ほんとうの調達・購買・資材理論「調達関係者に絶対に役立つ統計講座13回目」(坂口孝則)
*今回もこの連載は長いので、ご印刷して読む、お時間のあるときに読む、あるいは潔く読まない、のどれかを決断ください(笑)。ただし、今回は最後のExcel操作関係なのでぜひお読みいただきたいと思っています。
さて今回は最後の「調達関係者に絶対に役立つ統計講座」だ。これまでお読みいただいたこと感謝したい。最終回は、計算や統計の表を作成するに役立つExcelの技を紹介し補足としたい。
・クイックアクセスの設定
まず準備だ。Excelを使うとき、いや、もう仕事でじゅうぶんに使っているだろうが、自分なりにカスタマイズして使っていきたい。そのほうがはるかに効率的だからだ。
そこでまずホームボタンから、「Excelのオプション」をクリックしていただきたい。Excelのバージョンが異なる場合は、ネットで調べてほしいけれど、基本的にはおなじだ。
<クリックすると大きくできます。以降の図も同様です>
そこから、「ユーザー設定」で、自分がもっとも使うコマンドをクイックアクセスのツールバーに入れておく。このクイックアクセスとは。Excelの通常画面の左上に表示されるところだ。もちろん、さまざまな用途で使っ割れるExcelだから、「これを必ずクイックアクセスのツールバーに入れねばならない」と決まりはない。ただ、とはいえおススメしたいのは、「値貼り付け」「形式を選択して貼り付け」だろうか。これらは、わざわざ操作して指定するのはめんどうだ。だけど、あらかじめクイックアクセスに設定しておけば難なくできる。
私があと気に入っているのは、「パーセントスタイル」だ。これは、0.11などを11%などと、パーセンテージ方式で加工するひとは重宝するだろう。
Excelの肝要は、マウスを使わず、かつ右と左のクリックボタンを使わないことだ。これらのクイックアクセスを設定したあとは、ホーム画面にもどして「Alt」ボタンを押してみればいい。すると、さきほど設定したクイックアクセスのコマンドに数字が表示されているはずだ。
たとえば、私の画面でもっとも上のところに数字1~7が表示されている。つまり、これらのコマンドを、「Alt」ボタン+その数字で使えるようになる。私はよく他のソフトからExcelに貼り付けるケースが多い。そのとき、単純にペースト(Ctrl+V)を押してしまうと、書式まで貼り付けてしまう。そんなとき、「Alt」ボタン+数字の処理で「値貼り付け」ができるのでかなり効率化できている。
ぜひ、ご自身なりのクイックアクセス設定を実施してほしい。
・縦横1枚印刷を高速化しよう
次に印刷設定だ。ビジネスパーソンであれば、Excelを画面上だけで操作するのではなく、紙に印刷する機会がおおいはずだ。あるいはPDFにするかもしれない。また、自分は印刷しないにせよ、誰かにファイルを送付するとき、礼儀として縦横1枚におさまるように設定するかもしれない。
そんなとき、通常であれば、印刷プレビューから、縦横1枚におさまるように設定する。これをなんとか簡易化できないか。ここで、Visual Basicの力を使う。具体的には通常画面から「開発」を選択しよう。そこに、Visual Basicコマンドがあるから、クリックしてみよう。
はじめて見るかもしれないけれど、安心を。誰でもできるから。そこから、「挿入」→「標準モジュール」を選択する。これは手短にいえばプログラミングを埋め込む作業だ。そこで、標準モジュールを記述できるようになるから、下のとおり貼り付けてほしい。
この白いところに記述していく。
Sub 用紙一枚設定ヨコ()
With ActiveSheet.PageSetup End With End Sub Sub 用紙一枚設定タテVer() With ActiveSheet.PageSetup End With End Sub Sub 用紙一枚印刷ヨコ() With ActiveSheet.PageSetup End With End Sub Sub 用紙一枚印刷タテVer() With ActiveSheet.PageSetup End With End Sub |
そして保存だ。
説明すると
・用紙一枚設定ヨコ→表を横一枚に印刷設定
・用紙一枚設定タテVer→表を縦一枚に印刷設定
・用紙一枚印刷ヨコ→表を横一枚に印刷設定かつ印刷を実行
・用紙一枚印刷タテVer→表を縦一枚に印刷設定かつ印刷を実行
それぞれ実行する。
たとえば、こういう表があったとする。
