新人バイヤーへの提言 5~学び続けましょう
人は身勝手であることを印象づける、こんなエピソードがある。
私は子供の頃、家に帰ってくるとビールを飲んでテレビを見ている父親が羨ましくてしょうがなかった。今では珍しくもない酒の肴が、とっても美味しそうだったこともあるが、とにかく早く大人になりたいと思っていた。
その理由は、宿題とか、中間・期末に繰り返される試験、そして高校、大学受験にむけた勉強があったからだ。そんなことをしなくてよい大人、自分の父親のようにお気楽な大人に一日も早くなりたかった。これは、自分がいかに無知であるかを後になって知ることになるエピソードでもある。当時、勉強は嫌いで、毎日がテレビと勉強のどちらを選ぶか?なんて格闘していた。当然、テレビ見たい!という意志が勝つ日が続くのだが、やはり試験前ともなると机に向かわざるを得ない。そんな時に、特に大人になりたかった。
今日で5つめとなる新人バイヤーへの低減。今回は学び続けることの重要性についてだ。冒頭に書いた勉強嫌いな私だけど、今「学び」の重要性を痛切に感じている。そして、今回のテーマの「学ぶ」とは、これまで学生時代に行ってきた「勉強」とは違うと思っている。
私が思う「学び」とは、普段の業務の中で
「あれ?なんだろう?」
「これってどういう意味?」
「あの人、何を言っているのかさっぱりわからないなぁ~」
といった事を基点にして、理解をするためのプロセスである。学生時代にあったような教科書などないし、自分が知りたいことを上手にまとめた本もない。いうなれば、過去を振り返った時、自分が知りたかった事という本が一冊書けていた、そんな状況が目的。そして、このアクションには、どう学ぶべきなのか?との試行錯誤が重要になる。
今はインターネットなんて便利なツールがあるので、何かのとっかかりに検索画面からキーワードを入力すれば、それなりの情報が画面に表示される。但し、自分の持った疑問に100%の内容を持って回答してくれるサイトやページは存在しない。自らの疑問に対しては、全て断片的な情報だ。その上、ネット上に溢れる情報の信頼性は未知数。そんな中で、いったいどのように理解をするのか。その情報が正しいかどうか?を見抜く目と、断片的な情報を自分自身が持つ疑問の回答へと組み立てる力が必要になってくる。
できる限りの情報にアクセスしていけば、どの情報源にも共通して述べられている内容に行き着くであろう。それは真実に近い可能性が高い。ただどんなに時間を使っても、自分の疑問への100%回答には行き着かない。ただ、調べてゆく過程で、いろいろな情報に触れることで、情報は自分へ蓄積されていく。その蓄積が、後々何らかの折にアウトプットのきっかけになるかもしれない。
学ぶ手段も試行錯誤・・・インターネットの情報は信頼性が未知数。で、どのように理解するのか、であるが、私はこの理解をする過程での試行錯誤、信頼性確認のプロセスが、今後のビジネスパーソンに求められるスキルに役立つと考えるのである。
業績を拡大するためのアクションを見出すことは非常に難しい。それは新入社員や、若手社員に限った話ではなく、新入社員の前で偉そうに訓示を垂れている経営幹部でさえも同じである。言うなればビジネスっては暗中模索で、どの方向へ進めば利益を生むのか?なんて事は、やってみなければわからない。確実に儲かりますよ~って話に簡単に騙される人が後を絶たないのも、そんな話は有るはずもないのに、もしかして・・・の邪な期待によるものである。
今の日本は不況一色だ。でも私ビジネス上、話をしている人だって、すべてが不況に苛まれているかといえば、そんなことはない。自動車の生産台数と共に業績の悪化に苦しんでいる会社もあれば、おかげさまでとの前置きで、順調な業績を語るビジネスマンもいる。非常に興味深いのは、同じような事業構造や製品を持つ会社であっても、好不調が明確に異なる会社が存在することだ。
私はこう思う。もう日本という国に存在する会社が、総じて景気が良くなるということはあり得ない。たとえ似たような製品を販売していても、一方は絶好調で、一方はまったく売れない、そんな世の中になっていくと考える。
絶好調とまったく売れないという、異なる状況をわけるもの、それは学びである。ひとつ言葉を付け加えるとすれば、継続して、である。さも学校に通うが如くに、決まった時間に会社へ行って、定時になれば帰宅する。そして年齢と共に自然に給料が上昇していく……そういった状況は、いまだ日本に残っている。しかし、早くそんな状況とは決別した方が良い。別に、今勤めている会社がそんな会社であっても、退職をせまっているわけではない。自分で決心するだけでよいのだ。そして、今自分の周囲で起こっていることを学ぶのである。
どんな会社も、確実に儲かるとの確信を持って事業運営はできない。学ぶことで紡ぎ出されたアイデアから方向性を導き出し、具体的にアクションへ繋げるしかない。そして、具体的なアクションとは、一人一人が個人の責任の範疇でやらなければならない。たとえ、新入社員とはいえ、これからやったことが新規事業の僅かでも上位者の意思決定に影響を及ぼすのである。
別に机に座って本を読め!とか、異業種交流会や勉強会に出席せよと言っているのではない。街を歩いて、電車に乗って、人に会って得られる情報は山のようにある。そして、情報が多ければ多いほど、疑問も多くなるはずだ。素直さを持って、その疑問に向き合って見るとどうだろうか。自分で苦労して理解した事は、忘れない。寝ぼけ眼で聞いた偉そうな訓辞よりもずっと。