ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

4.社内関連部門とのコラボレーション

前回(124号)まで「実務担当者に必要な知識/スキルアップ実践」について述べました。今回からは、企業内の関連部門と、どのように協力して業務を進めるべきかについて考えます。はじめに、部門間に存在する「ギャップ」の姿を具体的に捉えます。つづいて、一般的な企業の各部門との協力方法について検証します。

●4-1どんな「橋」を架けるか ~部門間の「溝」の乗り越え方~

調達購買部門は、全社目標を達成するために、社内関連部門と協力して業務を進めます。「社内関連部門」は、協力して最終的なゴールを一緒に目指すべき存在です。しかし、多くの調達購買部門やバイヤーの悩みは、購入要求部門だったり、財務・経理部門や製造、品質保証部門だったりとの関係です。むしろ部門間に発生する「溝」を乗り越えるために多大な労力と時間を費やしています。なぜ部門間に「溝」は存在するのでしょうか。

☆部門間の溝を構成する3つのギャップ

なぜ組織が存在するのか。それは、企業が業務を進める上で、効率を高めるために、役割分担をおこなった結果です。各部門での役割には、効率を追求と同時に、専門化・高度化も進んでいます。この2つの面のいずれも、部門間の「溝」の原因になります。3つの側面から「溝」の正体を理解します。

(1)意識

企業の目標は、部門間ごとにその職務責任に応じて細分化されます。細分化によって、業務は専門化にされ、同じ社内であっても、自分、自部門の専門的な業務内容の理解は難しくなります。調達購買部門では必要であっても、他部門からすれば、まず「必要性」が理解しづらくなっています。他部門に協力してほしい場合は、調達購買部門の業務内容と、依頼事項の必要性を依頼先が理解していない前提で、詳細内容を説明から始めます。

(2)情報

所属部門が違えば、日常的に話をする相手も異なります。調達購買部門の場合、サプライヤ担当者とのコミュニケーションの頻度が高く、認識の共有化が自然に実現されます。同じような認識の共有化は、サプライヤとのコミュニケーション頻度が少ない社内関連部門にはできません。他部門に協力を求める際は、サプライヤとの関係性はもちろん、内容の背景や周辺の事情に関する説明を十二分におこないます。

(3)制度

門によっては、議論の余地がない法律や、ルールを元に業務を進めています。調達購買部門の場合、下請法を順守するための対応は、発生する業務実施の妥当性に議論の余地はなく、法律を遵守した上での結果が求められます。協力を求める部門の法制度面での事情も理解しなければなりません。

☆部門間の溝を取り払う3つのポイント

(1)広い視野
自部門の都合を前提としつつ、他部門の状況や法制度、全社の方向性との整合性を視野に入れなければなりません。なぜ、認識の共有化がおこなわれずに「溝」が生まれてしまうのか、原因の解消に取り組みます。

(2)同じ価値観をベースにした問題提起
同じ会社では、社是や全社目標となど、異なる部門でも共有できるものがあるはずです。社是や全社目標を踏まえてどうすべきかの議論をもちかけ、関連部門を含めた当事者意識を持つための他部門への働きかけを調達購買部門からおこないます。

(3)未来志向
部門間の溝による弊害は、過去からの蓄積によって、より深く広くなってしまいます。過去の問題をくり返さないため、または目標を達成するためといったこれからを考える、未来志向の共有が必要です。

次回以降、各部門との協力方法を模索してゆきます。どの部門との協力関係構築でも、部門内で「一枚岩」となっているかどうかも、部門間の溝を埋めるために欠かせない要素です。実務レベルでの問題点や必要性を、部門のトップや上層部が同じレベルで理解しているかどうか。この点への注意も忘れずにおこないます。

<つづく>

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