ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

3-8 情報を集め、活用する力~情報力

調達購買に限らず、企業運営にはさまざまな情報が必要です。そして情報とは、どのように活用するかが求められます。情報といえば、収集が重要と思われますが違います。収集した情報は活用して初めて価値を生みます。情報とは、収集した後のアクションこそ重要です。

☆情報力の4ステップ

<クリックすると、別画面で表示されます>

ここで、その情報の活用の重要性を踏まえた「情報力」についてです。情報力とは、次の4つのプロセスが必要です。この4つのプロセスをサイクル化し、常に最新の情報へ更新するために回して初めて、情報を戦略的に活用すると言えるのです。それでは、各プロセスのポイントを確認します。

(1) 情報収集力

マスコミ報道や、サプライヤーに代表される外部の人間、社内の関係者から、日常的に情報収集をおこないます。ここではできるだけ多くの情報を収集し、入手した情報の正確性の検証になるべく時間をかけないようにします。そしてなるべく早く、入手した情報の鮮度を保ちつつ、次の行動へと繋げることです。

(2) 情報共有・分析力

業務上入手した情報は、社内関連部門の関係者の間でできるだけ早く共有します。共有した上で、調達購買部門が共有した情報に付加する価値は、バイヤー企業の購入活動に与える影響度です。先日も中部地方の製鉄メーカーの工場で火災が発生しました。そういった情報は、マスコミでも大きく取り上げられます(今回のケースも実際にそうでした)。調達購買部門から社内に流す場合には、火災を起こした企業からの納入の有無、「有」の場合は、納入への影響度の可能性といった情報です。第一報では「納入停止の可能性あり、詳細確認中」だけでもやむを得ません。火災を起こした場合など、現場も混乱しているでしょうし、バイヤ企業の窓口をしているサプライヤの営業部門も正確な情報を掌握していません。継続的な情報収集をおこなった上で、自社への影響度を想定して、他部門に情報を提供します。

(3) 情報を再構築する力

上記(2)のような、サプライヤのトラブルの場合は、情報ソースが特定のサプライヤに絞り込まれます。しかし、もっと大きな問題が怒った場合は、いろいろな情報源から、たくさんの情報が入ってきます。情報を入手した時点では、その情報に価値があるかどうかはわかりません。たくさん情報が集まっても、自分たちが欲しい、そして役立つ情報が入手できる可能性はごくわずかです。実際、手元に集まった情報は断片的である場合が多いのです。そんなときには、いくつかの情報を組み合わせ、ひとつの情報として論理的に再構築します。

例えば、製造業で構成部品を購入する場合を考えます。サプライヤがバイヤ企業に部品を納入する場合は、

①原材料・部品の仕入れ
②自社内での加工、組立て、検査、出荷
③サプライヤから自社への輸送

と大きく3つのリソースを使って、部品納入が実現します。集まった情報は、こういったリソースごとに分けて、入手した情報とサプライヤのリソースとの関連性の有無と高低を判断します。上記では①~③に分類しています。しかし実際は、①の場合はサブサプライヤに同じような①~③の問題があります。②では、従業員やライフライン、工場そのものの継続確認、③の場合は、複数の輸送手段に関する情報収集が必要です。

(4) 情報活用力

これまでの一連の活動によって得られた情報を、説得性のある仮説として、自社がどのように動くべきかを検討します。サプライヤーからの納入に遅れが生じる、遅れの期間は未定。だから別のサプライヤーを探さなければならないといった行動へと繋がる意志決定に役立てます。

☆ポイントは「入手」ではなく、「取捨選択」

情報の話になると、希少な情報の入手方法が重要視されます。しかし、そもそも希少な情報は入手できる可能性も少ないのが現実です。また、自分が欲しい情報が、そのままの形でマスコミ報道や、インターネットのホームページ上にあることは極めて稀です。また情報としては同じであっても、直接当事者の情報か、二次情報か、三次かといった点もあります。情報はできるだけ上流の方が正確性に高くなります。したがって、統計やデータといった情報は提供者から直接入手ます。近年、情報力のポイントも、「いかに入手するか」から世の中に存在するたくさんの情報から「必要となる部分を取捨選択すること」に変わっています。そのためには、できるだけソースに近い情報の入手を心がけます。

(つづく)

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい