コストテーブルの作成方法(坂口孝則)

・自分が調達している製品のコストはいくら?

私はこれまで見積査定手法をお伝えしてきました。そこで今回は、コストテーブルを作成できる(作成するための)Excelファイルをお渡しします。

http://www.future-procurement.com/124.xlsx

これまで何度か言及しましたとおり、会社からはセキュリティの関係で難しいかもしれません。ご自宅などからダウンロードください。

これは、コストテーブル作成ファイルです。このファイルでできることは、機械と作業者の賃率を求めることです。賃率の意味はご説明不要かもしれません。が、あえて繰り返しますと、その機械なり作業者の、ある単位時間あたりコストです。たとえば1分あたり賃率が60円ということは、1秒あたり1円です。その場合は、その機械が10秒ほど加工のために動いていれば、1円/秒×10秒=10円と査定できます。

ここで、さっそくExcelファイルをご覧ください。三本立てになっており、これは一直の場合と二直の場合と、三直の場合にわかれています。

結論から申せば、黄色箇所だけを埋めてください。そうすると……。

<クリックで拡大できますが、Excelファイルもご覧ください>

下に計算結果が出ます。まず、上にマルしている「マシンチャージ」とは、文字通り機械の賃率です。そして、次のマルは労務費(分)で、これも文字通り作業者の賃率です。ここでは、最後のマルで「マン+マシンチャージ計」としており、ここで機械と作業者の賃率を合算しています。

これはすなわち、機械に一人の人間が付随している意味です。したがって、何らかの生産物を加工する際には、人と機械の両コストがかかる計算にしています。もちろん、「えっ! 俺が査定したいのは、作業者なんていない工程だ」とのことでしたら、Excelファイルから作業者(労務費)を削除してください。

また同じ理由によって、機械に人が二人付随する場合は、労務費を2倍にすればよいだけです。そのためにExcelファイルをお渡ししています。

<クリックで拡大できますが、Excelファイルもご覧ください>

さて、黄色箇所とは、次の通りです。

  • 年間総稼働時間→文字通り、機械が稼働する時間です

  • 現在購入金額→機械の購入金額です

  • 設備稼働率→総稼働時間(総稼働可能時間)に対する稼働率です

  • 償却年数→機械が使われる耐用年数です

  • 設備占有面積→設備が有する土地面積です

  • 建物単価→その専有分(↑)の建物コスト(ここは年間です)

  • 理論消費電力量→設備が使う電力コスト(ここは定義上、時間です)

  • 電力単価

  • 消耗工具費→スパナ、ペンチなどです(ここは年間です)

  • 間接材料費→防具類、薬品などです(ここは年間です)

  • 設備修理費→修繕費用、メンテナンス費用です(ここは年間です)

  • 所定内賃金→労働者の給料です(ここは月間です)

  • 付帯人件費率→賞与や福利厚生などの追加コストです

うおおおお、こんなに入力しなければならないのか! と思ったあなた。ご安心ください。極端にいえば、

  • 設備占有面積→設備が有する土地面積です

  • 建物単価→その専有分(↑)の建物コスト(ここは年間です)

  • 理論消費電力量→設備が使う電力コスト(ここは定義上、時間です)

  • 電力単価

  • 消耗工具費→スパナ、ペンチなどです(ここは年間です)

  • 間接材料費→防具類、薬品などです(ここは年間です)

  • 設備修理費→修繕費用、メンテナンス費用です(ここは年間です)

の箇所は「テキトー」でも、さほど結果は変わりませんし、サンプルの機械も別シートにあげておきました。

また、

  • 所定内賃金→労働者の給料です(ここは月間です)

  • 付帯人件費率→賞与や福利厚生などの追加コストです

の箇所は労働統計年報などでわかりますし、付帯人件費率は、わからなければ保守的に40~50%くらいを設定しておきましょう。

さらに、

  • 償却年数→機械が使われる耐用年数です

が不明でしたら、「法定耐用年数」から対象となる機械の年数をひろって、それを×0.75倍としてください。そうすると、ほぼ計算できるはずです(機械の購入金額さえわかれば計算できるはずです)。

サンプルを2つシートにわけて記載しましたので、ご参照になってください。

<クリックで拡大できますが、Excelファイルもご覧ください>

<クリックで拡大できますが、Excelファイルもご覧ください>

こうやれば、サプライヤの工場見学するときや見積査定するときに、奥深くなるはずです。あとはさまざまなトライをなさってみてください。よろしくお願いします。

(ご興味あるひとへ追伸)

なぜ、機械の償却年数について<「法定耐用年数」から対象となる機械の年数をひろって、それを×0.75倍としてください>と書いたのでしょうか。なぜ、単に法定耐用年数をそのまま使わないのでしょうか。これは経験則的な意味があります。というのも、「法定耐用年数」とは一般的に長めに設定されています。

たとえば、100万円の設備があったとしましょう。国としては1年で償却するのと、10年で償却するのと、どちらがよいでしょう? 企業の売上高が200万円だった場合、

1年で償却する場合→200万円-100万円÷1=100万円
10年で償却する場合→200万円-100万円÷10=190万円

となり、後者のほうが、税金を多く取れます。もちろん、1年で償却する場合は、翌年以降は償却費の計上は続きません。しかし、国の立場からすると、できるだけ早めに税金を徴収したほうが良いに決まっていますよね。たとえば、木造内装などは20年を超える法定耐用年数設定がなされています(そんなに同じ内装でやっている店があるでしょうか)。

だから、この国が決めた法定耐用年数を×0.75倍くらいで考えるのが経験則的には正しいといった意味です。もちろん絶対的ではありませんが、ご参考になれば幸いです。

<了>

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