ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

●3-9 スキルアップさせる力 ~教育力~

社内研修やOJTでもスキルアップは可能です。しかし、バイヤーとして生き残ってゆくために必要なスキルは、まず自分で積極的に伸ばさなければならない、そう考えましょう。企業における実務者の学びとは、日々の仕事の中に、学ぶべき課題がたくさんあります。例えば、社内の会話や、会議等で使われた言葉で、意味のわからない言葉があったとします。インターネットにつながったパソコンや、スマートフォンであれば、その場で確認できます。企業人のスキルアップは「わからない」に直面した瞬間に差がつきます。わからない言葉をそのままにしておくか、それともパソコンやスマートフォンで調べるか。調べるツールがない場合も、メモして後で調べるかどうか。「わからない」を「知りたい」に変換できるかどうか。そして、最終的に知れるかどうかが大きな違いを生むと覚えておいてください。

ただ、それでも日常業務に流され、スキルアップなんてできないと思われる方も多いでしょう。その場合は、一緒にスキルアップする仲間を見つけます。ここで、スキルアップにもっとも効率的な、みずから主催する勉強会の開催を提案します。

☆勉強会開催の利点

勉強会は、同じ職場や同じ職種の仲間を集めて開催します。人数は、最低2人いれば開催可能です。そしてみずから主催者になりましょう。主催者になって、知りたい内容をテーマとして選定し、開催を企画します。「企画」といっても、

①出席者の都合を合わせ
②場所を決める 

程度です。あと、主催者だから万難を排して出席します。

最初は同じ職場の仲間数人で開催するのが良いでしょう。なんでも同じですが、この勉強会も「継続」がもっとも重要です。社内の同僚であれば、まず予定の調整が比較的容易です。業務の繁忙のタイミングも同じ時期になる可能性が高くなり、開催のタイミングも無理なく合わせやすくなるのです。

勉強会のスタイルは、社内外の研修でよくある、一方的な講義形式のものではなく、参加者が皆同じテーマに取り組んで、相互に発表しコメントする形を取ります。当然、主催者であるあなたも参加者と同じように課題に取り組みます。主催すれば、開催のため本を読むとか課題に取り組む強制力が生まれます。また開催日は事前に決まっているはずなので、締め切りまでに間に合わせ、やり遂げる効果も期待できます。そして主催者であれば、課題も自分の興味に合わせて設定が可能です。主催者の利点、それは勉強する内容も、スピードもコントロールできる点にあります。私がこれまでに実際に開催して、大きな効果を生んだ勉強会は、次の3つです。

☆おすすめテーマ1 ~視点の多様化を促す読書会~

どんな本でもかまいません。出席者の合意が得られる題材であれば何でもいいのです。1冊選定して、面白いところ、つまらなかったところを発表し合います。業務に関係するテーマであれば、業務に取り入れたい点など、まさに本を読んだ人の視点による意見を集めるのです。

この勉強会では、同じ本を読んで、同じテーマについて意見をピックアップしても、人によって異なるポイントが抽出されます。勉強会を通じて、さまざまな視点を学べます。

☆おすすめテーマ2 ~サマリー力/A4トレーニング~

1つ目のテーマに似ています。1冊の本を読んで、重要と思われるポイントを“無理やり”A4・1枚にまとめ、なぜその点が重要と判断したのか、その理由を含めて発表します。同じ会社の同僚であっても、問題意識はさまざまです。

このテーマは“無理やり”がポイントです。1冊の本をA4・1枚の紙にまとめるのは、多くの情報から「捨てる=取捨選択」を行わなければなりません。理由を発表するために、取捨選択の根拠を持たなければならない点も、日常業務を進める上でのトレーニングになります。

☆おすすめテーマ3 ~購入価格説明会~

調達購買部門の同僚との勉強会で、このテーマはかなりの盛り上がりが期待できます。出席者それぞれに1つ、自分が担当した購入品について、まず購入仕様を説明します。出席者は、その説明を聞いて購入価格を見積ります。最後は、実際の購入価格を明らかにして、なぜ価格が決まったのかを説明します。

この勉強会で重要な点は、調達購買担当者が実際に見積をおこなってみる点、また、自分が担当した購入品の価格決定の理由を自ら説明する点です。説明に対して、出席者から言いたい放題のコメントをしてもらいます。この「言いたい放題」の中には、新たな気づきがあるものです。そんな気づきを次の価格決定に生かすのです。

費用対効果が高く、主催者としての準備が多くないテーマを3つ挙げました。これだったら、すぐにできそうじゃありませんか。スキルとは、与えられるものでなく、みずから行動して獲得するものです。やってみようと思ったら、すぐ仲間を探して、やってみてください。

<つづく>

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