ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

8.調達購買部門の納期管理

8-10 納入管理上の受入検査の取り扱い

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受入れ検査は、納入されたもしくは近く納入される予定の購入物を、注文書に記載された購入条件に合致しているかどうかを判断する、重要なプロセスです。最近では、受入れ検査を省略するケースも多くなっています。その場合でも、受入れ検査でおこなう仕様・性能の確認を、実質的には別にどこかでおこなうとの前提に立っておこなっています。そういったプロセスを経ずに、ただ受入れ検査を削除しても、バイヤー企業の社内に不良品が流入し、製品にくみ込まれてしまった場合は、バイヤー企業のみならず、顧客にも悪影響をおよぼす可能性が高くなります。今回は、受入れ検査の持つ意味を再確認し、その基本を押さえます。

☆受入検査のもつ意味

受入検査には、バイヤー企業が提示した購入条件を正しく守っているどうかを確認するプロセスです。したがって、受け入れ検査に合格したら、その後に発生した不具合はバイヤー企業の責任となります。これは、実際の納入をともなわないサプライヤーでの立会い検査でも同じです。調達・購買業務の中でも、受入検査には非常に重い意味があるのです。

☆限られた時間で、何を検査するか

重要な意味を持つ受入検査。しかし、より短いリードタイムが求められる今、検査に費やせる時間は限られています。限られた時間の中で購入品の確認をおこなうために、いくつかの定形化した検査方法を設定します。設定した内容は、購入条件に盛りこんでおきます。

多くの企業でおこなわれている受入れ検査の方法の一つに、サプライヤーでおこなわれる最終検査を、バイヤー企業の受入検査とみなし、代用する方法があります。。この方法では、サプライヤーの最終検査結果を製品とともに納入してもらって、バイヤー企業では書類検査をおこないます。加えて、実際にサプライヤーで行われる検査に立ち会って、購入条件が確保を確認します。

書類検査は、その全数を確認するのか、それとも限定された数を抜き取りでおこなうかを決定します。いずれのケースでも、サプライヤーが工程管理能力を持っているとの前提でなければ成立しません。したがって、受入れ検査を簡略化する場合は、サプライヤーの工程管理能力が適正な状態にあるとの確認を定期的に実施しなければなりません。

☆源流管理と受入検査のセットで確保する購入品の品質

納期短縮化ニーズによって、受入検査も簡略化、もしくは省略して、サプライヤーから納入次第、生産現場に投入する例も多くなっています。しかし、こういった例は、受入検査の持つ意義が失われているからおこなわれているのではありません。

受入検査の簡略化、省略化は、サプライヤー側での品質管理が確実に実施され、不良品がサプライヤーから流出する可能性がない、もしくは極めて少ないからこそ、バイヤー企業側で採用できる取り組みです。したがって、受入検査を簡略化・省略化した代わりに、サプライヤーの品質保証体制が正しく機能している確認作業は必須です。

購入品の品質確認は、

(1)実際の購入品を検査して確認
(2)サプライヤーの品質管理体制をチェックして確認

の両方をバイヤー企業が行い実現します。この2つは、車の両輪です。したがって、受入検査を簡略化・省略化しても、受入検査の意議は引き続き存在し、おこなう体制は維持しなければなりません。

「検査はカネを生まない」と言われます。サプライヤーでおこなっている検査を、バイヤー企業で闇雲に繰りかえす必要はありません。しかし、品質確保はすべての企業に必要です。確かな品質を確保した製品を顧客に提供しなければ、事業継続できません。必要な検査内容を見極めるには、サプライヤーとバイヤー企業の協力が不可欠です。サプライヤーとの良好な協力関係の中で、両者に最適な検査のあり方、品質確保の方策を模索します。

<つづく>

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