ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

8.調達購買部門の納期管理

8-2 リードタイムの種類 ~複数あるリードタイム
見積条件の中でも重要な「納期」

読者の皆様が受けとる見積書に記載された「納期」は、どのように表現されているのでしょうか。多くの場合、注文を受けて以降の経過日数が記載されているはずです。「受注後30日納入」といった表現です。

見積書を受領したバイヤーは、サプライヤーから提示された納期を元に、社内の購入要求に合致しているかどうかを確認し判断します。納期管理は、調達・購買部門でおこなう企業もあるでしょうし、他部門、例えば生産管理部門がおこなうケースもあるでしょう。納期管理の主体がどこでも、サプライヤーを選定する場合、納期対応能力は必ず確認する内容です。そのような観点で、調達・購買部門にも納期管理に関する考え方と、想定事態への対処は必要となります。

納期管理をおこなう場合、先ほどの例のように「受注後30日納入」との回答を得て、回答内容が社内の要求内容に合致していれば、問題ありません。しかし問題、多くの場合納期短縮が必要となる場合は、サプライヤーからの納入日だけを対象としても、バイヤーの希望どおりの納入は実現されません。リードタイムを細分化し、改善すべきポイントを明らかにして、改善活動を注力しておこないます。

☆細分化するリードタイム

サプライヤーへ発注してからバイヤー企業に納入されるまでのリードタイムを細分化すると、次のようなリードタイムに分けられます。

(1)購入条件検討リードタイム(設計リードタイム)
バイヤー企業側で、購入対象の仕様を明確にするために必要となります。最終的には、要求内容として仕様書や図面の形でまとめられます。当たり前ですが、発注日までに作成が完了しなければなりません。また、バイヤー企業側から仕様書や図面を提示して後、サプライヤーで技術的な検討を要する場合には、加えた期間の考慮が必要です。

(2)需要確認リードタイム
バイヤー企業側で、購入するかしないかを決定するために必要です。通常は、生産管理部門で発生します。購入が決定している場合でも、最低一日は発生してしまうリードタイムです。

(3)発注準備リードタイム
購入条件が明確になり、需要が確定した後も、実際に注文書が発行されるまでに要する時間の考慮が必要です。企業ごとにサプライヤーへの注文書発行に必要な業務プロセスが設定されているはずです。数日であったとしても、考慮に入れます。このリードタイムは、原材料や部品を調達するサプライヤーにも発生します。

(4)原材料調達リードタイム
原材料や部品の確保に必要なリードタイムです。サプライヤーへの発注内容に含める(材料持ち)か、それともバイヤー企業から支給するかによって、起算基点が異なります。加工や組立といった次工程を開始する前までの確保が必要です。

(5)サプライヤー内各工程リードタイム(サプライヤー生産リードタイム)
サプライヤー内で発生する工程のすべてに発生します。通常サプライヤーから回答される、リードタイムの主な構成内容は、このリードタイムです。バイヤーの発注品をサプライヤーで製品化し納入するためには、実にさまざまな工程が必要です。それぞれの工程には、実質的な作業時間に加え、段取り、工程間の横持ち、複数工程が同時進行する場合は、手待ちといった滞留時間も含まれています。

こういったサプライヤー内の詳細工程は、納期問題が100%発生しなければ、バイヤー企業で情報入手して理解する必要はないかもしれません。しかし、例えば自然災害が発生した場合の能力確認でも、ボトルネック工程を理解するためには、まずサプライヤー内工程の情報がなければ、正しく理解できません。事実、大きな自然災害の後に、サプライヤーの工程を理解していたために、限定された情報からボトルネック工程を特定し、対応が可能となった成功例もあります。

サプライヤー内のリードタイムは、新規採用時、継続審査時といったタイミングを活用して、最新情報の継続的に入手します。

(6)物流リードタイム
サプライヤーからバイヤー企業までの輸送に必要な期間です。国内のサプライヤーからの納入は、翌日もしくは中一日、長くても二日なので、あまり意識しないかもしれません。しかし、海外サプライヤーの場合は、発生する日数と、発生する工程(輸送の種類、輸出入時の通関)によって、さらに細分化が必要な場合もあります。

一口に「リードタイム」といっても、これだけの種類があります。自社(バイヤー企業)とサプライヤーの合意事項が遵守されていれば、詳細なリードタイムを区別して扱う必要はありません。しかし、より短納期納入を目指す場合や、なんらかのトラブルにより、全体工程に障害となる工程を特定する場合は、こういった細分化が必要です。必要に備えて、準備を進めましょう。

(つづく)

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