短期連載・坂口孝則の情報収集講座(坂口孝則)

この大学からかぞえて20年ほど、ずっと「調べて書いて、発表する」行為を続けてきました。社会人になると、「この資料作っておいて」といきなり言われるケースは多いはずです。むしろ、会社員の仕事の大半は、資料作成といっても良いかもしれません。そこで自分なりに総括したい気持ちもあり、『情報収集講座』と題し、短期連載としてメルマガに掲載することにしました。

【第22回】応用編 消費者物価指数を使いこなす

日本銀行物価関連調査は、企業間の物価でした。家計調査は、消費者が「払った」価格を示しました。それにたいして、消費者物価指数は購入する対象となる商品やサービスの物価変動を測定するものです。 Tシャツを購入するとして、そのTシャツ購入に要する費用が、物価の変動によってどう変化するかを示したものです。

これまた衒学的ではなく、厳密さもあるていど捨て、実務的に活用できる方法をお伝えします。

1. 消費者物価指数(CPI)結果(http://www.stat.go.jp/data/cpi/1.htm)に進みます
2. 「時系列データ」から全国(品目別価格指数)を選択してください
→ほんらいは「東京都区部(品目別価格指数)」と品目が微妙に違うのですが、ご興味があればおってご覧ください
3. 「月次 (1970年1月~最新月)」を選択し、「品目別価格指数(1970年1月~最新月)」のなかのCSVファイルをとりあえずすべてダウンロードしてください

これでかなりの品目を1970年から価格上昇と下落について確認できるはずです。私のおすすめは、自分に関係のある品目を抽出することです。さらに、それを1月から12月まで、直近の5年ほどを重ねてみてください。すると、その商品ごとの、月によるトレンドが見て取れるはずです。

これは調査対象が同一ではありませんので、比較については注意を要しますが、家計調査と照らし合わせるのも一手です。たとえば、同じ品目について、同一時期の家計調査と消費者物価指数を比較してみるのです。

すると、消費者物価指数は下がっているのに、家計調査における支出数量も減っているかもしれません。とすれば、店側は値下げして訴求したにもかかわらず、消費者は反応しなかったといえるでしょう。ただ、消費者物価指数が下がり、家計調査では支出数量があがっているとすれば、業界の販売戦略は功を奏した、といえるでしょう。

*消費者物価指数からいろいろ考えてみるパート1

消費者物価指数は、あくまで過去の値動きを表現したものです。しかし、これらを眺めていると、面白いことがわかります。たとえば、消費税が導入されるとき、あるいは、増税の前は駆け込み需要がさかんです。単純に考えれば、消費税があがる前に買ったほうがトクのように思えます。

ただ、消費者物価指数を見てみると、そうは言い切れません。家電製品などの大型商品は、駆け込み需要とはうらはらに、消費税が増税後、すぐに増税前以下の価格に下がる商品種類がほとんどです。

また、おなじく家電製品を見てみると、テレビのように一貫して下がり続けている商品があるかと思えば、プリンターのように価格水準をなんとか保っている商品もあります。また、家電製品ではありませんが、自動車などはさすがに価格水準が横ばいのままです。

テレビを生産するメーカーは多くが経営に苦しんでいますが、プリンターはなんとか耐え忍んでいます。それに自動車メーカーはまだ業績が比較的良いところばかりです。こういうことも消費者物価指数をざっと見ているだけで理解できます。

*消費者物価指数からいろいろ考えてみるパート2

そして消費者物価指数を見ていると、意外な事実もわかってきます。それは、高技術が必要な商品ほど値下がりが激しく、ローテクな商品やサービスほど、ほとんど値下がりしない事実です。

黒物家電(AV機器、テレビ、HDDレコーダ、ビデオカメラなど)はいわゆる日進月歩で技術が進む領域です。それにたいして、たとえば、ピアノ、ボールペン、水着などは、ほとんど値下がりしていません。これが市場の面白さでもあり、大変さでもあります。

どちらかというと、ハイテク企業のほうが優れているイメージがありますが、こういった企業はつねに先端技術を開発し新商品を投入し続けなければなりません。そのいっぽうで、100円ショップのようなローテクな企業は比較的安定した利益を稼ぐものです。これを皮肉と感じるでしょうか、それとも、ハイテク企業のほうに魅力を感じるでしょうか。

