調達・購買担当者の説得力向上にむけて(坂口孝則)

・調達・購買担当者のプレゼンテーション

いろいろなタイミングで調達・購買担当者が人前で話す機会が増えてきました。たとえば、内部と外部にむけたプレゼンテーションで考えると、次のようなものがあるでしょう。

<社内>
サプライヤ戦略発表
調達・購買戦略発表
プロジェクト発表
コスト削減成果等発表

<社外>
サプライヤへの調達方針説明会
業界団体での集まり
サプライヤ業務懇談会
関係会社への説明

こう考えると、内部が「決裁承認」「業務推進」にたいして、外部が「協力要請」「共感」を目的とするものとわかります。

そこで、私が近年、ずっと考えてきたのは、優秀と優秀じゃないひとの違いです。おなじ調達・購買担当者でも、すぐに決裁承認を受けたり協力してもらえたりするひとと、否認されたり協力してもらえなかったりするひとがいます。

最終的には、その違いは「優しさ」にあるのではないかと思い当たりました。それは、ほんらいの意味での優しさというよりも、他者にたいする優しさです。相手が何を欲しがっているだろう、と想像する優しさです。もちろん、自分が提案したいことを捻じ曲げるわけにはいきません。ただ、内容は同じでも、相手のことを考えると、話し方が変わるはずです。

・決定版、自問集

そこで、私は自分のための自問集として、次のリストを作成しました。みなさん、よろしかったら、ぜひプレゼンテーション前にこれを自問してください。プレゼンが通過する可能性がきわめて高まります。これはきっとスピーチなどでも同じだろう、と私は思います。

なお、これらを全部プレゼンテーションに盛り込め、というわけではありません。ただ、自問すれば、何を語るべきかが明らかになります。実際に私はプレゼンテーションの前に、このリストで自問しています。

<社内>
Q1:承認してくれるひとは誰ですか
Q2:承認してほしいテーマはなんですか
Q3:その内容を一言でいうとなんですか(趣旨)
Q4:その内容の背景・概要を教えてください
Q5:その提案によって自分たちの組織はどんなメリットがありますか
Q6:承認者がその提案を個人的に承認したくなるとすれば、なぜですか
Q7:その提案によって自分たちの組織はどんな弱点が解消されますか
Q8:その提案によって自分たちの組織はどんな未来の変化がありますか
Q9:なぜそのような未来の変化がありますか
Q10:承認者が提案を承認して良かったと実感するのはいつですか
Q11:承認者が承認をためらう理由があるとすればなんですか
Q12:承認者が承認をためらう理由を上回るメリットはなんですか
Q13:とくに訴えたいポイントはなんですか
Q14:理屈を超えて、承認したくなる呼びかけを考えてください

<社外>
Q1:協力してくれるひとは誰ですか
Q2:協力してほしいテーマはなんですか
Q3:その内容を一言でいうとなんですか(趣旨)
Q4:その内容の背景・概要を教えてください
Q5:その提案によって相手企業はどんなメリットがありますか
Q6:相手企業がその提案を面白いな、協力したいな、と思うとしたら、なぜですか
Q7:その提案によって相手企業はどんなマイナス要素が解消されますか
Q8:その提案によって相手企業はどんな未来の変化がありますか
Q9:なぜそのような未来の変化がありますか
Q10:相手企業が協力したとして、良かったと実感するのはいつですか
Q11:相手企業が協力をためらう理由があるとすればなんですか
Q12:相手企業が協力をためらう理由を上回るメリットはなんですか
Q13:とくに訴えたいポイントはなんですか
Q14:理屈を超えて、協力したくなる呼びかけを考えてください

読んだらわかるものばかりですが、「Q6:承認者がその提案を個人的に承認したくなるとすれば、なぜですか」「Q11:承認者が承認をためらう理由があるとすればなんですか」「Q12:承認者が承認をためらう理由を上回るメリットはなんですか」「
Q14:理屈を超えて、承認したくなる呼びかけを考えてください」の4つは強調しておきたいと思います。

「Q6:承認者がその提案を個人的に承認したくなるとすれば、なぜですか」
→これは個人的なエゴです。たとえば承認者が調達部長だとして、あなたの提案を承認することで、他部門に自慢できるかもしれない。出世が早まるかもしれない。そういった、承認してくれるひとのエゴを(想像でかまわないので)予期しておくのです。

「Q11:承認者が承認をためらう理由があるとすればなんですか」
「Q12:承認者が承認をためらう理由を上回るメリットはなんですか」
→プレゼンテーションの失敗は、想定できたはずの反論をまったく考慮していないケースに多々です。これも他者への優しさです。立場を逆にしたときに、意地悪になって、自分の提案を批判してみましょう。そして、その批判を打ち消すメリットを考えねばなりません。

「Q14:理屈を超えて、承認したくなる呼びかけを考えてください」
→情熱でも、まったく個人的なことでもかまいません。「しかたないな、やってみろ」といわせるような熱意、キメ顔、フレーズ……こういった人間的な内容が承認者を動かします。

また、プレゼンテーションで「理由は三つです」と、いつでも「三つ」というひとがいますが、すべての事象の理由が三つなはずはありませんよね。あくまで真摯に考えて考えて考えてプレゼンテーションをしましょう。絶対的な答えがあるはずはありません。プレゼンテーションに必要なのは熟考です。

<了>

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