調達・購買担当者の意識改革~パート17「新規サプライヤ企業情報で押さえるポイント」(坂口孝則)
・サプライヤの何を評価し、どう評価結果を伝えるべきなのか
解説:サプライヤを選別し、集中した取引を実施する。これがQCDを高めるに有効です。サプライヤにとっても、多く受注できるバイヤー企業には経営資源(人・カネ・物)を投資できます。技術開発も進みます。サプライヤのうまい管理を、そのままサプライヤマネジメントと呼びます。さらにサプライヤとは、「公正なサプライヤ評価による サプライヤ戦略に基づいて、 サプライヤを層別化・差別化し扱うこと」だと私は定義しています。そして、それにはサプライヤ評価が基本となります。評価対象を決め、評価を実施すること。それにより、評価結果を全社的なメッセージとし、サプライヤ層別化を進め、サプライヤ選定に反映させます。
意識改革のために:
そこで、この連載では、攻めの「サプライヤ評価表」と「サプライヤ評価結果通知書」をご提示します。
http://www.future-procurement.com/sapuhyou.pdf
http://www.future-procurement.com/sapukekka.xlsx
この二つを使用(あるいは修正いただく)ことをオススメします。まず、サプライヤ評価表ですが、私の書籍でも、あるいはメルマガでも書きました。ここだけは一部が重複していることご容赦ください。
・サプライヤ評価表について
評価「軸」の設定は、サンプルとしてこのようにしています。
1.品質
2.コスト
3.納期
4.技術・開発
5.経営
この5軸をそれぞれ100点満点で評価、さらに大項目に重みをつけて、総合点が100点になるように調整しています。もちろんこれは、サンプルですから、みなさんの都合にあわせて削除や追加をお願いします。私がお手伝いした企業では、「環境対応」や「有害物質対応」などをとくに重視し、別の大項目として設定しました。
評価表では、もっとも左側に項目。そしてその項目を三段階評価に点数付けしています。初期値は満点としているのは、さほど意味はありません。。
品質から順にポイントだけ説明します。
1.品質
代表項目は「納入品質」です。これは、納入されたうち、どの割合が不良品だったかを示すもの。10点は「10ppm未満」とあります。これはどの程度なのでしょうか。ppmとは百万分の一率です。よって、100万個の納入品のうち1個不良=1ppmとなります。したがって、10ppmとは、100万個の納入品のうち10個の不良です。
2.コスト
「平均目標単価達成度」「コスト低減協力度」が主要項目です。前者は新規製品開発における指標で、後者は毎期のコスト削減です。つまり前者は、評価する期において、新規に採用した製品について、どれくらい目標原価よりも安価になったか。後者は、継続した調達品をどれくらい価格低減してくれたか、で採点する指標です。
3.納期
「納期遵守率」は、バイヤー企業が適正なリードタイムを設定している前提で、サプライヤがどの程度、その納期を守ってくれたかを評価するものです。100件の注文につき95件が納期通りだったとすれば納期遵守率は95%となります。
4.技術・開発
調達・購買部門は設計・開発部門と共同で評価軸を作成し、評価していきます。自分たちが求めている技術力・開発力を適正に評価できる軸を設定してください。
5.経営
財務の「安全性」、「収益性」、「成長性」、借入金等の「返済能力」を中心として評価しています。これらの指標を評価する基準値は業界や業態によって使い分ける必要があります。たとえば、財務省「法人企業統計」( http://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/index.htm )を活用して、業界平均を知ったうえで評価してください。
(1)「安全性」:時間がなければ「流動比率」だけ見てください。流動比率とは「流動資産」を「流動負債」で割ったものです。直感的な意味では、「流動資産」=「1年以内にお金になるもの」を、「流動負債」=「1年以内にお金を払わなければいけないもの」で割るわけですから、「入ってくるお金と出ていくお金の比率」を意味します。流動比率が120%とは、1年以内に入ってくるお金が、出ていくお金よりも20%超過していることです。一つの目安は120%を超えていることであり、100%を切ると危険、200%を超えると優良企業といえます。
(2)「収益性」:これまた時間がなければ「2年連続赤字になっていないか」を見てください。2年連続赤字の企業は収益性が悪い(コストに見合うだけの売上高を確保できていない)と見ることができます。また2年連続赤字になっている中小企業にたいしては、一般的に銀行が貸し渋りするといわれています。財務にも影響を及ぼすため、チェックが必要です。
(3)「返済能力」:「債務償還年数」を見てください。基準値は1となっています。この意味は、借りたお金くらいは、1年分の利益でまかなえることです。この値が5を超えるとマズい、と覚えておいてください。いまの利益体質でいえば、借りたお金を5年かかりやっと返せる程度でしかないということです。もちろん利息を払い続ける以上、銀行は貸し続けるかもしれません。ただし、借金の額に利益がおいついていない不健全な体質になってしまっています。
この1~5をまとめたものが、最終的なサプライヤ評価点です。
最終的な評価を、部内で戦略構築に活用します。社内でも合意を得るために使うこともありますし、サプライヤの改善指導にも役立てます。
・サプライヤへの評価結果の連絡
評価はしっぱなしですと意味がありません。評価結果をサプライヤに伝達することで、改善の方向性を共有できます。しかし、問題なのは、どこまで「共有するか」です。だって、あまりに赤裸々に公開するとマズい。しかし、結果すらわからなければ、サプライヤは何をどう改善して良いかもわからない。
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そこで、サプライヤに対する評価を「オープン型」(評価内容や評価手法、評価結果を詳細にわたって明らかにする)と「クローズ型」にわけてみました。
これをご覧いただいておわかりのとおり、サプライヤ評価公開に絶対的な正解などありません。ですので、これ以降は私の考える評価公開方法の紹介にすぎません。次回はサプライヤ評価結果公開について考えていきます( http://www.future-procurement.com/sapukekka.xlsx )。