バイヤーが最低限知るべき、サプライヤ決算書「これだけ」パート4(坂口孝則)

調達・購買担当者が最低限しるべき決算書の基礎について数回にわけてお話しています。

次に損益計算書に移りましょう。ところで、ここでクイズです。

【サプライヤの決算書(損益計算書)へのインパクト】
・次のような決算のサプライヤがいたとします。
○売上高 :200百万円
○利益 :5百万円
・そのときに、サプライヤの販売先が倒産し、10百万円を回収できなくなったとします。その際、損益計算書における売上高と利益はどうなるでしょうか。

ぜひ、若手の読者は、先輩に聞いてみてくださいね。「利益」って経常利益かとか、税引前当期純利益か、とか、そういうツッコミはなしにしてください。逆に、それによって違いがあるというのでしょうか。

さて、答えはどうなるでしょう?

まず、売上高が190百万円になると答えたみなさん、間違いです。これは売った金額に間違いはありませんから、200百万円のままです。あくまで回収ができないのです。

次に利益はどうなるでしょう。ずるいのですが、答えはわかりません。というのも、どのレベルで税務署が認めるかわからないからです。たとえば、販売先が不渡りを出したくらいでは、損金(損害を受けた金額)として認められないケースがあります。

不渡りとは、手形を決済するための当座口座にお金がなくなることです。不渡りを二回出せば、その会社は経営できません。ですが、少しでも回収の見込みが出てくれば、決算書上の利益は減りません。

ですから、答えは、

○売上高 :200百万円
○利益 :5百万円からマイナス5百万円のどこか
ということになります。

しかし、このクイズを出したかった理由があります。それは、決算書(損益計算書)とは、あくまで「売った金額をベースに計算する」ことと「利益というのは実際のお金とは無関係である(言い過ぎかもしれませんが)」ことをご理解いただきたかったからです。

まずは概念ですが、この図をご覧ください。

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売上高から売上高総利益を計算する場合です。この場合、かかったコストがすべて引かれる、と勘違いしているひとがいます。あくまで、「売った金額をベースに計算する」のです。したがって、あくまで売った分にかかったコストのみが、認められるのです。だから、ムダな在庫をたくさん作っても、それは売上高に対応するコストとしては認められません。だから、利益が伸びてしまうという奇妙な現象が起きます(コストが圧縮されるから)。

また、「利益というのは実際のお金とは無関係である(言い過ぎかもしれませんが)」も思い出してください。

<クリックすると大きくできます>

図の上にあるように、決算書上は、取引が完了しているかもしれません。が、実際は、仕入れについて現金で支払い、客先からは3ヶ月後にお金をもらうケースは多いものです。そうなると、実際のお金は減ってしまい、運転資金が不足してしまう場合があります。最悪は、黒字決算での倒産です。これを、黒字倒産と呼びます。

まずは損益計算書にはこのようなカラクリがあることを知ってください。

(たぶん続く)

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