転職を考えない人が読む「転職」のおはなし 6(牧野直哉)
今回で第6回になります。
① 三回目 ~信用できるリクルーターのコメントを反映する
さて、ここまで自分の職務経歴書を書き、推敲をおこなってきました。ここまできたら、もう少し先にすすめておきましょう。作成した職務経歴書の内容を活用して、人材斡旋する企業に、自分のデータを登録します。ホームページに入力画面を準備しているケースもあるし、ファイルをアップロードできる場合もあります。「転職」をキーワードにしてインターネットを検索すれば、たくさんの斡旋業者がヒットします。その中から、いくつかのサイトを自分で選んで、これまで作成したデータをアップします。
データをアップすると、これまで申し述べたとおりのプロセスで職務経歴書を書いていれば、必ず斡旋業者からコンタクトしてきます。魅力的であればあるほどに斡旋業者の担当であるリクルーターから「会いましょう」と言われます。ここまで時間を費やして職務経歴書を作成し、データを送ったわけです。会いたいと言ってくれた相手には、ぜひ会いましょう。その時、一般的には、リクルーター側が皆さんの経歴や希望をインタビューするのが目的です。しかし、一般的に、普通に対処していては、他人と違ったより良い条件での転職は望めません。したがって、次のようなインタビューを逆にリクルーターへ行ないます。インタビューの項目は一つだけです。
「私の職務経歴書に不足している内容はありますか?」
私の場合、TOIECの点数の指摘を最近受けました。マネージャークラスで海外とのコミュニケーションができる能力を文書で示すための点数が不足しているとのアドバイスです。皆さんがリクルーターにこの質問をして、答えられるかどうか。これは、あなた自身がリクルーターなり、転職斡旋業者を選択する最初の確認事項になります。今現在、転職の必要が無いと思っている皆さんです。もし転職が必要となった場合は、なんらかの人生の岐路に立ったわけです。人生を左右する道を選ばなければならないとき、信頼していないリクルーターにサポートを求めるのは、もっとも避けなければなりません。
もし、ただ一つの質問をおこなって、まともな答えが得られなかった場合、そのリクルーターとの縁は無かったと思ってください。また、指摘された問題点へ対応するためのアドバイスを必ず求めます。そこで、自分で理解し、納得できるアドバイスを得られるかどうかを見極めなければなりません。今、転職を必要としていないからこそ、謙虚さの中に確固たる一面をもって、厳しく判断します。
実際に、私が自分のデータをホームページから入力して後、こんな出来事がありました。突然あるリクルーターからお電話を頂き「牧野さんにぴったりの転職先があります」と熱く語り始めるのです。「あなたが最初に思いついたので電話しました」と電話口で一方的にまくし立てるのです。
正直言えば、そんな電話など貰った経験がなく、うれしいなと感じる電話でもありました。あぁ、私をそんな風に思ってくれる企業もあるのだな、と。しかし、電話を切って後、すこし冷静になって考えると、ちょっと乱暴すぎないかと思ったのです。その電話をもらった当時、強く転職を望んでいなかった幸運も手伝っていますが、たかだかA4一枚にも満たない数百字の文章で「あなたにぴったり」と言い切れるのかどうか。電話を貰って、すこし喜んだ自分がばからしく思えてきました。しかし、これが求職活動をしている場合だったら、受け取り方も違ってくるのです。そんなきっかけでも、可能性は極々低いですが、運良くやりがいと待遇にバランスのとれた職を得る可能性もあります。なぜ、こんな乱暴なことが起きるのでしょう。ここで、転職を斡旋するリクルーターが、どのように報酬を得ているかを、考えてみます。
転職斡旋会社は、クライアントである企業に人材を入社させた時点で報酬を受け取れます。その後、あまりにも短期間に退職した場合は別にして、我々が転職してどうなったかは一切関係なく、クライアントから転職斡旋会社に報酬は支払われるのです。転職した側からすれば、その成否が判明するまでに少し時間を要します。しかし、リクルーターからすれば、候補者をクライアントに入社させれば良いのです。入社した後、ちょっと事前の説明と違うな~と思っても、すぐに退職する決断は下しませんよね。その転職者が、入社した会社の良し悪しを判断している間に、ビジネスとしての転職はすべて完了してしまうのです。したがって、極論すると、とりあえず候補者を入社させれば良いと考えているリクルーターも存在する現実を忘れてはならないのです。リクルーターは、いくつか同時並行でこなす仕事の一つですが、転職者からすれば人生の岐路です。実態として、そういった面は、転職する側も理解しなければなりません。転職者の特性を見定めず「あてはめる」だけで、転職斡旋ビジネスは成立します。このリクルーターと転職者のスタンスの違いをどのように埋めるかが、成功する転職のポイントなのです。
<つづく>