ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)
テキスト版 調達購買「私塾」50回突破記念講義
~サプライヤー情報を活用するためにまとめ会話に生かす「A4」作成法
去る9月某日、毎月最終金曜日に開催している調達購買「私塾」の50回突破念講義が開催されました。その時の講義をお伝えする第二回です。
前回は、サプライヤーマネジメントを実行する上で、サプライヤーと構築する良い関係について定義付けをおこないました。具体的には1.変化に対応して 2.ビジネス上の基本的な関係をつくるQCDDMが確保されて、3.不測事態に際して優先順位を上げた対応を実現させるとしました。今回は、良い状態であるかどうかを判断する為の情報収集に必要なツール(A4)のご紹介です。
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上記フォームは、4つの内容から構成されます。それぞれの内容を見てゆきましょう。まず、Aの部分です。
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ここでは、目標と達成状況を「文章」で表記します。左側は、当該期間の対象サプライヤーの具体的な課題を、担当バイヤーが明記します。これは、過去のサプライヤー評価にもとづいて、バイヤー企業として、あるいは調達購買部門として目標を達成するためにサプライヤーに要求する内容です。これは、サプライヤーの現状=評価結果を踏まえ、バイヤー企業側の企業戦略/調達購買戦略がベースになって作成します。
続いて右側は、対応状況と、達成状況および結果を明記します。サプライヤー担当者からのヒアリングをベースにして、具体的な進捗(しんちょく)を明記します。設定された期間(大抵は半年とか、1年)の中間であれば進捗(しんちょく)状況を。期間が終われば具体的な達成状況を明記します。進捗(しんちょく)状況は、直接の面談でも、メールでも電話でもかまいませんし、サプライヤーの営業担当者や他の関係者からのヒアリングの内容と、関連する回答をベースにします。
続いて、Bの部分です。
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ここでは、過去のサプライヤー評価から現状掌握をおこないます。左側には、サプライヤー評価の数値をグラフ化します。過去のサプライヤー評価スコアを過去3評価期のデータを記載して経年変化を可視化します。このグラフ化によって、サプライヤーの持つ傾向を読み取れます。例えば、品質レベルは向上していうるか、それとも低下しているか、あるいは維持しているのかを視覚的に判断できます。傾向とともに、バイヤー企業として要求しているレベルの過不足を判断します。
右側は、評価結果(数値)の文章化です。数値には、なぜそうなるかとの理由が必ず存在します。数値結果および、数値推移からえられた傾向が果たして正しいのか。品質は安定しているのか、良くなっているのか、あるいは悪化しているのか。納期対応はどうかといった点です。数値やグラフから読み取った傾向から生まれる問題をサプライヤーの営業パーソンにぶつけます。ぶつけた問題に対する回答から、具体的な要因/原因を明記するようにします。このようなサプライヤーとのやり取りを生むBの部分は、先にお話したサプライヤー評価結果の、サプライヤーとの認識の共有化を確認・定着するためのものです。この部分があって、企業戦略や調達購買戦略を実現させるAが作成できるわけです。
つづいて、青いCの部分です。
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ここでは、サプライヤーの各担当者、管理者とバイヤー企業との人間関係の範囲を見える化します。人間関係の広がりを面積で表示するわけですね。この関係の面積と、不測事態への対応がどのように関係するのか。それは、情報のソース、入手先を複線化して、正しい情報が入手できる可能性が高まります。この表で示した、知っている相手を、どんどん塗りつぶしていきます。「知っている」基準は
① 名刺交換した
② 打ち合わせに同席した/会話した
といった基準です。
そして、直接連絡できる相手には印(○)をつける。直接連絡できるかどうかの判断基準は、私の場合は「分からない点は、直接お聞きしても良いですか?」って聞いてしまいます。そう言われると、なかなか断わりづらいですしね。また、困った時は、礼節を持って、直接のコンタクトをわびつつ、営業パーソンのメンツを保ちながら、了解無しに直接コンタクトします。
そして、一定期間ごとに、認知範囲を確認します。例えば、新年度に見直しして、知っていたら塗って○をつけます。
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ちょっと細かく説明します。
ここでは、自社=バイヤー企業側の担当者を自分とします。自分を基点にしてサプライヤー側の各部門の知っている人は、どんどん塗りつぶしてゆきます。四角は、4つに分けられています。4つのマスは、調達購買部門の上位者とのつながりを表します。例えば上記の例だと、バイヤー企業の調達購買部門に対応するのは、サプライヤーの営業部門になります。バイヤー企業の担当者と係長は、サプライヤーの部次長クラスまで面識を持つのです。
続いてこの担当者は、サプライヤーの設計部門、生産管理部門は課長クラスまで面識がありますね。品質保証部門で係長クラスまでの面識とは、あまり大きな品質問題が起きていない証拠かもしれません。そして、バイヤー企業の関連部門とのつながりは線を引いて表現します。
<つづく>