仕事でもっとも大切なこと(坂口孝則)

クイズ。仕事でもっとも難しいのはどれでしょう。

1.とりかかる
2.やる
3.提出する

仕事ができるひとの机は整理整頓されている、と聞いて、これまで不思議だった。私が出会った尊敬する必殺仕事人たちの机は汚かったし、何よりオフィスの整理整頓を特集する出版社のオフィスが綺麗だったことがない。「整理整頓はデキる男の証明」「年収があがる机術」を語る出版社の状況がそうだから、大きな安心を私たちに与えてくれる。

話は変わるが、仕事関係者から「こりゃ面白い! 気合を入れてやります!」といわれると、「なるほど、このひとは、面白くなかったりワクワクしなかったりすると仕事の質が悪いのだな」と思ってしまう。一緒の仕事はできればご遠慮を願いたいと感じるほどだ。

また、若手社員から「個性を活かす仕事をしたい」といわれると、「できるだけ個性を潰す教育をしよう」と思ってしまう。他者から抑圧されたくらいで無くなる個性など、そもそも無意味だからだ。

冒頭のクイズでいえば、机が汚くても、モチベーションがなくても、個性を発揮できなくても、とにかく仕事にとりかかることだけが重要だ。どうも世の中の仕事ノウハウは2の効率化ばかりを追求しているように私は感じる。仕事をやりはじめたあとの効率なんて、ほとんど変わらない。しかし、1はもっとも難しい。1ができれば2も3も自動的だ。

これまで仕事の初速をあげるために有効だったのは、スマホの利用だった。とにかくスマホを使って資料の一文目をパソコンにメールする。それを貼り付けて、とにかくファイルを作ってしまう。エクセルやワードならタイトル、パワーポイントなら一枚目の結語だけでも強引に書く。文字入力が面倒であれば、「音声認識メール」等のソフトを使って、口述を文字化する。中身が空であっても、ファイルを作れば、その後の仕事が進む。仕事へのとりかかりを無視する仕事論は、私にほとんど意味がない。初速をあげる技術こそを今後も開発したい。

「仕事にとりかかる前のダラダラする時間にもコストがかかるしね」
「会社は社員に1秒=1円のコストがかかる」
「となりの奴なんて、いつも毎朝30分お茶しているよ」
「お茶のむあいだに1800円も垂れ流している計算だ」
「真っ青だな」
「休んでばかりの奴はたいてい顔色いいけどな」
「まあね」
「会社ではコストという見えない雨が降っているんだ」
「たまに雨に濡れるのも良いけどね」
「あめーよ」
「そんなくだらないギャグを聞く不毛な時間にはコストはかからないのか」
「許してくれ」
「せめて、余談や冗談は早口で話すのが、コストを垂れ流さない工夫だ」
「そうか、5分の戯言を1分で話せば……」
「周囲の奴らは何もせずに240円のコスト削減さ」
「仕事効率グッズなんて買うよりも、俺のような男は早口になればいいのか」
「きっと来年あたりは『つまらない男のための早口講座』が流行るぜ」

え、私? もちろん、早口だ。

<了>

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