ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

6-7 サプライヤのどの部分を管理するのか ~サプライヤ能力管理~

サプライヤマネジメントは、バイヤ企業の購入ニーズに応えるために、最適なリソースを持ったサプライヤとの取り引きを実現し、その状態を維持するための管理(マネジメント)です。具体的には、次の3つのポイントになります。

☆管理(マネジメント)の定義

なんらかの購買をおこなう場合、購入要求の内容を実現するリソースを持ったサプライヤへ発注します。購入要求の都度、サプライヤに購入可否を確認するのは、非効率ですし、リードタイム短縮化の趨勢(すうせい)によって、都度評価し確認の上、発注するのは、現実的には不可能です。

したがって、調達購買部門は、あらかじめ発注する可能性があるサプライヤの能力を評価し、多様な購入要求に対応できるかどうかを判断する材料を揃えておかなければなりません。これがサプライヤマネジメントでおこなうべき管理(マネジメント)です。多くの企業では、取り引き用の「口座」を設定する一連の対応になります。

加えて、企業の事業内容やリソースは、さまざまな要因によって変化します。売り上げ/利益の数値、割合、構成内容や、人員構成、将来的な方向性(市場ニーズ)といった要素は、バイヤ企業だけでなく、サプライヤにも、短期的、中長期的に影響を及ぼします。こういった「変化」によって、影響を受けたサプライヤのリソースも、必ず確認しなければなりません。サプライヤで発生している変化によっては、従来発注できていたアイテムも、発注できなくなるケースも事前に情報入手しなければなりません。もちろん、逆のケースもあります。従来に増して広い範囲の対応が可能となるケースもあります。そういった変化を、サプライヤ選定に反映して、最適な発注をサポートする、これが管理(マネジメント)です。

☆「管理」すべき対象領域

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これまで述べてきたサプライヤの評価項目になります。具体的には、

(1)品質管理能力
(2)コスト管理能力
(3)納期管理能力
(4)開発能力
(5)ポジショニング(ロイヤリティ)

の5つです。この領域に関し、バイヤ企業の最低限の希望条件を満足しているかどうか、また好ましい秀でた特徴を持っていれば、維持・継続をサプライヤがどのように実行しているかを確認します。確認する方法は、定期的におこなうサプライヤ継続監査です。

☆バイヤ企業の要求内容を満足していない場合の対応

上記に述べたような取り組みによってサプライヤを評価した結果、なんらかの問題、具体的には従来の発注ができない可能性が発見された場合の対応を考えてみます。上記(1)~(5)の評価結果はサプライヤにも開示します。あわせ、サプライヤ側の変更状況及び原因のヒアリングをおこないます。サプライヤが引き続きバイヤ企業と取り引き継続を希望すれば、問題の解決を申し入れます。その際には問題解決までのプロセスを明確にし、具体的な改善スケジュールの提出を求めます。調達購買部門は、改善スケジュールのフォローをおこなって、計画完了時点で、あらためてサプライヤ評価をおこない、改善実行を確認します。

問題の解決を申し入れたものの、企業戦略によってサプライヤに改善の意志がない場合や、改善に必要なリソースがサプライヤに存在しない場合があります。この場合は、前者の場合は、バイヤ企業にとっての必要性を見極めつつ、サプライヤの意思確認をおこないます。後者の場合は、バイヤ企業から「改善指導」をするかどうか決定します。バイヤ企業側からの指導に際しては、その価値があるかどうかを厳格に見極めます。サプライヤに改善の強い意志があることはもちろん、指導してバイヤ企業が得られるメリットの存在がなければなりません。

サプライヤの評価は、問題点を事前に発見し、対策を施し、問題点を排除して、一連のマネジメントが完結します。しかし、ときには「改善」という手段でなく、発注先を変更する厳しい判断を下さなければならない事態も想定します。

(つづく)

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