連載企画「速読は儲かる」第3回(坂口孝則)

さっそくなんだけど、ここで質問をしてみたい。

[問題]次の人たちの共通点はなんだろうか。

・堀江貴文さん
・苫米地英人さん
・勝間和代さん
・本田直之さん
・神田昌典さん

そう! 共通点は「速読」なんだ。

この5人は、速読によって、世の中のノウハウや知識を自分のなかに取り込み、それを自分なりに消化して、稼ぎに変えたひとたち。堀江貴文さんは、監獄にいたときに「本を一日に3冊は読んだ」と言っているし、苫米地さんに及んでは、書籍「FREE」を5分で読んだ(笑)といっている。この5人は、速読を金銭化したなかのほんの一部だ。

このなかでは、勝間さんがもっとも有名かもしれない。勝間さんは、テレビ番組「情熱大陸」のなかで速読を披瀝したし、なにより私とテレビ番組のなかで速読対決までした(ちなみに、私は速度で負けた)。

本田直之さんの傑作「レバレッジリーディング」は、書籍をたくさん読み、それを梃子(てこ)にして人生を豊かにする指南書だった。

神田昌典さんは、「あなたもいままでの10倍速く本が読める」でフォトリーディングを一躍有名にした。これは1秒1ページの高速で本をめくり、脳の無意識に情報をインストールするものだ。この方法により、外国語の書籍を読めるようになったひとが続出したという。

速読というのは人目を引くのか、私のgoogle検索ワードで「坂口孝則 速読」っていうのが上位にランクされるくらいだ。

また、私はそこまでいう勇気はないけれど、速読で運動神経があがるとまでいうひともいる。速読は目を高速で動かすから、反射神経や動体視力があがるというわけだ。

ひとが実世界で経験できる内容はたかがしれている。とすれば、それ以外の情報を効率的に摂取するのは本だというわけだ。これは悪口ではなく、さきほどあげた著者の書籍は、ほとんど引用だけで成り立っているものもあるくらいだ。そのひとオリジナルの意見や知識などはほとんどない。

つまり、有名な知識人たちの言説は、書籍からさまざまな知識やノウハウを知り、それらの活用例ともいえる。

しかも、それは知識人だけの話ではない。

ビジネスマンだって、活躍しているひとは、ほぼ例外なく読書家だ。もちろん、一日に何冊も読んでいなかったとしても、必要におうじて即知識をまとめあげる能力に秀でているケースは多い。

ビジネスマンの仕事は極端にいえば、書類をつくることだ。よって、その書類にどれだけの情報を入れられるか、あるいは取捨選択できるかが、優秀と平凡をわけるものなんだ。それに、優秀な成果をあげたビジネスマンは、いつも本を書きたがる。人間というのは、やはり自分がやってきたものを形に残したいものなんだ。

たまに、本を書くのはお金のためでしょう、というひとがいる。だけど、それは大きな間違いだ。大ヒットを除く、ほとんどの場合、本なんて書くよりも違うことで稼いだほうが、もっと儲かる。優秀なビジネスマンであればなおさらだ。

私は、自分が本を書いているからって、本だけを褒めるつもりはない。ひとと直に会うのも大切だし、本を読まなかったひとが成功しないともいうつもりはない。

だけど、これだけは実感している。

書籍というのは、すべての引用元になっている。情報量が圧倒的に多いし、書籍同士で競争にさらされているから、他の商品以上に凝っている。そして、世の中のノウハウの相当部分が、すでに本のなかに埋め込まれているんだ。

一時期、インターネットがすべてを変えるといわれ、ネット情報さえあれば大丈夫だと思われていた時期があった。しかし、それはほんとうだったか。ネットの情報は、キモとなるところは書籍からの引用だし、キュレーターというネット情報の水先案内人は、例外なく読書家か著者のひとたちだった。

とはいえ、多くのひとが書籍を読まなくなったのも事実。これは「活字離れ」じゃないよ。私はこれまで以上に、活字にふれる機会が多くなったと思っている。スマホでみんないつも活字ばかり見ているからね。でも、貴重な時間を、二次創作物・三次創作物にばかり費やしているんだ。

本という意味での「活字離れ」なら進んでいる。その結果、本読みからすれば、誰も見ない宝の山があちこちにある。

私は書き手のひとりだけれど、「活字離れ」をあまり嘆いてはいない。だって、自分だけが良質なコンテンツにアクセスできるからだ。そのコンテンツを高速で摂取し、発信すれば良い。そして、そのノウハウは難しくない。訓練すれば、誰だってできる。

私は概念だけで、こういっているわけじゃない。本――、そして速読が役立つというのは、経験からだ。なんといっても、自分の活躍の場が、この本・速読によってもたらされた。

このような言い方は不遜かもしれない。でも、いっておく。たぶん、テレビや雑誌に呼ばれる文化人のうち、そして講演依頼がとどく文化人のうち、私はもっとも若い部類だと思う。

