのも、実現には、一定の時間と、調整が必要となります。そこで、集中・共同購買への興味をもっている企業を集め、事業化してサービスとして提供されています。購入対象は、どんな企業でも購入している間接購買品(文房具に代表されるオフィスサプライ品や、家具、什器類)が一般的です。購入対象の特性に応じて、外部から購買サービスを調達し活用して、バイヤはより付加価値の高い間接購買や、直接購買へ集中できる新たな時間の創出をおこなうとの活用方法もあります。
(つづく)