ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

5 購買実務の留意点

2014年の最終号に、新たなテーマに入ります。実際の業務の中でバイヤとして配慮しなければならない点、そして具体的な調達購買業務で使用される手法について、解説を加えてゆきます。今年の頭から、調達購買業務の基本について述べています。来年以降も基本的内容について、最後まで述べてゆきます。

5-1 こんなときはどう買うか? ~適切な購買手法~

調達購買部門でおこなう「購入」には、さまざまな手法が存在します。購入する対象の「性質」と、購入した対象を自社でどのように「活用」するかによって、適切な購買手法を選択します。われわれは、さまざまな購買手法を理解して、状況に応じた最善の手法を採用し、最小のリソースの投入で、最大の効果を生まなければなりません。

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☆購入するモノの「性質」による分類 ~特殊品と汎用品~

購入する対象の「性質」によって、次の2点に分類します。

①特殊品

みずから仕様を決定したり図面を作成したりして、バイヤ企業(自社)向けにのみサプライヤが生産し、購入します。また、特定の少数のサプライヤからしか購入できない場合も該当します。個人の買い物にたとえると、特定のブランドや、海外でしか販売していない「欲しいもの」が該当します。

②汎用品

一般的に知られている標準(規格)によって、仕様が決められている場合です。また数多くのサプライヤが生産しており、購入先を選べる場合。個人の買い物に例えると、いつでも、どこでも買える状況になります。

企業の調達購買部門では、現実的に、特殊品と汎用品の両方を購入します。そのうえで、購入品すべてを有効活用して、適正な品質、コスト、納期を実現させなければなりません。したがって、それぞれの購入対象の「性質」に応じた購入「手法」の活用が必要です。みなさんのご勤務先で設定されている購入するプロセスは同じであっても、注力するポイントが異なります。購入する対象の「性質」を見抜いて、バイヤとして動くべきタイミングを捉えます。それでは、それぞれのケースについて、みてゆきましょう。

☆特殊品の購買方法

特殊品を購入する場合は、次の2点が必要です。

①明確な購入する製品の仕様

自社の要求部門に対して、購入したい「対象」の内容について、数値化、具体化、図面化による、明確化を求めます。しかし、バイヤ企業内のリソースでは、明確化が困難な場合もあります。そんな時、仕様の明確化をサプライヤに協力しておこなう場合、協力サプライヤ先の選定が、実質的なサプライヤ選定となります。購入仕様の明確化に協力するサプライヤと、実際に発注するサプライヤを別に考える場合は、事前に設計協力費用を支払って、ノウハウの活用に対する合意をおこなった上で、仕様決定とサプライヤの選定の分離を考慮します。現実的には、購入対象の「明確化」をおこなったサプライヤを、発注先として選定するケースが多くなります。その場合も、明確化のプロセスにおける発生費用と、購入にともなって発生する費用を分割して検討します。どんぶり勘定による、価格決定主導権を、サプライヤに渡さないためには、こういった取り組みが不可欠です。

②製造できるサプライヤ

明確になった仕様を実現できる能力をもっているかどうか、サプライヤの「能力」を見極めます。購入対象の特殊性が、製造能力にあるケースも多くなっています。もし、サプライヤの能力に問題がある場合は、発注する前に問題解決を図る、もしくは新しくサプライヤを開拓します。特定のサプライヤからしか購入できない、購入先が限定される場合は、自社に有利な条件で発注するために、サプライヤマネジメントを実践して、サプライヤとの良好な関係づくりに注力します。

☆汎用品の購買方法

汎用品を購入する場合には、仕様の明確化や、サプライヤの製造能力は問題にならないケースが多くなります。バイヤ企業として希望する価格、納期、数量などの条件から適切なサプライヤを選択します。サプライヤ選定は、複数のサプライヤに同じ条件を提示し、見積を入手する「競合」をおこないます。また、あらかじめ特定のサプライヤを選び、有利な条件引き出す場合もあります。汎用品の場合は、特定のサプライヤとの制約が少なくなります。したがって、調達購買部門の裁量で、最適な条件での購入を目指し実現させるのです。

(つづく)

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