バイヤ「超」基本業務 7(牧野直哉)

●見積評価

十分な準備をおこなってサプライヤより入手した見積書。見積書に記載された見積金額だけで一喜一憂するのは、全体の99%のバイヤがおこなう残念な反応です。日本の調達購買業務に従事するバイヤの上位1%を占める読者の皆さんは、一喜一憂もそこそこに見積の詳細内容や添付資料を確認します。

*評価ポイント1~見積依頼内容との整合性

見積金額がバイヤとしての想定額より高くても低くても、提示された金額に見積依頼内容が網羅されているかどうかを確認します。歴史的にも長期的な取引をおこなっており、サプライヤとバイヤの双方がお互いのやり方を理解している場合であっても、要求内容を網羅しているかどうかは都度確認が必要です。過去の取引実績の積み重ねがある場合は、いちいち詳細を確認する必要性を感じないかもしれません。その場合は、具体的な最近の案件を例に「なにか異なる条件はありませんか」といった確認をおこないます。

*評価ポイント2~RFI(Request for Information)との整合性

見積依頼は、その前の段階で見積提出できるかどうかを評価しているとの前提にたっています。いわゆるRFIをおこなって、提供された情報によって見積できるかどうかを判断しています。見積評価ではRFIで確認した内容が見積内容に反映され、対応できているかとの確認も必要です。

繰り返し見積依頼をおこなう場合、どうしても都度の要求事項に焦点が集中し、初期段階で確認した内容と見積書の整合性を確認しないケースがあります。新規に開拓したサプライヤであれば、初期段階での確認と見積提出後であってもさほど時の経過は少ないはずなので、確認する必要性は薄いかもしれません。しかし、長年に渡って取引関係を持つサプライヤの場合、RFIで確認するような内容に大きな変化が発生している場合があります。ただし、こういった内容は本来的に年次のサプライヤ評価で確認すべきです。毎年確認しておけば、大きな変化には対応できるはずです。しかし、毎年の継続審査をおこなっていない場合は、RFIで確認するサプライヤの基本的な内容にも目を向けなければならないのです。

*価格評価

見積依頼内容が網羅された見積書と判断できた後は、金額の妥当性の判断です。これには、大きく2つの方法があります。

複数のサプライヤへ見積依頼をおこなって、見積入手ができている場合は、複数の見積書を相対的に比較します。もっとも価格的に安価な見積書を提出したサプライヤへの発注をおこないます。これは「競合」「相見積もり」といわれる、もっとも一般的な発注先の選定手段です。こういった手段は、各サプライヤが要求内容を満足している、満足していない場合は、単純比較ができないので注意します。異なっている部分を金額評価して、同じ条件下での評価をおこないます。

この方法の問題点は「談合」リスクです。一般企業ではなかなか現実味が薄いかもしれません。過去に公共工事では何度もこういった問題が顕在化しています。公共事業の場合、談合は罪に問われます。しかし、民間企業相手であれば、購買を担当するバイヤの確認能力が問われます。

「談合」リスクへの対応策は、見積依頼をおこなうサプライヤの固定化を避けます。毎回まったく顔ぶれの異なるサプライヤは難しいかもしれません。しかし、定期的に新しいサプライヤや、しばらく取引をおこなっていないサプライヤなどに声がけをおこなって、見積依頼に対応してもらいます。毎回決まったサプライヤだけに長期間にわたって見積依頼をおこなう場合は、競合の効果が表れているかどうかも考慮すべきであると覚えておいてください。

もう一つの方法は、バイヤみずから見積依頼の内容をベースに見積を作成します。これは、見積依頼できるサプライヤが1社しかない場合などにおこないます。見積価格の「査定」を、一歩進めて、バイヤみずから見積書を作成します。先ほどの例を、見積書の相対評価とするなら、これは見積書の絶対評価です。見積書の詳細に入りこんで、コストの構成内容を理解し、構成内容ごとにコストを算出します。

この方法が実現できれば、最初の例の談合防止にも役立ちます。バイヤがみずから価格の判断基準を持ち、サプライヤから提示された見積価格の良し悪しを判断します。この方法は、すこし難しいかもしれないですね。次回、見積書の絶対評価方法についてお伝えします。

<つづく>

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