グローバル調達とはなにか(牧野直哉)

●グローバル調達とはなにか?

最近、いろいろな企業の調達購買部門課長/マネージャークラスが集う勉強会に参加しています。いくつかの分科会に分かれて討議を重ねています。私は「グローバル調達分科会」に所属しました。隔週ベースでの討議を進めて、課題と格闘しています。そんな中で、一生懸命に考えているのが、冒頭に書いた質問です。漠然としていてかなりむずかしい問題です。

グローバル調達とは、バイヤー企業側の各国への展開状況によって、求める姿である調達の形も異なるはずです。勉強会は、グローバル調達の理想をつき詰める事が目的です。グローバル調達の次には、「世界最適地調達」といった言葉が登場します。ここで使われる「最適」。グローバル企業といえば、各国に拠点を構え、各地で販売し、調達購買面ではお互いに融通しあうといったイメージです。いくつかの供給ソースがあって、QCDをはじめとする様々な要因をあわせて考え、条件にもっとも合致するサプライヤーを選定する。結果、それが「最適」になります。しかし、この理想の姿だけを前提にするのに、すこし不安を覚えました。今の日本企業のポジショニングを考えるとき、一つの世界最適地調達モデルを設定するだけで良いのかどうか。日本企業の現状と、先進的なグローバル調達を実践する企業との間に存在する「違い」が、調達購買のグローバル化にも大きく影響するためです。

●グローバル調達におよぼす企業形態の「違い」

購入品をお互いに融通するイメージを、以下の図にしてみました。各国に拠点をおき、拠点の間で情報共有をおこなって、最適地購買を実行します。しかし、どんな形態の拠点であれ、下図のような展開は一朝一夕で成立しません。時間的な問題だけでなく、拠点を設立して維持するにはコストも必要です。いきなり下図のように展開、実現を求めるのはな理があります。

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グローバル調達の姿を追い求めるために、以下に提示した表では、企業の形態を3つの要素によって8つに分類しました。

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1. 市場(自社製品、サービスを販売する市場はどこか)
2. 自社のリソース(拠点はどこにあるか)
3. サプライヤーリソース(どこのサプライヤーから購入しているか)

ここでは、日本企業でありながら海外市場のみをターゲットにする企業を外しました。勉強会メンバーの勤務先にそのような企業がなかったためです。例えば、2のように、対象市場と自社のリソースが国内で、サプライヤーリソースを海外に求める場合、より効率的で有利な購買を進めるためには「海外調達」をどのように行なうかが具体的な課題になります。ところが、8のような企業の場合は、そもそも「海外調達」との発想が消滅しています。たまたま購入元と購入先の国が異なるだけです。形態は海外調達になりますが、だから構えて対処するわけではありません。

繰り返しになりますが、グローバル調達を考えるとき、いきなり先に提示した世界地図のような最終形をイメージしてしまうと、上記表の「国内企業」に分類したところは、いったい何から手を付ければ良いのかがわからなくなってしまうのです。一方で、調達購買以外の分野では、グローバル化の影響を色濃く受けている面もあります。サラリーマンの平均給与が下がり続けているのも、新興国の経済発展と密接に関係しています。これまで国境で明確に存在した分け隔てがなくなっているのです。したがって、上記表の1~4に分類された「国内企業」にとっても、グローバル化する経済の影響は必ず受けるのです。そして、それが悪い影響であれば具体的に対処しなければなりません。対処のひとつの手段としてグローバル調達への取り組みがあるとすれば、上記の1~7の各段階から8へと進めるための、各段階におけるグローバル調達への取り組みがあるのです。

●海外調達がグローバル化なのか

表中の8に該当する企業であれば、そもそも海外調達は日常的に特別視されずおこなわれています。したがって、海外調達への取り組みが、イコールでグローバル調達へとつながりません。しかし、国内のサプライヤーからだけ調達をおこなっている企業にとっては、海外調達を開始がグローバル調達への入り口になります。企業が置かれた状況によって、グローバル化への具体的な取り組みは、大きく異なるのです。

勉強会は、これから約1年間継続します。続ける中で、グローバルに展開し尽くした企業だけでなく、日本国内で感じる閉塞感を打破するために、まさにこれから海外へと向かう企業における対応を含めた形での、欲張りな内容を作り上げてゆきたいと思っています。

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