ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

●4-3 買うものをどう決めるか ~購入要求部門の責務と、調達購買部門の関係~

購入要求部門は、メーカーであれば設計・技術部門が代表的です。間接材となると、社内のあらゆる部門が対象となります。今回は、購入要求部門とどのように協力して業務を進めるかを考えてみます。

具体的な内容に入る前に、 購入要求部門と共同した取り組みは、次の通り3つの言葉で既に語られています。今回述べる内容にしても、従来からおこなってきた取り組みと合わせて考えると、理解しやすいはずです。

(1)開発購買(原価企画・情報購買)
営業、開発、購買が一体となって、開発設計プロセスに参画し、原価企画された許容目標原価を実現するための総合的、組織敵活動をいう。総合的、組織的活動は次の2つ。

①開発設計プロセス段階のプロジェクト/チーム活動
②プロジェクトチーム活動および開発活動を支援する購買全バイヤ、取引先参画型の開発購買活動で構成
~日本能率協会 堀内栄一さんの定義

(2)VA活動
『VAとは,最低のライフサイクルコストで必要な機能を確実に果たすために,製品とかサービスの機能的研究に注ぐ組織的な努力である』モノの働きに注目したコストダウンの方法をVA(価値分析)と提唱し1949年に発表。VAとはValue Analysisの頭文字をとったもの

(3)トータルコストダウン
企業の固定費・変動費,製品の直接費・間接費、製品のライフサイクルコストなど、すべての原価・経費を対象とし、費目ごとの経費節減ではなく、全体としてコストを引き下げようとするもの。着眼点を製造加工現場から,生産プロセスをさかのぼって、資材調達部門,さらには設計部門,生産技術部門といった研究開発部門も含めた全社的な対応が必要。

(1)開発購買は「要求仕様決定プロセスへ関与」し、過剰仕様・品質・ボリュームの購買をおこなわない。(2)VA活動は、購入対象が構成されるコスト要素を「分析」する。(3)は、コストの対象を広げます。それぞれ異なる切り口で語られます。今回は、上記のすべてを網羅する取り組みとして、購入要求部門との協力方法を述べます。

☆仕様決定プロセスへの支援

調達購買部門が、購入要求部門へ効率的な支援ができるかどうか。それは、適切なサプライヤを提案できるかどうかにかかっています。購入したい対象の仕様が明確な場合は、仕様以外の要素についての情報と判断が重要です。例えば、要求内容の詳細を検討し、「設計能力あり」といった技術的な対応能力や、要求数量に対応できるだけのキャパシティを持っているかを踏まえて、最適なサプライヤの選定に繋がる情報を提供します。

一方、購入要求部門で欲しい対象の詳細が具体化されていないケースも想定されます。ここで、購入要求部門が仕様を決めないから調達購買部門として対処しないでいるとどうなるか。仕様の決定と発注先選定が、サプライヤーの購入要求部門への協力によって、同時におこなわれてしまいます。

この段階は、購入要求部門の担当者が、どんな要求内容にするかを模索している段階です。調達購買部門としては、一緒になって模索します。具体的には、バイヤーとしては具体的なサプライヤをイメージできるような質問をしてみます。これまでに購入したどんなモノと似ているか。逆に、どこが異なるのか。どんな機能を持つのか、どんな原材料を使用するのか。バイヤーとしての質問力を駆使して、一緒に解き明かすのです。

☆仕様決定とサプライヤー決定の分離

購入要求部門での仕様決定プロセスを想像してみます。買いたいモノを決める場合、ある程度サプライヤのイメージがあって困っていなければ調達購買部門へ連絡しません。購入要求部門みずから、サプライヤから資料を取り寄せたり、営業パーソンを呼んで、直接打ち合わせをおこなったりします。結果、購入要求部門とサプライヤのやり取りで、購入するモノの仕様が決まってしまいます。

サプライヤの力を借りて仕様の明確化するのは、上手なサプライヤ活用方法の1つです。しかし、それでは事実上発注するサプライヤも決まってしまうリスクがともないます。ポイントは、仕様決定と、サプライヤ決定を分離し、サプライヤ決定を調達購買部門が担い、コスト削減に代表されるさまざまな対策が打てる状況を作る点です。

購入要求部門では仕様のみを決定し、サプライヤの決定は、調達購買部門の役割と明文化して、その順守を社内各部門へ要請します。調達購買部門は、最適なサプライヤーの選定を繰り返し行い、実績を積んで購入要求部門から信頼される存在にならなければなりません。

このために、サプライヤの最新状況と、社内の他部門とサプライヤの具体的なやり取りの両方の把握が必要です。サプライヤには、購入要求部門だけでなく、調達購買部門も含めた企業全体への貢献を求めるのです。

☆調達購買組織と、担当分担の明示

調達購買部門では、対象の製品やサプライヤごとに担当者が割り振られているはずです。そのような組織内の担当割り振りについては、常に最新の状態を社内関連部門へ周知します。社内ポータルサイトがあれば、最新の担当表を必ずアップします。購入要求部門が思い立ったときに、すぐに連絡できるようなツールを整備します。

<つづく>

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