バイヤー現場論(牧野直哉)

1.会議室・応接室にて

①どこに座るか

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会議室に通されてどこに座るか。着席場所の判断基準は、上座とか下座ではありません。サプライヤの会議室は、アウェイです。相手のホームでおこなわれる打ち合わせや交渉は、不利な状況下であると認識します。

調達・購買部門は、どんな状況下でもサプライヤをコントロールしなければなりません。したがって、不利な状況であるサプライヤの会議室でも、「場の支配」がしやすい着席場所を意識します。場を支配するもっとも簡単な手段は、討議内容を書き出すホワイトボード近くへ着席です。必要なタイミング、説明内容がわかりづらかったら図式化し、討議内容をホワイトボードへメモします。

書いた内容は、そのまま議事メモとしても活用可能です。打ち合わせが終わる前に、書いた内容を読みかえして、打ち合わせ内容を自社とサプライヤのコンセンサスにします。

②「会いたい人」を考えておく

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会議室に、メンバーがそろったタイミングで、どんなメンバーが出席しているかを確認します。注文処理プロセスに登場する部門から出席していない場合は「御挨拶させてください」と申し入れます。事前に予定していなくても、10分程度とお願いします。

また、あらかじめ出席してほしいメンバーを連絡するのも一案です。その場合は、サプライヤ訪問に当たって、これまでに面談したメンバーを確認します。まだ面談していない部門があれば、訪問依頼の際に面談希望の対象者(部門)を申し入れます。

③プレゼンを準備する

サプライヤ訪問は、サプライヤにとって「顧客の訪問を受ける」です。しかし、バイヤーが顧客としての立ち振る舞っては貴重な訪問機会を十分に生かせません。顧客の立場をもっとも的確に表す姿勢が「説明を聞く」や、「見学する」です。もちろん、サプライヤの最新状況の理解し、説明に注意深く耳を傾け、現場の確認は不可欠です。しかし、それだけでは訪問の成果は不十分です。

一般的に、バイヤーはサプライヤの営業担当者と話をします。しかし、購入するものは、営業部門以外の各部門で生産されます。サプライヤの訪問は、生産の当事者に会える貴重な機会です。直接の面談は、自社の主張を直接伝える数少ない機会です。具体的なプレゼンテーションを準備します。次の3つのポイントは必ず網羅します。

(1)自社事業へ貢献のお礼
訪問したサプライヤの協力なしには、事業が成り立たない旨を述べ、頭を下げお礼をします。一般的なサプライヤであれば、このアクションで場の雰囲気が引き締まります。バイヤーの訪問で、頭を下げられかつお礼を言われた経験が極めて少ないのがその理由です。

(2)購入品の使用目的と評価
購入した製品が、自社製品のどの部分で使用されているかを分かりやすく図や写真を用いて説明します。「この部分で、こういった機能を発揮します」といった簡潔な内容で構いません。特殊な用途がある場合は、一般的な用途に加えます。多くても3枚程度のスライドで説明します。

(3)サプライヤへの要望
コストに関連する内容よりも、自社の顧客視点でのニーズを根拠にした要望を伝えます。一般論のコスト削減や、品質改善、納期短縮ではなく、顧客のニーズに対応するために何をすべきかを伝えます。結果的に、コストや品質、納期につながりますが、ポイントは自分達が顧客ニーズの実現にしている姿勢を明確に伝え、姿勢の共有化をうながす点です。プレゼンの後に、打ち合わせがひかえている場合は、その場の雰囲気作りにも役立ちます。

こういった内容で、プレゼン内容を10分以内にまとめておこないます。できれば5分。本当に簡潔で構いません。バイヤーのプレゼンがめずらしいので、まず実行が重要です。一回プレゼンしたサプライヤへ再訪問する場合は、当然前回と異なる内容にします。

④スケジュールの確認
サプライヤによっては、事前に訪問当日のスケジュールの説明をおこなう場合もあります。もし、明確なスケジュールの説明がなければ、当日その場で必ず確認します。これは、テーマによって、できるだけサプライヤ側の出席者を限定する狙いと、バイヤーがスケジュールを守ろうとする姿勢が、購入品の納期順守にもつながっていると認識させるためです。打ち合わせの内容によって、長時間の対応を余儀なくさせる場合は、バイヤーから相手への時間確保可否を確認します。めったにおこなわない訪問の機会だからこそ、サプライヤは最優先で対応すべきとの考えもあります。しかし、顧客の立場の訪問であっても、相手への配慮は常におこなう姿勢を示すのです。

<つづく>

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