ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

2-3調達購買部門の前工程~生産管理知識

生産管理とは、生産に必要なあらゆるリソースを同期(時間的に一致)させ、もっとも効率的なタイミングで生産工程へ投入する管理を行います。また、サプライヤからの購入する製品の種類と量、時期を決める重要な役割を担っています。言うなれば、購入仕様を決定する部門と同じく、調達購買部門の「前工程」となり、的確な情報提供の実現によって、円滑な調達購買業務が可能になります。

☆生産管理は、調達購買の前工程

生産管理部門では、自社製品の生産をどのように効率的に行うかを検討し、実行・管理する責任を持っています。営業部門が受注した内容によって

(1) どんな種類の製品を生産するか
(2) どれくらいの量を生産するか
(3) いつ生産するか

を総合的に判断し、生産計画をつくります。生産計画には、長期的なもの(大日程計画)から、実際に生産する期日に近づくにしたがってつくられるもの(中、小日程計画)まで、いくつかの種類があります。大日程計画における生産計画はサプライヤへ提示する需要予測のベースデータとなり、中・小日程計画における生産計画は具体的なサプライヤへの発注量を決定するための根拠となります。調達購買部門は、生産計画で設定された要求納期通りに、製品を納入できるようにサプライヤへ働きかけなければなりません。

☆サプライヤにも存在する生産計画を知る

サプライヤが持つ生産能力や標準リードタイムは、適切な生産計画をつくるために必要な情報です。生産管理部門は調達購買部門の前工程と位置づけられますが、適切な生産計画がつくられるためには調達購買部門に集約されたサプライヤ情報をフィードバックも重要です。バイヤにとって生産管理の仕組みを学ぶ目的は、自社の仕組み理解と、サプライヤの仕組み理解と2面性があります。生産計画には企業ごとに独自のノウハウにもとづいた特徴が存在します。しかし、「生産に必要なあらゆるリソースを同期(時間的に一致)させ、生産へ投入するための管理」は普遍的なもので企業ごとに違いはありません。まず、生産計画が作られるまでのプロセスを理解します。そして、生産計画の知識を活用してサプライヤから提示されたリードタイムの妥当性を、確認します。こちらが希望するリードタイムと、サプライヤの回答に差が生じる場合は、どのプロセスに問題があるのかを見極め、リードタイムを短縮する活動にも、この生産管理の知識は活用できるのです。

サプライヤの生産管理方法は、営業パーソンに説明を求めるのと同時に、工場を訪問した際に、担当者からヒアリングをおこないます。訪問したサプライヤに注文書を発行しているわけですから、その注文書がサプライヤの営業部門で受領されてからの具体的なプロセスの説明を求めます。ヒアリングのポイントは、

(1)各プロセスの実行タイミング(都度か、決まっているか、決まっていれば日次、週次、月次のいずれか
(2)各プロセスの所要時間(日数)
(3)各プロセスのアウトプット

の3点です。この各項目を確認した上で、バイヤ企業の発注内容の変更依頼への許容レベルを確認します。例えば、納期繰り上げや仕様変更といった頻出の変更依頼をバイヤ企業がおこなった場合のサプライヤの対応方法を確認します。これは、加工の種類や組立て手順のプロセスではなく、バイヤ企業から提示された情報が、サプライヤ内で、どんな部門によって、どんな処理がおこなわれ、最終的な購入が実現するのか、そのプロセス理解が目的です。調達購買部門のサプライヤへのアウトプットは注文書であり、記載された情報がサプライヤでどのように利用されるのかを理解します。

☆納期トラブルにどう対処するか

バイヤに納期的なトラブルは避けて通れません。組立業の場合、例えば安価な部品一つが不足しても生産できず、お客様との契約納期を守れなくなってしまいます。納期に関するトラブルを未然に回避するには、サプライヤの生産能力をあらかじめ知っておく必要があります。また、実際にトラブルが発生してしまった場合、問題の根はどこにあって、どのようにすれば事態を打開できるのかを解き明かすにも、サプライヤがどのようなプロセスや計画によって生産していたかを、まず理解しなければなりません。納期トラブルとは、あらかじめ立案した計画の破綻です。また、事態の解決には原因の特定が不可欠です。納期的なトラブルには、必ず原因が存在します。原因が判明すれば、もう解決の第一歩です。トラブルの解消には、自社の生産計画を踏まえ、どこまで納期的な譲歩ができるかといったサプライヤとのギリギリの調整が必要です。また、一時的には乗り切ったとしても、次の段階ではトラブルの原因を根本的に解消しなければなりません。そのためには、自社の生産計画はもちろん、サプライヤの生産がどのように計画され、実行されるのかの理解が納期トラブルを防ぐためのもっとも近道となるのです。

<つづく>

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