バイヤーが最低限知るべき、サプライヤ決算書「これだけ」パート3(坂口孝則)
調達・購買担当者が最低限しるべき決算書の基礎について数回にわけてお話しています。
前回は貸借対照表の純資産についてお話ししました。そこの続きからご説明します。
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「純資産」の説明です。これは通常「株主から出資されたお金」と表現されます。教科書的には正しそうに見えても、これはまったく本質的ではありません。なぜならば、上記「負債」の箇所を思い出してください。何度も申しますが、「負債」といっても借金のお金そのものを指し示していません。おなじく、「純資産」といっても、株主が出資したお金そのものを表現しないのです。
笑い話があり、ある会社の社長が会計士に「ウチの会社の決算書に載っている純資産1000万円を見せてくれ」といったそうです。「決算書には載っているけれど、そんなお金は金庫にないぞ」と。そりゃそうです。「純資産」は株主が出資したお金そのものを表現しないからです。ではなんでしょうか。これは、「資産と負債の差」にすぎないのです。たとえば、株主が1000万円を出資します。すると、それは現金とか資産とかに姿を変えて左側に記載されます。それで終わりなのです。
あとは、この「純資産」の箇所は、単に「資産と負債の差」を表現するにすぎません。しかし、こう考えると、スッキリ!します。実態はありません。しかし納得できないかもしれません。どういうことなのか。
右は負債といいました。左は資産です。借金(右)と財産(左)です。ただ、会社で営利活動を続けていると、利益としてお金が残ります。それは当然ながら負債ではありませんから、負債に入れられません。どうするのか。左右をバランスさせるために。しかたがないから「純資産に入れてあげて、やむなくバランスをとる」と稽えるのです。極端ですが、こう考えてみれば、これまでよくわからなかった決算書の貸借対照表がわかります。
私は「純資産に入れてあげて、やむなくバランスをとる」といいました。そこで、純資産がさらに二つにわかれることを覚えておきましょう。
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「利益剰余金」と「資本剰余金」です。上の図で書いたとおりですが、ここでは増資したら「資本剰余金なるものが増える」そして儲かったら「利益剰余金が増える」と覚えましょう。正確ではありません。が、そう考えて実務的に問題ありません。
そこで、練習問題をやってみましょうか。
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「未来調達研究所株式会社は、山田一郎が設立した。 山田一郎は会社口座をつくり、そこに10,000千円を振り込んだ」。さあ、貸借対照表はどう変化するでしょうか。
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こうなります。資本金(純資産のところだと思ってください)が増えます。
次に、「その後、未来調達研究所株式会社は事業拡大のために、 銀行から10,000千円を借り入れた」。
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そうなると、現金が10,000千円増えますよね。だから、左側が増えます。それにしたがって右側も増えます。
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ね、簡単でしょ。「その後、未来調達研究所株式会社は業務を受注し、 取引先から現金50,000千円を得た」となると?
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おなじく左側は50,000千円増えます。ここまではおわかりでしょう。じゃあ次は? そう、儲かったので、借入金でもないし資本金でもありません。バランスをとるために、こうなります。
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利益剰余金が増えます。「純資産とは差額にすぎない」の意味がおわかりでしょう。左側の現金がすでに増えているのです。純資産の箇所(資本金と利益剰余金)は後付の記述にすぎないのです。
おなじく、「その後、未来調達研究所株式会社は外注サプライヤにたいし、 現金10,000千円を支払った」としましょう。
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すると、現金が10,000千円減りますよね。となると、こう処理されます。
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借入金が減るわけではありませんから、利益剰余金が減少するのです。このような構造だとわかれば、貸借対照表はわかったも同然です。
(たぶん続く)