ここで、「Alt」ボタン+「F8」を覚えてほしい。これはさきほどお話した、プログラミングを作動させるコマンドだ。
そうすると、さきほどのプログラミング一覧が出てくるはずだから、どれかを押してみよう。これが縦1枚の設定だ。
これが横1枚の場合だ。
おそらくこれでかなり印刷設定が速くなったと思う。いかがだろうか。
・表計算を高速化しよう
調達・購買業務もそうだし、経理もそうだし、もしかしたら営業もそうかもしれない。表計算でもっとも頻度が高いひとつは、何かと何かを合計するものだ。つまり=sum()だよね。
こういう数字が羅列しているとき、Σマークや、あるいは=sum()と手入力してもよい。
でも、もっとも速いのは「Alt」+「Shift」+「-」だ。最後の「ー」っていうのは、ひらがな「ほ」のところだね。すると、合計値が自動的に表示される。
これは、横並びの場合も同じだ。
これは役立つ。ぜひ活用を。
また、表全体を選択するときも、できるだけ高速化したい。表のどこかのセルを選択しているとする。たとえば、こんなときだ。
こんなとき、わざわざ「↑」「↓」「→」「←」キーを使って選択してはいけない。これは、「Ctrl」+「Shift」+「*」で全選択できるのだ。
それで書式を変更するときは、「Ctrl」+「1」(数字)を押せばいい。
こういう一つひとつの積み重ねでExcel作業は加速していくのだ。
・表加工を高速化しよう
また視覚的に面白いのは、Excelのデータバーの活用だ。これは意外に知られていない機能だ。
表を選択した後に、「条件付き書式」→「データバー」を押すだけだ。視覚的に理解可能なグラフを作ってくれる。
また、表の行や列を削除するのもショートカットキーを活用したい。
まず行は、任意の行を選択したのちに「Ctrl」+「Shift」+「+」を押せば行の挿入、「Ctrl」+「ー」で行の削除だ。これは、列も同じ。
任意の列を選択したのちに「Ctrl」+「Shift」+「+」を押せば列の挿入、「Ctrl」+「ー」で列の削除だ。これらは、行全体・列全体を選択せずともかまわない。特定のセル群を選択しても、それぞれ挿入・削除ができる。
・そして最後の最後はゴールシーク
これで最後の最後に、表計算上で役立つゴールシークをお伝えしよう。ちなみに、私が某講義で「Excelのゴールシークを使ったことがありますか」と受講者に質問したところ、ほとんど使った経験のあるひとはいなかった。だから、もしかするとみなさんも同様だろう。
このゴールシークは、条件に合致する数字を計算してくれるものだ。ただ、これだけでは意味がわからないだろうから、ひとつ例をあげよう。
すごく簡単な計算式をあげた。これはセルC4×セルE4=セルG4なるものだ。だから、セルG4には「=C4*E4」と書いてある。ここでどうゴールシークを使うか。
「データ」→「What-If分析」→「ゴールシーク」を選択してほしい。「数式入力セル(E)」「目標値(V)」「変化させるセル(C)」を入力せよとある。
これは、「(E)が(V)になるような(C)を探せ」という命令である。だから、たとえば、さっきの例でいうと、掛け算の結果(セルG4)が500となるような答え(セルC4)を探せ、というものだ。
だからそのとおり入力しよう。
「数式入力セル(E)」:G4
「目標値(V)」:500
「変化させるセル(C)」:C4
それでOKを押せば、Excelが勝手にそれにあてはまるようなセルC4値を計算してくれる。
この場合は暗算でも可能(500÷2だから)だけれど、複雑な場合はとくに重宝するだろう。複雑な計算式を立てるのもよいけれど、ゴールシークで一発計算できることを覚えてほしい。
・統計やグラフ処理を武器に
とここまで連載を読んでいただいてありがとう! 「統計は不要だ。なぜならば、統計など知らなくても仕事できているから」とクールな意見もあるけれど、やはり知らないよりも知っておいたほうが良い。そしてこの統計の知識はきっとこれからのみなさんの武器になるだろう。少なくとも私はそう信じている。
当連載は宣言通り、今回で終了する(なお13回目で終わったけれど、私がもっとも好きな数字は13である)。
これまで多くの統計知識や具体的な計算方法について述べてきた。おそらく原稿をワードで換算すると130枚ほどになった。そのすべてを、できるだけ容易に説明しようと努めてきた。また統計学者が厳密さを優先するがゆえにいえないことも、大胆に言い切ってきた。また読み返すなどして復習いただければ幸いだ。
では、またお会いしたい。バイバイ!
<当連載は、もうつづかない>