ほんとうの調達・購買・資材理論番外編~日経新聞の読み方(坂口孝則)

 

・日経新聞は月曜日版だけ読めばいい

さきほどのつづきで、経済動向を知るツールとして日経新聞をあげたい。そこで、暴論を申し上げる。日経新聞は月曜日版だけを読めばいい。それによって、経済を知ることができる

ここでは日経新聞を、適正な引用範囲によって著作権を侵害しないレベルで解説したい。みなさんの日経新聞の読み方が変わるはずだ

まずは月曜日の日経新聞には各種経済データが載っている(16面くらいだろうか)。そこに注目してほしい。

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最初に、「粗鋼生産高」を見てみよう。これは、圧延・鍛造等の加工前の鋼のことだ。これは、自動車業界や電機業界に販売され、耐久消費財や建築材料となるので、景気の動向を示している。

これまではほとんど無視してきた数字だろうが(そもそもこの面を読んでいなかっただろうが)、ここには一つの基準がある。「月あたり8,500千トン」以上になっているかだ。単位をかえれば、850万トン以上になっているかを確認する必要がある。850万トン×12はだいたい1億トンだ。

この1億トンを超えていないと、この業界は大変厳しい。機械を稼働させてナンボ、の世界だから、1億トン以下では固定費がまかなえず赤字になってしまう。

ここを見るだけで、世界の流れ(日本の景気)がだいたいつかめる。

そして次だ。

日本のなかでもっとも大きい、自動車業界について見てみよう。「新車販売台数」のところだ。ここにも一つの基準がある。「年間500万台を超えているか」だ。自動車は1割産業ともいわれ、全労働人口の1割が直接・間接的に自動車業界に携わっている。500万台とは、自動車業界のひとびとを食わせるに足るレベルで、国内販売が500万台を割り込むとかなり厳しい。

日本は輸出立国のイメージがあるものの、韓国などと比べると内需の国だ。ちなみに、韓国ではGDPの半分もの金額を輸出に頼っている。ここだけで概要はつかめる。

そして次にここだ。

「生産指数集積回路」だ。ここは前年比の生産の落ち込み(あるいは上昇)を示している。ここにも一つの基準があり、「前年比20%以下」かどうかだ。「前年比20%以下」であれば業界再編が起きる可能性が高い。というのも、前年比20%を割り込むと、各社のコストが売価にマッチしなくなる=すなわち赤字事業から脱却できなくなるためだ。

私はこのことを昨年の7月に語った(私が開催している調達・購買私塾にて)。そして、2011年の末から、2012年にかけて大幅な業界再編が起きるはずだと「予想」した。それはこれまでの歴史から予想したものだった。

2012年の2月7日に「半導体統合で交渉=ルネサス、富士通、パナソニック」と報じられた。これは半導体の各社が、単独では採算が合わないために、企業連合をつくろうとするものだ。これも、「生産指数集積回路」を見ているだけで、ある程度予想できていたことだ。

このように、日経新聞の月曜日版を読むだけで、世界がわかる。経済の動向を予想できる。日経新聞で企業ニュース欄だけを読むのはもったいない。

さきほど「2012年からは、バイヤーにマクロな経済動向を知る慧眼こそが求められている」と書いた。このあと、この「ほんとうの調達・購買・資材理論」でも日経新聞の読み方を解説する機会をつくっていく。

 

<つづく>

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