インタビュー書き起し「私の失敗告白」(坂口孝則)

2014年12月10日インタビュー録『200万円をなくしました』

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木村孝行(NPO全国士業合同会議)×坂口孝則
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・200万円をなくしてみて

木村「さて、独立しようとするひとたちへ、独立成功の秘訣をお話しいただくわけだけど……」

坂口「いやいや、そんなんじゃなくて、今年はとてもひどい失敗ばかりの年でした」

木村「たとえば?」

坂口「未来調達研究所株式会社は、前身が株式会社調達購買マネジメントというところなんですね。そこは私が属する前の組織で。でも、ほとんどマーケティング活動をやっていなかったから、仕事がなかったんです」

木村「そうだよね。だから会社名を変更した」

坂口「私の経験なんですけど、調達・購買担当者やっていたときに、前株(マエカブ)の会社ばっかり倒産していたんですね。だから後株(アトカブ)にしようと。だから、未来調達研究所株式会社にして、それで5年目を迎えようとしています。さらに、これまでほとんどやってこなかったマーケティングをやっているわけです」

木村「どんなことやったの?」

坂口「たとえば、今年はダイレクトメールを発送しました。たぶん800件くらい配ったのかな。すべて新規のお客を見つけて送付しました。無料の小冊子をダウンロードできるからサイトにアクセスしてくれ、と」

木村「どうだったの?」

坂口「たった10くらいのダウンロードしかありませんでした。ダイレクトメールを送付するのに10万円くらいかかっているんですよ。しかも、電子電話帳というソフトがあって、7万円するんですが、それも住所録を把握するために買ったから、いろいろあわせて20万円ですね」

木村「ということはダウンロード一つにつき2万円か!」

坂口「そうですよ。さらに、ダイヤモンド社のメールマガジンに宣伝を載せましたね。しらべたらヘッダー広告といってメールマガジンの先頭に載っているもので、27万円しました。効果は、たしか新規購読者がお一人」

木村「それだけ?」

坂口「それだけでしたねえ。そういえば、日刊工業新聞社のウェブサイトにも掲載しているんですよ。これは10万円くらいかかったんじゃないですかね。これは……。私と牧野さんの記憶では効果がゼロだったなあ、と」

木村「そんなことあるんだね」

坂口「見ているひとはいたんでしょうけれど、相性が悪かった(笑)」

木村「あなたの本を出している出版社なのにな」

坂口「うん、でも、会社ってのはマーケティングとか宣伝広告をやらなきゃまったくダメだから。それでもやりましたね。12月にはセミナーを開催することになっているんだけれど、これはダイレクトメールを使ってそれなりにお客が入った」

木村「でも10万円くらいかかっている……」

坂口「はい、ただお二人セミナーに来てくれたら10万円でしょ。それで元が取れる。でも、10万円かかって10万円にしかならないのだったら、やめたほうがよい、と考えは成り立つでしょう。でも、すくなくとも他のひとに記憶してもらえるから、やったほうがいいんです」

木村「そうだよね。でも、失敗例がひどい(笑)」

坂口「それと、これはさすがに名前を出せないんですけれど、ものすごく有名なメールマガジンがあって、購読者が何十万人もいるという。そこにメール広告出したんですね。たぶん、18万円だったと思う。当日は楽しみにしていたんですけれど、そしたら、8クリックしか飛んでこなかった」

木村「すごいね、それ」

坂口「はい、驚きを通り越して、笑っちゃいましたよ。でも、調達・購買ってマイナだから、ほんとうに媒体がない。グーグルアドワーズもやっていましたけれど、ほとんどが資金調達と政府入札で流入するんです。それらのひとたちに教材をダウンロードさせることはできません。結果、毎月9万円から10万円のお金が流れ続けていきました」

木村「じゃあ合計すると、年間200万円くらいが」

坂口「捨てたことになりますね。札束を燃やしながら集客するって、金森重樹さんの名言なんですが、まさにそんな感じ」

・お金を捨てる勇気があるか、それが問題だ

木村「独立するひとに聞かせたら、いやになっちゃうよね。それだけお金がないし」

坂口「私もありません。でも、外部にたいする広告をやめちゃうと、なぜだか新規顧客が集まらないのも事実なんですよね。だから集客は続けなければいけない。今年は、日本全体の記事を自動収集するロボットジャーナリストのシステムも構築して、それでホームページの検索ランキングをあげようとしたんですね。それには42万円かかったと思います」

木村「独立してお客さんをもっと簡単につかむ方法はないのかね」

坂口「ないでしょう。しかも、この戦略は中長期的に考える必要があります。もし素晴らしいお客様との出会いが一つあったら、何十倍もの結果になって戻ってきます。たとえば、5年くらいの長期契約を結ぶお客さんがいたら、おそらく1000万円くらいにはなるでしょうから、100倍の効果があるわけです。私のようなマイナな人間は、お客さんが勝手に集まるほど甘くありません。だから、10のうちほとんどが失敗するとしてもやり続けるしかありません」

木村「夢も希望もない(笑)」

坂口「かもしれませんが、多少は有名になってもそんなにお客が集まるわけでもありませんから。中小企業診断士を取得してすぐに仕事が取れるはずはありません。私は資格を持っていません。だから、それ以上に不利な立場なんです。私は日経ビジネスのウェブで連載をしています。それも、デイリーのランキングで1位か2位にならないとダメですね。そうなると、一日で20万ビューくらいありますから仕事につながりやすい。それも原稿の依頼ですから1万円とか2万円にしかなりません。それらを重ねていって糊口をしのぐわけです」

木村「それでも、講演とかはまだ謝礼が多いので助かるでしょう? 集合研修ほどではないにしても……」

坂口「そうですね。だからこの業界にいるひとたちは、真面目で不器用なんだと思いますよ。だって、ほんとうにお金を稼ぎたかったら、間違いなくアダルト産業とか、そうじゃなくても廃棄物ビジネスとか、あるわけでしょう。文字を書いてお金を稼ぐというのは効率が悪い。口で稼ぐんだったらまあまあ。でもそれでも士業とかっていうのは効率が悪いですよ」

木村「しかも、そのお金も広告宣伝費で消えていく……(笑)」

坂口「そうそう(笑)。何の効果もないのにね(笑)。でもやり続けないと、誰も自分のことを知ってくれませんからね。今年はもうやめちゃいましたけれど、私たちの会社の宣伝を載せてくれる雑誌とか新聞を探していました。うちの会社でいろいろとあたってみたんだけれど、うまくいかないんですよねえ。ほとんど効果がないような気がしてしまって……。以前、地方紙に3万円で広告を載せたんですよ。しかも、最終面の下半分に。そうしたら、電話がかかってきたんです」

木村「効果があったわけだ」

坂口「いえ、うちにも広告を出してくれませんか?って福岡の新聞社が(笑)。結局、この効果はゼロでしたね(笑)」

木村「えっと……(笑)。成功の秘訣を聞きたかったんだけれど、失敗談になってしまいました。だけれど、こっちのほうがリアルで面白いかもしれない。ありがとうございました。それで、ヘンだけれど、ここで独立希望者に一言お願いできますか(笑)」

坂口「独立はやめたほうがいいです。少なくとも、こう聞かされてやめるくらいだったら、やめているでしょうし(笑)。それと、お金がかかりますよ、ということで(笑)」

木村「ありがとうございました」

<おわり>

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