仕事生活2.0
・ツールはぼくたちを豊かにする
最近、めっきりビジネス書の力が弱まっている。進化や進歩や効率化、それらのフレーズが使い古されたものになった。効率化したって、給料が増えるわけじゃない。残業時間が減ってしまったら、むしろ給料は減ってしまうではないか。
経済が右肩上がりであれば、効率化には意味があるだろう。しかし、昨今のような左肩上がりの時代においては、効率化など意味がない--。なるほど、このような感覚を抱くことは理解できる(し、私もたしかに効率化ブームにはもう飽きた)。
これからのビジネス書は「もっとがんばろう!」「もっと効率化せよ!」「もっと稼ごう!」からは一線を画すものにならざるをえない。金や効率化ではない、新しい生き方を提案するものになるだろう。
ところで、サラリーマンの歴史は200年ていどしかない。産業革命が大量生産、画一化を迫り、多くの人たちを一箇所に集めた「会社」の歴史も、しょせんその長さしかない。かつてドリルとは学校教育を利用し、工場作業者を増やすための文化装置であった。これは多くの論者が指摘している。
とくに日本では大企業の大赤字がつづき、ひとびとが疲弊している。そんななかで「もっとがんばろう!」「もっと効率化せよ!」「もっと稼ごう!」といっても、たしかに人びとの胸には迫らない。
ただーー、と私は提案したい。もちろん、会社主義が崩壊するといえども、あるいは日本製造業のビジネスモデルが崩壊したとしても--、仕事から喜びが無縁になったわけではない。仕事を愉しくするツールにはこれまで以上に注目すべきだろう。マクロ的に不景気が続いても、ミクロの工夫には余地がある。要するに「社会全体から影響を受けていたってしょうがない。せめて、個人の仕事のなかだけでも喜びを見出していこう」というわけだ。
私は、人生の目標があって、人生の手段があるわけではないと思う。一般的にはそう思われている。ただ、逆だと思うのだ。人生の手段が愉しいから、人生の目標が出てくる。「人生の目的と手段がごっちゃになっている」という人もいるけれど、手段と目的がこんがらがることが人生の愉しさではないか。
さて、前置きはこの程度にして、今回は増刊号だし、「日々の仕事を愉しくするツール2012年版」をご紹介したい。
・体を愉しくする
通勤時間を愉しくできないかと考え、行き着いたのがこのMBTシューズだ。
これを履くと、一歩一歩が大変で驚いた。このサイトでもわかるとおりMBTはトレーニングシューズの一種で、草原を歩く疑似体験ができる。ビジネスマンは通勤を移動としか考えていない。そこで、通勤を運動に変えてしまうのだ。最初は30分歩くだけでも疲れた。靴底が丸く処理されており、これまで味わったことのない不思議な感覚になる。価格は3万円以上するため、まずは騙されたと思って、近くの取扱店に行ってみてほしい。
そして、次にご紹介したいのは、パワーソックスだ。「靴下かよ?」と思われるかもしれない。しかし、これが逸品。若返った気さえする。
レワード パワーソックス 5本指 ST-41(07)ブラック サイズ:L(25~27cm)
締め付けられる感覚で疲労が低減する。疲れ、とは気持ちが落ち込む要因になる。とく加齢とともに、足腰の疲れは深刻だ。愉しい仕事生活には元気な足が不可欠だ。恥ずかしい、というかたも、amazonで注文できるので、こそっと買ってほしい。
さて、そしてメガネだ。JINS PCというメガネを使い出してから、眼精疲労が和らいだ。これは度付きではない、ブルーライト防止のメガネだ。パソコンのディスプレイから発しているブルーライトをシャットダウンしてくれる。これは直接サイトへどうぞ。
目の疲れも、気持ちの落ち込みに直結する。愉しく仕事を長時間続ける場合には、さまざまな工夫が必要となるのだ。
これを読んでいる20代のひとたちは、笑っているかもしれないけれど、試用していただければ理解できると思う。
・スケジュール確認を愉しくする
体の次は、スケジュール確認だ。というのも、私の実感では、「体が健康で」「手帳を見ること自体が愉しい」のであれば、9割の悩みは解消するのではないかと思う。手帳を眺めたい願望が強くなれば、おのずと仕事が愉しくなるからだ。
巷間、いろいろな手帳術があるけれど、「手帳を開く、手帳を眺めること自体を愉しくする」手帳術は少なかった。
ちなみに私の手帳遍歴を語ると、
・会社の手帳
・6穴バインダーの自作手帳
・野口悠紀雄教授の超整理手帳
・フランクリンプランナー
・6穴バインダーの自作手帳
・高橋手帳
・ほぼ日手帳(挫折)
と試行錯誤を重ね、最終的には「Googleカレンダー」と「超整理手帳for the iPhone」の二重使いが最強だという結論に至った。
GoogleカレンダーはGoogleのアカウントをとればすぐにはじめることができる。これはこれでじゅうぶん素晴らしいのだが、いかんせんiPhone(スマートフォン)の見た目が悪すぎた。そこで「超整理手帳for the iPhone」と同期することによって実際の手帳のような見開き設定が可能となった。
「超整理手帳for the iPhone」は価格が700円なのでさほど安くはない。ただ、価格以上の価値に満足している。しかもこのアプリでは、写真や音声ファイルなども一括共有できるのだ。
このソフトをインストールしてから、手帳を見るのが愉しくてたまらない(iPhoneの画面だが)。予定を俯瞰しさまざまなことを考えることもできる。
・余暇を愉しくする
そして最後に、休暇の過ごしかたを提案したい。オススメは、「Travel Muse」だ。簡単な英語ですぐに遊べる。このサイトは、日本の旅行代理店とは一線を画している。
これまで、旅行とは、「(1)どこに行きたいか決める」→「(2)旅行代理店に相談する」のが一般的だった。しかし、そうなると(1)は自分の想像の域を超えず、予定調和なツアーになりがちだった。ただ、このサイトであれば(1)に多大なインスピレーションをくれる。
具体的には、このサイトでは「どの程度の予算で」「どんな気分を味わいたいか」を選択するのだ。そうすると、自分が知らない世界各地の名所が出てくる! これが愉しい! なんといままで自分は限られた国のなかから旅行先を探してきたことだろう! これだけ世界は大きく広いというのに! まあ、驚きすぎかもしれないけれど、余暇の愉しみが増えるのは事実だ。
実際に私は今年2回の海外旅行に出かけることにした。場所は秘密だけれど、想像もしなかった場所だ。
これまで、インターネットは「探したい情報について、瞬時に教えてくれる」ものだった。しかし、「Travel Muse」が明らかにしたのは、インターネットは「隠れた欲求すらも教えてくれる」ものなのだ。
体の健康からスケジュール確認の愉悦。そして余暇には、それまで自分がまったく知らなかった土地に行くこともできる。マクロは大変な状況が続くかもしれないけれど、せめてミクロで愉しむ知恵を! そう、ツールはぼくたちを豊かにするのだ!