文化人っていうのが不適切ならば、ビジネスマンでもなんでもいい。通常ならば、40代とか50代の文化人がメディアに出るもの。それを私は20代からやっている。こう自慢するっていうのは、自分にプレッシャーをかけている。

それにしても、高校生くらいの私をしっているひとは、「なんでお前が……」と不思議がる。

私は調達・購買の仕事をやってきた。

ご存知のとおり、この部署っていうのは、社内のなかでも地位が低い。そんなに有名人も排出していない。なんでもいいけれど、有名人の略歴を見て、「調達・購買業務に従業」なんてフレーズを見たことがない。

社内からはイジメられ、そして将来も見えなかった。この仕事を続けて、いったいどうなるのか。先輩に訊いても、周囲を見渡してもわからなかった。

なんで、しかたがなく、答えを見つけようと本を読みだした。

もちろん、仕事に直結するようなものばかりじゃない。さっきいったとおり、調達・購買部員にとって確立されたキャリアパスなんてなかったから、間接的なものだった。しかし、そのうちに管理会計の知識と出会った。これは専門書ではないから、簡単に述べておくと、管理会計とは社内コストを計算する方法。私は、もしかすると、この管理会計の手法が、社内コストではなく、社外の取引先コスト査定にも応用できるんじゃないかと思い立った。

そんなアプローチは、調達・購買の業務ではメジャーではなかった。そもそも原価とかコストとかの考え方に詳しいひとすらいなかった。

私は必死になって管理会計の知識を学び、そして業務に応用して、そこから得た知見を発信しだした。最初は、業務の基本からはじめ、世の中にひろく「調達・購買流の管理会計」をあてはめていった。書籍も発行し、『牛丼一杯の儲けは9円(幻冬舎新書)』は、各書店の売り上げランキング上位に入った。

そこから人生にいろいろあって、会社を辞めたり、小さな会社に入社したりして、そしていまでは自分の会社をもって、この「調達・購買流の管理会計」を広めている。

「知識だけを追い求めると、ロクなことにならない」というひとがいる。「現場経験だけが重要なんだ」と。

でも、私は現場とともに、知識を追い求めてきた。ときに、知識だけで頭でっかちになるかもしれないけれど、その弊害よりも、知識を得ることのメリットが大きいと思ってきたんだ。

よく、「あのひとのいうことは机上の空論ばかりで、実務的ではない」と批判する場合がある。おっしゃるとおりなんだ。だけど、それは、机上の空論が役立たないわけではない。机上の空論を使って、実務で使えるツールに落とし込めばいい。

こういうと、元々あなたは頭が良かったとか、たまたまだといわれるかもしれない。しかし、私は例外的な人間でもなんでもない。

そんなロクでもないグズな人間が、活躍するための方法。

それこそ、ソ・ク・ド・クだよ、速読。

速読ができたから、大量の情報を得続けた。速読できたから、ロクでもない、そしてグズで、社内地位の低い部門にいた人間も活躍できた。

私の儲けツールのほとんどは、本から持ってきたものだ。私の好きな言葉に「自分が悩んでいることは、過去の人たちも悩んでいた」ってのがある。そして、多くの場合、解決策はすでに過去の人たちが考えてくれている。それが表現されているのが書籍だ。それを使わないのはもったいない。

サラリーマン時代には、調達・購買とかの仕事についての解決策を管理会計の書籍から、あるいは洋書からもってきた。そしていまだにビジネスプランや、日々の仕事ネタも書籍から持ってきている。

こんな感じで、書籍からビジネスのネタ、もっというのであれば稼ぐネタを書籍から持ってきた。もちろん、100冊読んだら、100冊が役立ったとはいわない。でも、100冊のうち、いや、1000冊のうち1冊か2冊だけでも役立てば、それは投資の何十倍にもなって返ってきた。これは、もう、やめられない。

たとえば、一つの例をあげよう。

そのはじまりは、「2013年に日本はどうなる?」という書籍を読んだことがきっかけだった。書かれている内容に賛成もしたし、反対もした。違うもう一冊を読んでみたら、まったく違うことが書いてあった。情報は同じでも、解釈によって、結論が異なるんだ。それならば、「2013年に日本はどうなる?」っていう本をまとめ読みして、それらの本の共通点を探り、自分なりに再解釈すればいいんじゃないか?

そう思って、セミナー会社に企画書を送った。

ほんとうに、それだけの話だ。

その企画は「Theリスク2013」というタイトルになり、100人ものひとが集まった。売上は何百万円単位となり、私には50万円が振り込まれた。私の費やしたコストは、20冊くらいを買ったから2万円くらい。資料をまとめる時間はかかったけれど、それにしてもリターンは大きい。

その後、セミナーに来てくれたひとが、私の個別コンサルティングを受けてくれたり、個別研修を発注してくれたりして、その倍以上の売上につながった。おそらく、これ以降も拡大していくだろう。

「20冊の本をまとめ読みして、まとめるって、それ自体が難しいでしょう?」
そうなんだ。そう思ってもらえるから、この仕事はおいしい。(当連載は続きます)。

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