ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

5-2 買い方を理解する ~自社の仕組みを味方につけるコツ~

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企業で調達購買部門が購買する場合、具体的にどのような方法で購入するのか。購入品は、さまざまな条件によって購入され、納入が実現されています。多くの場合、自社の仕組みをバイヤ自ら理解しなければなりません。ここで「なにをいまさら?」と思われるかもしれません。多くのバイヤは、自社の購入にともなう、さまざまな手続き、例えば見積書の入手方法や、注文書の発行方法、納品書の発行と処理方法、サプライヤからの請求処理にといった購入にともなう一連の処理を「あたりまえ」と思っています。これは大きな間違いです。優秀なサプライヤほど、バイヤ企業毎に異なる一連の購買処理へ、細かく対応し、バイヤ企業にとっての利便性を高めています。一方、バイヤはあたりまえとして、自社の一連の進め方に関心がないだけでなく、理解が乏しい場合もあります。調達購買部門で、円滑な業務を進めるには、まず自社のやり方を熟知して、自社の仕組みの有効に活用しなければなりません。「あたりまえ」から、一歩踏み込んだ理解をしているかどうかが重要です。

☆購入時に設定されるさまざまな条件

購入する際、一般的には次のような条件を一つひとつ決めて実現します。

①仕様~なにが、どんなもの・サービスが欲しいのか
②数量~どの程度の量・能力が欲しいのか
③納期~いつ欲しいのか
④受領条件~どんな納入・提供を求めるのか
⑤保証条件~どんなレベル・期間を要求するのか
⑥支払い条件~いつ支払うのか

それぞれの条件について、「どの部門で」あるいは「いつ(時期)決定されるか」を、まず個々に理解します。その上で、購入プロセス全体としても理解しなければなりません。上記をまとめて「購入条件」と呼びます。

☆購入条件の特徴

上記①~⑥で決定される「購入条件」には、次の2つの特徴があります。

・購入の都度設定される条件…上記①~③に該当
・同じサプライヤから購入する場合は、一括で条件設定:上記④~⑥に該当

企業が必要とする製品や、その数量、時期は、自社の受注状況によって変化します。調達購買部門でバイヤが主にサプライヤとの間で取り組める内容です。しかし、「受領」「保証」「支払い」などについては、製品ごとではなく、サプライヤごとに一括で条件が決まります。この3つの条件をまとめてバイヤ企業とサプライヤの包括的な契約内容とし、注文書の裏面に記載したり、取引基本契約として締結したりします。

この包括的な契約内容は、一度締結すると内容を変更する(特にバイヤ企業側に有利にする)には、すべての取引に関わるため難しくなります。また、長い間内容を変更していない為、バイヤ自身が契約内容を理解していない場合もあります。取引基本契約書が存在する場合は、一度内容を読み、主旨を理解しなければなりません。そして、上記④~⑥の項目も含めた全体最適を、1つ1つの購入で実現しなければなりません。購入条件の全体最適の実現には、バイヤの問題意識が不可欠です。特に、取引基本契約を締結しているサプライヤからの購入が多い場合は、果たして購入の実情にマッチした購入条件なのかを逐次確認しなければなりません。取引基本契約の内容変更は、調達購買部門にとって大きな決断です。しかし、近年では紳士協定的な取引基本契約でなく、実効性をともなった契約が求められています。取引基本契約は不可侵なものではないとの意識が必要です。

☆取引条件のミスマッチを解消する

バイヤは、必要な製品やサービスを、必要な時期・タイミングに、必要な数量だけ購入する責任をもっています。購入するためには、購入条件をサプライヤが順守し実現しなければなりません。

サプライヤとの間に発生するさまざまな問題は、この購入条件のミスマッチによって発生します。サプライヤ側の言い分の、どの部分が購入条件と異なりミスマッチが起きているのかを理解するうえで、自社の購入条件の理解は最低限必要です。

取引上のミスマッチを防ぐためには、購入条件の各項目で、詳細なルールを事細かに明記した要領書を準備し、サプライヤと一緒におこなう確認が効果的です。近年は、従来にはなかったさまざまな要求を、サプライヤに求める場合はあります。その場合は、先に述べたとおり、取引基本契約の変更を検討したり、要求事項に対応した合意書を新たに締結したりといった機敏な対応が求められています。

購入条件とは、唯一絶対的な内容ではありません。また、バイヤ企業/サプライヤともに遵守して、円滑な取引を実現するために存在します。近年では、バイヤ企業/サプライヤの2社間の都合だけではなく、それ以外の利害関係者への配慮を盛り込んだ購入条件の設定が必要になっています。最新の経営環境にマッチした購入条件の設定を目指しましょう。

(つづく)

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