100円ショップはずっと100円ですが、10万円のテレビはすぐに8万円に下落します。これをバックアップするのは大変です。こういった企業のつらさや構造についても、統計データの調査を通じて”発見”してほしい、と私は願っています。

【第23回】応用編 世界の物価などを調べよう

これからはグローバルな企業展開が当然の時代になっています。それに伴ってみなさんの調査もグローバルなものになるでしょう。私はかつて自動車メーカーに勤務していました。そのとき、各国の経済状況を定量的に把握する際、「GDPがどれくらい」とわかってもピンときません。それよりも、「日本人の労働者平均賃金にたいして、この国では○○万円ていど」とか「日本でビールを一本買うと○○円で、この国では○○円ていど」といわれたほうがわかります。

そこで、ビジネスユースで活用できるのは、JETROのサイトです。

□JETRO投資コスト比較(http://www.jetro.go.jp/world/search/cost/
→ここは各国の代表都市に関するコストを検索しダウンロードできます。たとえば、「製造業」「エンジニア(中堅技術者)」「中間管理職(課長クラス)」等の賃金から、「インターネット接続料金(ブロードバンド)」「業務用ガス料金」「業務用水道料金(立方メートルあたり)」「レギュラーガソリン価格(1リットル)」……かなり多くの調査項目があります。日本の都市との比較も容易です。

そして、日本と世界の物価を比較したい際には、世界銀行のサイトが有益です。

□ICP(International Comparison Program)http://icp.worldbank.org/
→世界銀行が実施する物価水準比較プログラムです。「International Comparison Program results」から最新比較表をダウンロードできます。「機械設備」「建設」「食料・非アルコール飲料」等の項目にわかれ、世界平均を100として各国の物価水準を比較できます。

また、狙いを定めた国があったとして、その国のパートナー企業を検索するには、もちろんJETROのような公的なところを使うのが一番です。その他、事業展開ではなく、サプライヤを検索している場合は、いくつかのサイトが有益です。

□JETRO(https://www.jetro.go.jp/

□KOMPASS(http://jp.kompass.com/
→BtoB(企業間取引)の企業検索エンジンです。

□WCN(WORLD CHAMBERS NETWORK)http://www.worldchambers.com/
→世界の商工会議所に登録されている企業のデータ集です。

その他、またしてもJETROのものになりますが、いくつか紹介します。

□海外ミニ調査サービス(JETRO)https://www.jetro.go.jp/services/quick_info/
→JETROが特定の地域について独自調査をしてくれるサービスです。取引先の模索などに活用できます。

□世界の見本市・展示会情報(JETRO)https://www.jetro.go.jp/j-messe/
→かなり小さな展示会まで検索できます。みなさんが海外出張のときには、このサイトを使って、近隣の展示会にまで足を伸ばすことができるでしょう。

□引き合い案件データベース(JETRO)http://www.jetro.go.jp/ttppoas/indexj.html
→海外の企業が登録した商品やサービスの情報を公開しています

なお、民間の検索サービスもいくつかあります。探してみてください。

また、話はややそれますが、各国概況や政治状況などを知りたかった場合は、更新の頻度やスピードからいって、CIAのサイトが優れています。あのCIAです。

□The WORLD FACTBOOK(https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/

*海外からの輸入物価を調べる

また、日本は大量の資源等を海外から調達しています。その量と金額の調べかたについても説明しておきます。財務省の貿易統計を活用します。

1. 財務省貿易統計(http://www.customs.go.jp/toukei/srch/index.htm)に進みます
2. 「検索ページ」に進み、「統計品目情報」のなかの「品別国別表」をクリックしてください
3. すると、検索条件の指定になりますので、「輸入」「年月」「品目」「地理圏」を設定して検索を実行してください
4. 各国から輸入された量とその金額がわかります

なお、総量と総金額がわかります。ということは、たとえば韓国から何かの材料が1トン(=1000kg)、10万円で輸入されていたとします。割り算すれば、100,000円÷1000kg=100円/kgとわかります。

なお、貿易統計は日本語ですが、海外の情報を調べようとするときは英語が多く最初は苦労するかもしれません。しかし、慣れが重要です。また、コツはせっかくたどりついたURLを必ずメモしておくことです。私はエクセル表をつくって、どんなデータを検索したとき、どのURLからデータを検索したかを記録しています。

<つづく>

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